「災害復興」カテゴリーアーカイブ

行政-災害復興

ワーク・フォー・東北

今日2月24日は、仙台まで、「ワーク・フォー・東北」の研修会講師に行ってきました。長くこのホームページをお読みの方は覚えておられると思います。復興庁が日本財団の助けを借りて始めた、民間の方を被災地に送る仕組みです。それも、職員不足を補うのではなく、意欲と技能を持った人を長期間送ります。166人もの人を送りました。地域づくり、産業振興などで活躍しています。「実績」。

被災地の復興は、お金だけは実現できないことがたくさんあります。被災地は、人もノウハウも不足しているのです。人を送ることを本格的に行ったのも、東日本大震災からです。「様々な手法」を使いました。人を求めている地域と、行きたい人とを結びつけること(マッチング)は、なかなか難しいです。また、送り込んだだけでは、その職員は孤立し、うまく行きません。そのための事前研修、途中での研修、随時の相談も必要です。それを、日本財団がやってくださいました。受け入れ自治体の評価が高く、引き続き仕事をしている職員もいます。

2月11日の朝日新聞社説「復興庁「御用聞き」から前へ」でも、次のように紹介してもらっています。
・・・復興庁の特徴は、震災前は国の役割とはされてこなかった仕事に力を入れていることだ。仮設住宅に住む人の交流促進や、復興にかかわりたい民間人材を被災自治体や団体に紹介するといった事業だ。行政が不慣れな分野だけに、ノウハウを持つNPOや企業と積極的に連携してきた・・・NPOや企業といった民間と二人三脚で、「公」の仕事を担う。こうしたやり方をさらに広げ、新しい行政のモデルを目指してほしい・・・
今日はその最後の研修会で、この仕組みの意義を評価するとともに、苦労をかけた皆さんにお礼を言いました。

被災地で不足する職員、専門技能を持った職員を送ったのですが、民間人が組織内に入り込むことで、市町村役場にとって良い刺激になりました。彼らの仕事の進め方、民間での広い人脈、外に積極的に出かけていく行動力。これらは、しばしば役場職員に欠けている点です。こんな経験は、市町村役場ではめったにありません。
さて、次の課題があります。
・受け入れた自治体が、これら応援に入った民間人や他の自治体職員が引き上げた後、彼らの「刺激」を生かすことができるかどうかです。極端な場合、「よそ者が来てくれて、役に立ったなあ」と過去形で話されると、単なる助っ人でしかありません。外から来た職員、特に熱意と技能を持った民間人の良い点を見習って欲しいのです。

ワーク・フォー・東北はひとまず使命を果たしたので、被災地に限らず全国への仕組みに発展しています。「ワーク・フォー・にっぽん
・全国に展開する仕組みはできていますが、うまく使うかどうかは、受け入れ自治体の関心と熱意です。

集団移転、コミュニティ維持

2月20日の日経新聞「災害考」は「集団移転、孤立防げ。コミュニティの維持」でした。このホームページでも何度か取り上げた、東松島市のあおい地区です。自宅再建273世帯と災害公営住宅307世帯、合計580世帯の新しくできた街です。
・・・移転予定者も参加して「まちづくり整備協議会」を設立した。街並みや居住ルール、集会所や公園、トイレなど公共施設の設計……。行政を交えた専門部会や、「井戸端会議」と題した住民同士の意見交換会は300回を超えた。
具体的な区画決定も行政任せにせず、同じ区画に入りたい世帯が近くになるようにした。認知症の家族がいる世帯は、近隣の目が届きやすい角地を割り当て地域で見守るといった住民のアイデアを採用。回覧板を回すグループが違っても、道路を挟んで向き合う世帯とはゴミ置き場の清掃グループとして交流するようにもした・・・

私も、お話を聞きました。1年間に100回の会合を持ったそうです。しかも、市内6か所の仮設住宅団地から、平日夕方に市役所会議室に集まってです。会長のコツは、「みんなの話を聞くこと」だそうです。
これだけの努力があって、コミュニティが作られているのです。お金を出せばできるものではありません、市役所が指示すればできるものでもありません。住民が積み重ねることでできるものです。それを、行政が支援することはできます。

