「災害復興」カテゴリーアーカイブ

行政-災害復興

経済同友会、人を育てる支援

経済同友会の会報「経済同友」3月号が、「東北未来創造イニシアティブの5年間」を特集しています。詳しくは、原文をご覧いただくとして。この企画は、被災地での人材育成を、経済界が応援してくださるものです。企業から派遣されて活躍された方々、受け入れた自治体、塾で養成された人たちの話が、詳しく紹介されています。
お金や物資以外の支援、これが今回の東日本大震災で目立った、企業の支援です。人材派遣、ノウハウの提供など、各企業の特性を生かした支援です。私は、企業の社会責任・社会貢献に、新しい地平を開いたと考えています。
今回の取り組みを良い事例として、今後、様々な分野でこのような企業と地域との連携ができると良いですね。しかし、お金やモノの支援と違い、いろいろと難しい課題があります。また、受け入れる自治体側の意欲、両者をつなぐ役割が必要です。
このような支援をしてくださった同友会と企業の皆さんに、お礼を申し上げます。ありがとうございました。

除染、ひとまず完了

3月26日の朝日新聞1面トップは、「避難指示区域、除染完了へ、今月末、帰還困難区域に重心」でした。
・・・東京電力福島第一原発の事故で放出された放射性物質を取り除くため、環境省が福島県内11市町村の避難指示区域内で進めてきた除染作業が、目標の3月末で完了する見通しになった。政府は今後、残る帰還困難区域の除染とインフラ整備に福島復興の重心を移す・・・
前例のない作業です。どのような方法が合理的か、はぎ取った土や草木はどこにどのように保管するのか。それを試行しながら、進めました。関係者の努力と、作業員のおかげで、ここまで来ることができました。6年間に2.6兆円の費用が投じられました。環境省の「除染情報サイト」。

事故直後は、いつになったら放射線量が低下し、人が戻ることができるのだろうかと思い、今日の日を想像できませんでした。なにより、膨大な数の避難者の生活をどうするかの方が、重要課題でしたから。
なお、記事では、東電社員の支援活動も取り上げられています。住民の留守宅の後片付けや草刈りなどです。これまでに延べ30万人が参加しています。案外知られていない活動です。東電のサイト

また、社会面では、「除染後も消えぬ不安 避難8万人、帰還戸惑う住民も」を載せていました。
・・・原発事故から6年。飛散した放射性物質を除去するという前例のない除染事業が3月末でほぼ完了する。約2・6兆円を投じた一大事業となったが、放射線への住民の不安は残ったままだ。いまなお避難する約8万人の住民の帰還を促すテコにはなっていない・・・

政府としては、住民が帰還できるように、地域のにぎわいを取り戻せるように、除染、インフラ復旧、生活環境整備を進めています。
避難した住民の意向は、早く戻りたい、しばらく待つ、戻らない、分からない、と分かれています。それぞれにご事情があり、また考えがあります。それを尊重すべきです。
特に、帰還困難区域については、戻れないことを前提に、東京電力が、財物について全額を損害賠償し、故郷を失うことについての精神的賠償もしました。
住民のそれぞれの意向に沿った、条件整備をすることが、政府の責任です。

原発事故への偏見

福島民友新聞社が、「復興の道標 不条理との闘い」を連載しています。
・・・震災、原発事故から間もなく丸6年。「福島は危険」といった偏見などゆがんだ見方は国内、海外で根強く残る。正しい理解をどう広げるか、必要な取り組みを考える・・・

原発被災地では順次、避難指示が解除され、生活を再開する準備を進めています。ところが、風評という大きな課題が見えてきました。一つは、福島産の農産物が売れないことです。もう一つは、観光客特に学生の修学旅行が戻らないことです。もっとも、これらについては、安全性を広報して、徐々に解消しつつあります。
もう一つの大きな問題は、偏見です。「福島は危険だ」という根拠のない見方が、ごく一部の人とはいえ生じているのです。避難者がいじめに遭ったりしています。

福島民友の取り組みは、的確です。しかし、そのような偏見を持っているのは、福島県外の人なのです。その人たちに、どのようにして正しい認識を持ってもらうか。大きな課題です。
残念なのは、部外者が「よかれ」と思って、福島の一部のことを発言されることです。悪意はないのですが、誤解を広げてしまうことがあります。難しいことです。

被災者へのゆがんだ視線

4月15日の福島民友新聞が、「復興の道標・不条理との闘い」「笑顔は困ると中傷 被災者へゆがんだ視線」を報道していました。
・・・「おまえたちが笑顔では困る。泣き悲しんでいないといけないんだ」。NPO法人ハッピーロードネット(広野町)の理事長・西本由美子(63)はある時、こんな中傷の電話を県外の男性から受けた。
本県沿岸部を南北に貫く国道6号の環境美化に取り組む清掃ボランティア活動「みんなでやっぺ!きれいな6国」を、浜通りの各青年会議所と協力して実施している。
高校生らが、自分の通学路のいわき、広野、南相馬、相馬、新地5市町でごみを拾っているが、これに対し「子どもを被ばくさせる殺人者」などと国内外から活動を批判、中傷するファクスやメール、電話が殺到した・・・
・・・「泣き悲しんでいないと困る」との中傷もその一つだ。国の原子力政策への不信感などを背景に、東京電力福島第1原発周辺地域を「原発事故被害の悲劇の象徴の地」として固定しようとする外部からのゆがんだ思いが、県民を苦しめる。西本は「原発に賛成、反対とは関係なく、私たちがここで生活しているということを分かってほしい」と願う・・・

「被災者に寄り添う」と言いつつ、一部の人ですが、被災者を傷つける言動をする人がいます。また、結果として、被災者の自立を妨げている言動もあります。「支援」が、被災者を「被災者という状態に固定してしまう」ことになっているのです。

第一原発視察

今日は、久しぶりに第一原発を視察しました。国会議員の勉強会に同行してです。私の役割は、バスの中で、復興の現状と課題を説明することです。初めて入る方もおられ、説明のしがいがありました。

第一原発敷地内は、どんどん変化しています。簡単に言うと、「平常の作業場」になっています。かつては防護服を着て、顔を覆う面体をつけて、苦しかったですが、今はほとんど普通の工場と同じです。ヘルメットとマスク、違うのは入退場時に放射線量検査を受けることです。もっとも、これも念のためで、飛行機に乗るより、受ける放射線量は少ないのです。

いまも、毎日6千人の作業員が働いています。廃炉作業は、まだまだ続きます。30年とか40年と想定されています。具体的な工程表を作ることができません。技術的に難しいのです。となれば、無理して急ぐことなく、着実に進める方が良いでしょう。40年と言うことは、人生で言うと2世代です。私が公務員になったのが39年前です。いかに時間がかかるかわかります。速度より、着実な作業を期待しましょう。無理して、二次災害を起こすことは困ります。