「社会の見方」カテゴリーアーカイブ

司法と民主主義

日経新聞1面連載は、「試される司法、先輩国の教え」を始めました。第1回目は、根付く市民参加です。
裁判への市民参加は、民主主義の補完だと思います。王や貴族、天皇や武士、官僚に政治を任せるのではなく、国民・住民が政治を担うことが民主主義でしょう。その責任を、国民が引き受けたのです。投票に行く、税金を納めるだけでは、「あなた任せ民主主義」でしかありません。「専門家に任せておいてはよくないこともある」ということが、いろんな場面で表れています。もちろん、国民が毎日、政治に参加することは不可能ですから、専門家に任せる部分も必要ですが。
私の、「行政構造改革の分類」では、裁判員制度を行政構造改革の一つとして、「公開と参加、官の独占を止める」分類しました。

デフレの慣性

12日の朝日新聞「補助線」は、西井泰之編集委員の「低温経済を読み解く、大胆な変革が呪縛を解く」でした。
・・1990年代後半、物価を成長に必要な通貨供給量との関係でとらえるマネタリストを中心に、大胆な金融緩和を求める声が強まり、日銀は量的緩和策に踏み込んだ。金融はじゃぶじゃぶに緩和され、最近では需給バランスも指標上は回復したのに、デフレだけが残った・・
吉川洋東大教授が指摘するのは「デフレの慣性」だ。「企業は価格を上げられないと考え、消費者や労組も価格や賃金は上がらないと考える『デフレ期待』が定着してしまった』と。結果、需要の勢いが弱い。
バブル崩壊後の長い停滞。企業は激しい競争にさらされ、個人もリストラの渦に。雇用や老後の不安に応える「改革」も進まない。通貨供給量を増やしても、前ほど投資や消費に回らなくなった。「将来に自信が持てない成長期待の低下」が、経済を縮こまらせているというわけだ。
日銀幹部は「日本経済が低温体質になった。金融政策だけで『期待』を変えて物価を上げるのは無理だ』という。長い停滞の「呪縛」から抜け出し、時代の気分をどう変えるか。例えば大胆な地方分権、社会保障費を中心にした歳出構造への大幅な組み替えなどはどうだろう・・・

経済財政白書

19年度の経済財政白書が出ました。今年のテーマは、「生産性上昇に向けた挑戦」です。本文は大きいので、説明資がわかりやすいです。格差問題も取り上げてあって、第3-4-15図に、再チャレンジ総合プランも引用されています。
19年版の労働経済白書も出ました。テーマは、「ワークライフバランスと雇用システム」です。こちらも、要約版が読みやすいです。(8月8日)
8日の読売新聞の解説が、1ページと簡潔でわかりやすかったです。読売新聞は、9日から囲みの形で連載を始めています。第1回目は「成長格差。役員は報酬増、社員横ばい」でした。(8月9日)
読売新聞の連載10日は、「家計負担、差し引き0.1兆円増」でした。定率減税廃止や年金保険料の増加という負担増が1.6兆円に対し、一方で年金給付という受け取りの増加1.5兆円もあります。その差し引きが、0.1兆円です。新聞は負担増ばかり取り上げますが、こういう解説はわかりやすいですね。もっとも、現在政府は、国債という借金で現世代の負担を小さくして、将来世代に先送りしています。

裁判外紛争解決手続

10日の朝日新聞「ニュースがわからん」は、ADR(裁判外紛争解決手続)を解説していました。裁判によらず、より簡単にもめ事を解決する方法です。交通事故、商品の苦情などを、民間の団体があいだに入って相談に乗ってくれます。「不満はあるんだけど、裁判は手間がかかっていやだし」という人も多いでしょうから、これからは利用される機会が増えるでしょう。もっとも、横文字で示されるように、まだ日本では定着しているとは言えません。そこで、国が認証してお墨付きを与える法律もできました。

社会システムの設計

8日の日経新聞経済教室は、横山禎徳さんの「高齢時代の社会制度設計、産業横断的なシステムに」でした。
・・戦後日本を支えたシステムが老朽化しているのに、高齢社会に向けた新しい「システム」がきちんと準備されていないという問題である。ここでいうシステムとは、コンピュータシステムや情報システムのことではない。もっと広い意味でとらえるべきで、筆者は「社会システム」と名付けている。社会のあらゆる側面は社会システムが支えており、医療、介護、年金、交通、通信、教育、徴税など社会システムとしてとらえられるものは少なくない。
・・社会システムは、その性格上、産業横断的である。「医療産業」には、銀行や保険会社、建設会社、ソフトウエア会社、コンピュータ会社は入らないが、「医療システム」では、医療保険を提供する保険会社、病院や診療所をつくる建設会社、それに融資をする銀行、さらに診療報酬明細書(レセプト)の電子化などに携わるソフトウエア会社、それを処理するハードウエアを提供するコンピュータ会社なども含まれてくる。
産業横断的であるということは、管轄する行政機構も省庁横断的になる。日本の行政機構は長年縦割り行政の弊害を指摘されてきた。・・問題は別のところにもある、すなわち、産業・省庁横断的に課題を解決する能力や生活者の視点での発想が、官僚に身についていない。優秀な日本の官僚も、システムデザインという新たなスキル(技法)を訓練されておらず、社会システムのデザインができないのだ・・
ここでの「社会システム」は、「新地方自治入門」p191で説明した「制度資本」と似た概念です。