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社会

監視社会

6月30日の朝日新聞「未来からの挑戦」は、「AIの目、忍び寄る監視社会」でした。
・・・画像処理を得意とする人工知能(AI)が登場し、街中の監視カメラで瞬時に個人を識別して追跡もできるようになる。治安向上に役立つ一方で、「監視社会」の不安が人々の身の回りに忍び寄る・・・
記事には、次のようなことが書かれています。
6万人のコンサート会場で、1人を見つけ出すこと。中国では警察が全国に張り巡らせた監視カメラが2千万台、それ以外を合わせると2億台ものカメラがある。中国の警察官がかけている特殊なめがねは、登録した人の顔が見えると、それを表示する・・・。

街中の監視カメラで、私たちの顔が撮られていることは既に「常識」です。駅や新幹線の中は、カメラがどこにあるか、よく分かります。そこで、顔が撮られているはずです。
さらに、鉄道の改札でスイカ(イコカなど交通系ICカード)を使うと、どこに移動したかも、把握されます。クレジットカードを使うと、どこで何を買ったかも、把握されます。インターネットで何を見たか、電子メールでどのようなやりとりをしたかも。
秘密も何も、あったものではありません。
把握されるのが嫌なら、クレジットカードやスイカを使わないようにしなければなりません。犯罪がらみは、現金で決済しているのでしょうね。さらに、監視カメラなどに中国製品が使われていると、データは北京に送られているという説もあります。

私は駅を通る際に、監視カメラ(たいがいエスカレーターの上にあります)に向かって、顔が映るようにしています。何か事故に巻き込まれたときに、「ここまでは歩いていた」と分かるようにです。

キャッシュレスは財布が緩む

6月28日の朝日新聞オピニオン欄「キャッシュレスより現金払いの方がよくない?」から。
「単身赴任をきっかけに、飲食費をクレジットカードで払う機会が増えました。しかしつい使いすぎ妻からは大目玉。現金払いに戻したところ、支出が減りました。日本は海外に比べ「現金主義」が強いと言われます。政府は消費増税を機にキャッシュレス化を進めようとしていますが、やっぱり現金の方がよくないですか」という記者の問に。
中川宏道・名城大学准教授の回答です。

・・・なかなか手に入らないバスケットボールの試合チケットのオークションで、クレジットカード払いの人は、現金払いの人に比べ、平均約2倍高い価格で入札していた――。マサチューセッツ工科大の研究者によるこんな実験結果があります。
なぜこうなるのでしょう。クレジットカード払いだと、銀行口座から引き落とされるのは通常1カ月以上先で、「支払いの痛み」を感じにくいからです。現金払いは、財布を取り出し、お金を数え、店員に渡すので、お金が減ることを実感します。様々な研究で「支払いの痛みは、支払時の作業量に比例して増す」ことが分かっています。
クレジットカードは現金払いに比べ作業量は少ないし、目の前で現金が出ていかないため、支払いの実感が低くなります・・・

我が身を省みて、納得し、反省します。

一人暮らしの高齢者を支える、フィンランド。その2

高橋絵里香著『ひとりで暮らす、ひとりを支える』の続きです。

本では、ディアコニという職業が紹介されています。フィンランド福音ルーテル派教会にある職です。社会サービスや援助活動をします。社会サービスの学位や看護の学位を持っています。

町のディアコニの事務所は、月曜から木曜の朝9時から10時が対応時間です。やってきた人たちは、椅子に座って順番を待ち、その日の担当者と話をします。
人生の悩みを打ち明けに来る人、血圧を測りに来る人、食料品をもらいに来る人など。どんな内容であれ、助けて欲しいことがあれば、ディアコニが相談窓口になっているようです。
血圧を測りに来る人も、食料品をもらいに来る人も、話し相手が欲しくて、それを理由に来ているようです。

福祉国家が成立する前は、地方でその役割を果たしていたのは、教会だったのです。医療などの身体的必要は行政が担うようになって、ディアコニは精神的、社会的支援を担うようになったのです。
前回紹介した、どのように死を迎えるかとともに、経済的支援と身体的サービスの次に求められるのは、このような精神的、社会的支援でしょう。
これをどのように実施していくのか、日本の行政の次の大きな課題だと思います。

「生きることの社会学」

川田 耕 著『生きることの社会学 人生をたどる12章』(2019年、世界思想社)を本屋で見つけて読みました。大学生向けの入門書です。

目次を見ていただくとわかるように、人生の各段階で出会う社会との関係を、わかりやすく説明しています。出生、学校、恋愛、子育て、仕事、老い、死・・・。
初学者には、この入り方は良いと思います。
私も地方行政を話す際に、朝起きてから寝るまで、生まれてから死ぬまで、どのように、どれだけ自治体の世話になっているかを説明して、自治体との関係を実感してもらっています。

第6章成長における幻想と文化、第7章攻撃性の社会学は、学生を対象とした本ならではの項目ですね。よく考えられています。
もちろん、このような構成で書かれていますから、社会一般や組織論は出て来ません。それは、次に勉強してもらうのが良いでしょう。

認知症の行方不明者1万7千人

6月20日の新聞各紙の夕刊が、「認知症の行方不明者1万7千人」を伝えていました。2018年に認知症が原因で、警察に行方不明届が出された人の数です。大変な数です。

71%の人は、届け出の当日に無事が確認されています。25%の人は2~7日以内に発見されて、全体の96%が受理から1週間以内に見つかっています。他方で、車にはねられるなど、死亡者は508人です。