帰還困難区域の復興、日経新聞社説

日経新聞2月18日の社説は「現実を直視した帰還困難区域の復興を」でした。
・・・帰還困難区域の復興に向けてはまずこの地域の現実を直視する必要がある。帰還を望む住民が減っているなか、復興拠点を地域の再生にどうつなげるのか、政府はその道筋を示すべきだ・・・
・・・事故から6年近くたち、帰還困難区域の中でも放射線量がかなり下がってきた場所がある。一律に帰還困難とするのでなく、拠点を設けて復興の足がかりとする考え方自体は妥当だろう。
重要なのは、どこを拠点に選び、どんな将来像を描くか、住民の声をきめ細かくくみとり、計画に反映させることだ。
県外を含めて他の地域に避難している住民の中には、移転先で生活再建をめざしている人も多い。復興庁などが避難者の意向を聞いたところ、帰還を希望する住民は1~2割にとどまり、「戻らない」とした人が半数を超える・・
原文をお読みください。

融けた核燃料の処理

2月19日の朝日新聞が、福島第一原発2号機の格納容器の調査を詳しく取り上げていました。本文を読んでいただくとして、竹内敬二記者の「視点」から。
・・・これから、溶けた核燃料との長い闘いが始まる。
同様の例は1986年に爆発事故を起こした旧ソ連チェルノブイリ原発しかない。原子炉底部に核燃料が丸くかたまった「ゾウの足」がある。昨年、その原子炉全体を包む新シェルターができた。事故後30年でようやく完全な封じ込めが完成した。核燃料の処理は「50年くらいたってから考える。放射能も下がるし」という。百年作業なのだ。
福島に並ぶ炉心溶融した三つの原発は、「日本では過酷事故が起きない」という安全神話の帰結だ。
事故処理を通じて、私たちは原発への正しい恐れを身につけ、安全神話を消さなければならない。
しかし、東電は、2021年に「燃料取り出し」を始めるという。実際には核燃料をどう管理して、どこに運ぶかさえも決まっていない。無理だといわざるを得ない。
事故処理や費用では、しばしば楽観的な数字、スケジュールが示される。後に、小刻みに数字が変わる。早く終えたいのだろうが、廃炉の難しさについての誤ったメッセージになりかねない・・・

原発事故後始末費用

2月15日の朝日新聞オピニオン欄「21.5兆円、私も払う?」として、次のように問うています。
・・・6年前の東京電力福島第一原発の事故で、避難住民への賠償や廃炉に必要な費用は、広く電気を使う人たちが負うしくみがつくられてきた。「想定外」の事故の費用は、いま、総額で21兆5千億円。だれが負担するべきなのか。この先も原発を使い続けるのか・・・

NPO法人国際環境経済研究所理事・竹内純子さんの発言「つぶせば東電が楽になるだけ」から。
・・・東京電力という一企業の失敗を、なぜ国民が負担するのかという指摘は、感情的にはわかります。でも、一日も早く福島復興への責任を果たすという目的を考えれば、当面は昨年末に国が決めたこのしくみ以外に、解はないと思います。簡単に言えば、国が東電に資金を出して時間的猶予を与えるという制度で、昨年末に決まったものは、これまでの大枠と同じです。私は一定の評価をしています・・・
・・・「東電をつぶすべきだった」という声がありますが、事故当時の東電の純資産は2兆5千億円ですから、必要額に届かないのは明らかでした。泣くのは賠償を得られない被害者です。東電をつぶすことは、東電を楽にしてあげることと同義です。たとえば会社更生法などの事業継続を前提とした破綻(はたん)処理では、賠償を含む東電の債務を一定程度で区切ることになります。これでは東電が責任を果たすことにはならないので、いまの枠組みがつくられたのです・・・

反論も載っています。原文をお読みください。