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行政-行政機構

省庁改革5周年

8日の読売新聞も、省庁再編5年を解説していました。「政治主導、道半ば」「ポスト小泉で逆戻り、統合効果・融和に課題」という見出しです。
「しかし、首相主導のもろさを指摘する声もある。省庁再編に伴う改革では、内閣法を改正し、閣議における首相の発議権を明確化した。次官会議で事前に了承した案件のみ取り上げる閣議の形骸化を改める狙いがあったが、『発議権の定義は明確でないが、首相自ら、閣議で需要案件を発議したケースはほとんどない』(内閣官房幹部)のが実情だ」
「省庁間の調整が難しい場合に、内閣官房か内閣府が調整を果たす政策調整システムも機能していない」
ご指摘点は、その通りでしょう。でも、私に相談してくれれば、もっと幅広い整理をしたのに。先日の整理を見てください。

省庁改革5周年

今日6日で、省庁改革から5年がたちます。日経新聞は「行政効率化、道半ば」「政治主導進む」を書いていました。もう5年もたつのですね。拙著「省庁改革の現場から」では、第2章で「何が変わるか」を、第4章で「残されたこと」を整理しておきました。それに沿って、現段階での進捗状況・効果を簡単に評価しておきましょう。
(仕組みの改革について)
1 省庁再編は、円滑に進んだ(官僚は抵抗しなかった)。
2 内閣機能の強化は、特に、経済財政諮問会議が効果を発揮した。内閣官房・内閣府については、まだ評価は定まらない。
(運用の改革について)
1 政治主導については、小泉総理により、官僚主導から政治主導へ、政治家(のバラバラ)主導や党との二元主導から官邸主導へ、大きく進みつつある。
副大臣・政務官の機能については、まだ評価は定まらない。
2 縦割り行政の弊害除去については、官邸主導で改善されつつあるが、評価は定まらない。
(行政改革について)
1 スリム化については、課の数・定数削減など決められたことは進んだ。さらに、定数削減については、厳しい目標が立てられた。
2 独立行政法人化も決めた以上に進み、予想以上に非公務員化が進んだ。ただし、国費の削減効果、効率化についての評価は、まだである。
3 公務員制度改革については、いったん頓挫した。
4 省庁改革では国営とされた郵政事業が、民営化されることとなった。また、政府系金融機関の整理など、新たな大きな行政改革が進められようとしている。
5 政策評価は着実に運用されているが、これの効果はまだ定まっていない。
新たな行政改革を実行するため、再び各省から職員が、虎ノ門の第10森ビルに「招集」されています。このビルは、省庁改革の時に事務局を入れるために借り上げたのですが、その後の行革、郵政民営化、そして今回の行政改革と次々と事務局が入り、「内閣官房改革別館」になっています。

行政の責任、不作為・先送り

アスベスト被害と行政による対策の遅れが、問題になっています。26日には関係閣僚会議で、過去の各省の対策について、検証結果をまとめました。27日付の朝日新聞「時々刻々」は、その検証結果を検証しています。
「あわせて7省庁から出された検証内容の中で、環境省の報告書には『反省の弁』らしきものが目立った。それは、自分たちは規制しようと思ったのに横やりが入ったー。こんな他省庁への当てつけと裏腹でもある・・・旧通産省の幹部から『・・・産業保護の観点からも問題がある』と反対された。旧労働省からも『工場内は当省で規制しているから外へは出てないはず・・・』と、やんわりと牽制された。・・・こうした霞が関の縦割り行政のひずみは、報告書に明記されていない」
「もっとも環境省も、77年から旧環境庁で大気中の石綿の濃度を調査していながら、89年まで大気汚染防止法による規制を行わなかった対応については、正当化に終始する」
「報告書では、『省庁間の連携の不十分さ』の具体例として、90年に旧環境庁が中心となって開かれた関係省庁連絡会議が、3年後に2回目を開いたきり有名無実化していたことも明らかになったが、この評価をめぐっても省庁間の見解は異なる、厚生労働省は・・・継続しなかった理由は『環境省が主催なのでわからない』。これに対し環境省は『昔の話を持ち出して、こちらの動きが鈍いという話にしている』と反発。責任の押し付け合いを露呈した格好だ」
まだ十分な検証がなされていないので、はっきりしたことは言えませんが、ここからかいま見られるのは、「官僚の不作為」と「縦割り行政による無責任体制」です。私は官僚制の欠点の一つが、不作為だと思います。「××をやった」「こんな実績を上げた」ということは書かれますが、必要なことを怠った、先送りしたという検証はあまりされません。
この記事は、省庁からの発表をそのまま記事にするのでなく、書かれていないことを検証した良い記事だと思います。

輸入商社としての東大と官僚

22日の朝日新聞「戦後60年」は、東大でした。「小宮山宏学長は『世界一の総合大学を目指す』と宣言した」「日本はすでに30年前には先進国になっていたのだから、東大も世界の先頭を目指すべきだった。しかし明治以降、あらゆるものを外国から輸入してきたから、その発想がなかった」
「南原先生の時代は、欧米のものを持ってきて大衆に配るのがエリートの役割でした。今の日本は、高齢化、少子化、環境問題など、世界でも未知の問題が集中する『課題先進国』。モデルを追いかける時代から、自分でモデルを作らなければいけない時代になった。そして私たちが作るモデルが世界標準になる。知識の輸入ではなく、先頭に立つ勇気が必要だ」
かつて天下国家を考えていた東大生が、今は自分のことしか考えなくなっているという指摘があることに対しては、 「日本は国家や企業のために頑張ることを通じて個人を作ってきた社会だった。これからは個人が自分のために頑張る中からリーダーが生まれ、結果的に社会に貢献する」
その東大とセットになっていたのが、霞が関の官僚でした。欧米から先進行政を輸入し、日本中に行き渡らせました。各省は「総輸入代理店」であり、官僚は地域で生じる問題を拾い上げ解決する訓練を受けず・そのような思考はありませんでした(拙著「新地方自治入門」p57,p287)。

近況

今朝の日経新聞は、「再編5年目、診断霞が関」で総務省を取り上げていました。「旧内務省の幻影、巨大化再び、見えぬ実像」です。建制順が省の中で1番になったことが取り上げられ、小生の発言も引用されていました。「官房総務課長の岡本全勝(50)は『内閣府とともに内閣を補佐する役割を期待されての昇格で名誉だ』と言う」
総務省が内閣府とともに内閣を補佐することは、橋本内閣時に省庁再編の骨格を決めた「行政改革会議最終報告」(平成9年12月)に書かれています。もっとも、名誉と喜んでいるだけではだめなので、記事では「『責任が重いというのが正直な実感だ』。2代目の総務相を引き継いだ麻生太郎(64)は語った」と続きます。