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経済

国内で満足し海外に攻めなかった製造業

6月15日日経新聞「迫真。テレビなぜ負けた」の第4回は「これでシャープに勝てる」でした。
シャープ亀山工場の建設が始まったのが、2002年。液晶パネルからテレビまでを一貫生産する、世界初の垂直統合型工場を造りました。最先端技術をブラックボックスに閉じ込め、韓国、台湾勢の追随を許さない戦略です。
しかしその頃、韓国サムスン電子は、全く違ったことを考えていました。「これでシャープに勝てるかもしれない」。この時、サムスンが恐れたのは、シャープが液晶テレビの海外生産に乗り出すことでした。しかし、海外に進出することはありませんでした。それは、パナソニック、キャノン、ホンダも同じで、国内で大型投資に踏み切っていました。
「日本のものづくりは強い」と自信を持ち、1ドル=100~113円の円安にも助けられ、ミニバブルに酔っていたようです。モーニング娘。が「日本の未来は、世界がうらやむ」と歌っていたのが、1999年でした。
また、日経新聞電子版、西條都夫編集委員の「内なる顧客とともに沈んだ日の丸半導体」(6月13日配信)は、日本企業の内向き体質が顕著になったのは、1990年前後のバブル期だと指摘しています。
日本の半導体製造業は強かったのですが、一方、半導体を購入する市場規模でも世界の40%を占めていました。半導体メーカーは、国内のお客に食い込んでおれば良かったのです。しかし、半導体のユーザーである日本の家電メーカーが弱くなると、日本の半導体メーカーは弱くなり、韓国や台湾企業に負けるようになりました。
つい数年前まで「日本のものづくりは世界一」と言われていたのですが、あっという間の変化です。日本のメーカーが変わったから、ではありません。変わらなかった、世界の動きについて行けなかったから、後れを取ったのです。
かつて「日本の官僚と行政は世界一」と言われていたのが、1990年代以降、大きく評価を下げました。これも、日本の官僚と行政が変わったからではなく、社会が変わっているのに、行政が変わらなかったからだと、「行政構造改革」で論じました(連載は、途中で中断したままです。反省)。
でも、悲観することはありません。いろんな製品や分野で、世界のトップグループにいます。欠点がわかったのですから、それを見直して、努力すればよいのです。

暗い予測はできても対応できない

5月18日の朝日新聞オピニオン欄に、沼上幹教授が、「特需の向こう側、予測段階での危機管理が必要」を書いておられました。家電エコポイント制度と地上波デジタルへの移行という2つの政策が、家電量販店と家電メーカーに与えた影響です。この政策によって、テレビがよく売れました。しかし、それが終了すると、極端に売れなくなり、量販店は大幅な減益、メーカーは巨大な固定設備を持っているのでさらに悲惨で、大赤字になっています。
・・この種の急激なアップダウンは、ある程度予測されていたからである。それなのに、どうしてこれほど対応時期が遅れるのだろうか。実際、地上波デジタル移行やエコポイント終了の時期などは、ある日突然決まるのではなく、事前に公表されている。しかも、この政策の結果として需要が先食いされ、2012年には需要が急減し、その後も低迷する期間が続くから、「地デジへの移行期間までが勝負だ」という考え方も広く知られていた。
だが、実際の企業の対応はかなり後ろにずれ込んできたように見える。すでに昨年8月からはテレビ売り場で閑古鳥が鳴いていたのに、家電量販店がテレビ主体の売り場づくりからの脱却を本格化し始めたのは、つい最近のことである・・
うーん、これは、危機管理というべき話ではないかもしれません。

日本企業人材の国際化

4月30日の日経新聞オピニオン欄「グローバルオピニオン」は、スイスIMD学長のドミニク・テュルパン氏の「日本企業に多様性必要」でした。IMDは、世界各国の競争力ランキングを発表することで有名です。
・・長年日本をウオッチしてきた私にとって、日本企業に元気のない現状はとても残念だ。世界経済が大きく姿を変えつつあるなかで、日本企業はうまく対応できていない。あるいは日本の社会そのものも、豊かさを達成したことに満足し、以前は旺盛だった外への関心を失っていると思う。
日本企業の弱点は、多様性の欠如だ・・
・・日本には昔からジョブローテーションという優れた仕組みがあり、自分の専門の分野だけでなく幅広い業務を経験させることに熱心だった。自動車会社のエンジニアなら、エンジンの開発ばかりではなく、生産なども経験することで視野を広げ、タコつぼ化を避ける狙いだ。
だが、世界のさまざまな市場を渡り歩かせて、キャリアを積ませるネスレ型のグローバルローテーションはほとんど実践されていない。グローバル人材は、一朝一夕には養成できない。長期を見すえたブレのない取組が必要だ・・

外国人が日本で買っていく物

外国人観光客が、日本で買っていく物はなんだと思いますか。日経新聞電子版の「映像ニュース」が伝えていました。「映像ニュース」の「話題・特集」から、「秋葉原で外国人に人気の商品」(前編)(後編)をご覧ください。
かつて日本人のヨーロッパ旅行の土産は、お酒、たばこ、チョコレートでした。その後、ブランドものの鞄やネクタイ、時計などに変わりました。アジアの人たちが日本で買っていく物には、意外なものがあります。
あなたなら、外国からのお客さんに何を勧めますか。私は文化的なものだと、東京国立博物館のミュージアムショップが、外国の方におもしろいのではないかと、紹介していました。他には、スーパーマーケット、ドラッグストア、文房具店などが、日本人の現在の暮らしを見てもらえるので、お勧めかなと思っています。
「これぞ日本だ」というものが思い浮かびませんが、和菓子屋さんも良いですよね。もっとも、生菓子は持ち帰ることはできませんが。

海外で売れるクールな日本製品

5月2日の日経新聞「会社研究」は、三菱鉛筆を取り上げていました。
デジタル製品が次々と進化する中、地味に見える鉛筆やボールペンですが。連結売上高の4割を、海外で稼いでいるとのこと。握る部分にゲル状のバンドを巻き書きやすくしたボールペン「ユニ アルファゲル」は、韓国で売れています。福岡県の免税店で、韓国人観光客がこのペンを大量に買うようになりました。価格は、韓国の一般的なペンの5倍するそうですが、日本製のペンをクール(格好いい)と見る学生に人気が広がったそうです。このHPでは、なめらかなボールペンの「ジェットストリーム」を紹介したことがあります(2011年6月26日)。
もっとも、新興国では、フランスのBICが先行しています。