「災害復興」カテゴリーアーカイブ

行政-災害復興

近づく3.11。各紙の特集

もう、3月です。あの日から、6年が経とうとしています。6回目の3.11が近づき、新聞各紙が特集を組んでいます。ありがとうございます。風化しつつあると言われる、あの大災害。その記憶を、国民の皆さんに引き継いでいただきたいです。

岩手、宮城の津波被災地では、高台移転やかさ上げによって町の再建が進んでいます。その様子が、写真を使って報告されています。写真の力は大きいですね。発災前の街の様子、津波の直後、片付けが終わった後、そして今。言葉で説明するより、わかりやすいです。もちろん、説明をつけないと、部外者にはわかりませんが。
工事は進んでいるのですが、他方で課題も指摘されています。人口流出、公営住宅の入居者の年齢が高いこと、孤立、商店の苦戦、高台の住まいから商店まで買い物に行くことが不便なことなど。これから、住民と自治体が、どのようにこれらの課題に取り組んでいくか。もちろん、国も支援団体も支援を続けますが、中心となるのは地域です。

違った条件にある福島の原発被災地では、順次避難指示が解除されています。報道でも、商店や住民が戻りつつあることが、報告されています。こちらも、まだ戻る住民が少ないことが、課題です。

各紙が取り上げてくれていますが、子どもたちが大きく成長した姿をみると、うれしいですね。彼ら彼女たちは、狭い仮設住宅、長距離通学、仮設校舎、避難先でのなじめない学校など、子供心に苦労をしています。それを乗り越えて育っています。この子たちを育てることも、復興の大きな要素です。

マスコミ各社が、客観的、長期的な視点で、この復興を取り上げてくれています。これもまた、各社と日本社会の成熟を示していると思います。昔だったら、「進まない復興」「住民に不満」など、行政に対する批判記事が定番でした。
でも、根拠と代案のない批判は、生産的ではありません。住民も、自治体も、応援に行った職員も、それぞれ精一杯に努力しています。もちろん、復興庁をはじめとする国も。
全員が満足する答えがない課題、直ちには解決できない課題があります。その際に、一部の立場に立って、ほかを批判する。わかりやすいですが、それでは前進はありません。

仮設住宅入居者の新たな住まい

公営住宅や高台移転の工事が進み、仮設住宅から順次、恒久的な住まいに移ってもらっています。今なお避難生活を送っている方は13万人、仮設住宅の戸数として4万5千戸です。3月3日の地方紙に、3県での仮設住宅入居者の今後の住まいについて、調査結果が載っていました。
被災3県での仮設住宅は3万5千世帯、そのうち新居が未定なのは約1200世帯でした。先日もこのページで書きましたが(自主避難者の意向調査)、市町村役場が各戸に回って意向調査と相談に乗っています。行き先を決めることができない世帯は、それぞれの事情を持っておられます。経済的な理由、近所とのつながり、判断がつかないなどです。
まだ決まっていない世帯がわかると、対応も可能になります。丁寧に相談に乗って、仮の住まいから恒久的な住まいに落ち着いてもらうことが、次の課題です。

被災地の子供

日経新聞が、2月10日から3週連続で金曜日に、「復興のチャイム2017 」として、被災地の子供を取り上げてくれました。
2月20日「高台の新校舎 児童笑顔
2月17日「福島の未来、生徒が開く」
2月24日「学ぶ機会、教室の外にも
被災地の子供は、子供の時につらい思いをし、また仮設校舎で学ぶという苦労もしています。住まいも狭い仮設住宅、もちろん勉強部屋はありません。中には、両親を亡くした子供もいます。
学校教育だけでなく、生徒からの視点や、学校外教育も。教育委員会や学校の先生に任せておくと、視野はここまで広がりません。
このような記事は、ありがたいですね。

公共インフラの本格復旧・復興の進捗状況

復興庁では、四半期ごとに、公共インフラの本格復旧・復興の進捗状況を見やすい形で公表しています。平成29年1月末時点の数値がまとまりました。
見ていただくとわかりますが、災害公営住宅は78%完成し、高台移転の宅地造成は60%になりました。3か月前に比べて、それぞれ8%と7%の増加です。このような工事は、2年かかるとして(もっとかかるのですが)、1か月ごとに4%ずつ完成するのではないのです。基礎工事に半年かかり、それから躯体工事、仕上げと進みます。1年経っても完成割合はゼロです。そして、後半になると次々と完成するのです。
住民の意見集約、用地買収、大規模工事と、これまでにないことに努力いただいた関係者に、お礼を申し上げます。

先日も、「阪神淡路大震災際の時は、もっと早く工事が終わっていた」と指摘する人がいました。遅れているか所について「復興庁は、もっと早くできないのか」とおっしゃる方もいます。
その方には、東日本大震災の現場を見て欲しいです。住民が意見集約するのに時間がかかることを、理解しておられません。国が場所と新しい町並みを決めて工事をすれば、もっと早くできたでしょう。でも、それで住民の方々は納得したでしょうか。町は、国が作るものでしょうか、それとも住民が作るものでしょうか。
復興で時間がかかっているのは、高台移転、土地区画整理、住民の意見を聞いて計画を見なおしている防潮堤です。これらに共通するのは、「住民の意見を聞いて、その意見の集約に時間がかかっていることです。

原発事故避難指示、2町を除きかなりの地域で解除

今朝の朝日新聞1面トップは、「原発避難、今春4町村3.2万人解除 困難区域なお2.4万人」でした。この記事を読んでいただくとわかりやすいのですが、事故後に11市町村、約8万人に出されていた避難指示は、この春で、約7割が解除されます。
避難指示が継続しているのは、町の多くが帰還困難区域になっている双葉町と大熊町の全域、それに浪江町、富岡町、飯舘村、葛尾村、南相馬市の一部(帰還困難区域)です。
後者の5市町村では、町の中心部は避難指示が解除され、町としての機能を復旧できます。双葉町と大熊町は、町の一部に復興拠点を作って、町の復興の足がかりを作ります。
その結果、避難指示を解除できる区域は、この春にほぼ解除するということです。
原発事故被災地では、新しい段階に入ります。もっとも、避難指示解除は、復興の出発点に立ったと言うことです。津波被災地で例えれば、津波の水が引いたという状態です。記事でも指摘されているように、住民に帰ってもらうために、商店、病院、学校、働く場など、生活に必要な環境を整える必要があります。