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社会

嘘をつく意識はないが記憶を美化する

26日朝日新聞夕刊「追憶の風景」保坂正康さんの言葉から。
・・私はこれまで昭和史を調べる中で、のべ4千人の方に話をうかがってきました。それで気づいたことがあるんです。1割の人は本当のことをいう。1割の人は最初から嘘をいう、8割の人は記憶を美化し、操作する。この8割というのは実は我々なんです。悪人じゃないけど、うそをついている・・

日本は本当に不安な時代か

読売新聞9月30日夕刊健康欄、内田樹さんのインタビューから。
「日本中が不安や閉塞感に覆われているように思います」との問に対し、
・・いつの時代でも将来への不安はあったと思います。バブルのころのほうが僕は不安でした・・60年安保のころには、日本は戦争に巻き込まれるんじゃないかという不安があった。それに比べると、今の不安は大したことはありません。
・・今の日本は、未来の予見可能性がきわめて高い。他国からの侵略や内乱、通貨の暴落などの可能性はほとんどない。戦後65年で今ほど変化の幅や選択肢が限られている時代、言い換えると社会システムが安定している時代はない。不安というより、退屈です。それは安定の代償です。

「日本は今も世界第2位の経済大国なのに、豊かさを実感できません」との問に対しては、
・・これだけ豊かでまだ足りないというのは、貪欲です。世界に類のないほど安全で、環境に恵まれ、平和な国になったことを評価すべきです。持っていないものを数え上げる人間と、持っているものを数え上げる人間では、行動の姿勢が違います。あれがない、これがないと不満を言う人間は、誰かが何とかしてくれるのを待っている・・

「どんな社会を目指すべきですか」との問に対しては、
・・先進国はいずれどこも経済成長が止まり、人口が減ります。日本が少し先を行っているだけです。右肩上がりの成長が終わっても、日本には十分余力があるので、資源をうまく回せば住みよい国をつくれる。みんながそこそこ幸福に生きるにはどうしたらいいかが、国家目標になります。
この問題を解決した先行事例がないから、みんな不安になっていますが、日本は世界の先頭を行っているのだから、モデルがないのは当然です。世界の範となるモデルを構築するトップランナーだという国民的合意ができれば、不安も閉塞感も吹っ飛びます・・
詳しくは原文をお読み下さい。夕刊とインターネット版では、少し内容が違うようです。

人類の繁栄、地球からの収奪

9月24日朝日新聞、連載「いきものがたり」は、人類の現代の繁栄が、いかに自然を「収奪」しているかを、数字で示していました。
2010年の人口は69億人、これは1970年の約2倍です。2050年には91億人になります。穀物需要は22億トンで、1970年の2倍です。人口がこの40年間で2倍になったのですから、当然です。食糧増産のために、灌漑耕地面積が、1970年の1億7千万ヘクタールから、2008年には3億ヘクタールになりました。取水量は、2010年で4,400立方キロで、20世紀初頭の8倍だそうです。湖や川から、水がなくなっています。
1965年のエネルギー消費は、原油換算で40億トン。2008年には110億トンです。50年間で、約3倍になっています。

優等生化する新入社員

日経新聞9月16日の夕刊が、興味深い写真を載せていました。1面の連載です。1986年の日本航空の入社式と、今年の入社式の写真です。今年の女子の新入社員は、みんなが黒のスーツ、白のシャツ、黒の靴、髪型まで一緒なのです。制服かと間違います。たぶん、化粧の仕方も同じなのでしょうね。それに対し、86年の彼女たちは、さまざまな服装をしています。びっくりします。
採用が厳しくなったからでしょうが、ものの見事に画一化され、個性を封印しています。個性の豊かさや多種多様な人材といったスローガンは、何だったのでしょうか。「多種多様な人材を求めない企業と、個性を表に出せない新入社員。そこから組織の活力は生まれてくるのだろうか」と、記事は解説しています。
日本社会のあり方を考えさせる、見事な写真と記事でした。

まだまだ知らない隣国

韓国の躍進が素晴らしく、いろんな分野で日本が負けるようになりました。それによって、徐々にですが、韓国についての報道も増えてきました。9月2日の朝日新聞オピニオン欄は、「走る韓国」という特集を組んでいました。興味深いことが、いくつも紹介されていました。
韓国の人口は、4,800万人。日本の約4割です。国内市場が小さいので、海外へ出て行く戦略です。金美徳教授は、日本企業はモノ作り指向経営であるのに対し、韓国企業はマーケティング指向経営であると指摘しておられます。それが、海外市場で勝った理由の一つです。大学進学率は80%を超え、教育への投資や競争も激しいです。1997年のアジア通貨危機で、GDPが4割も減った経験が、競争を激しくしたのでしょう。
一方、負の面も指摘されています。出生率は世界最低水準で、国民皆年金になったのは1999年だそうです。競争が激しいので、一流企業でも失敗すればすぐ解雇、社内競争に敗れた人も次々退社するので、事実上50歳代前半が定年とのこと。

私たちは、これまで近隣諸国のことを、知らなさすぎました。世界史で西欧の歴史上の人物はたくさん習いますが、アジアの人物はほとんど知りません。アメリカ人やイギリス人なら10人くらいすぐ名前を挙げられますが、韓国人を10人挙げることができる人は少ないのではないでしょうか。
最新の事情を勉強する際も、欧米中心でした。しかし、今やアジアが日本と同等の経済発展をしつつあります。しかも、いくつもの分野で、日本を追い抜いています。もっと、現在のアジアを勉強すべきでしょう。
行政の分野でも、日本と韓国は比較が簡単な国同士です。省庁再編も、日本より後に着手して、日本より先に実行しました。行政の電子化も、韓国の方が進んでいます。

先日から、少し調べていることがあります。韓国の公務員削減です。1997年に経済危機になったこと、金大中大統領になったことを契機に、中央政府と地方政府の大胆な人員削減を行いました。正確なところはわからないのですが、何人かの人に聞くと、教育職と公安職を除き、約1割の削減をしたようです。もちろん、韓国にも公務員の身分保障はあります。しかし、GPPが4割も減るという非常事態で、それも言っておられなくなったようです。「中核的一般職は解雇されなかった」という話もありますが、ある人に聞くと、組織ごとに削減人数が決められ、解雇される人が指名されたとのことです。「職場は暗くなった」とおっしゃっていました。年齢の高い人は解雇された後、復職せずほかの職業に就いていると、おっしゃっていました。
近くても、知らないことが多いです。