カテゴリーアーカイブ:政治の役割

検証なき国は廃れる

2016年4月25日   岡本全勝

4月24日の日経新聞政治コラム「風見鶏」秋田裕之編集委員の「検証なき国は廃れる」から。
イギリスのブレア首相は2003年、イラク戦争に参加します。しかし、参戦する理由だった大量破壊兵器は、見つかりませんでした。イギリスでは、2009年に独立調査委員会が作られ、8年かけて検証を終えました。尋問に応じた要人は、ブレア首相を含め100人を超えます。
一方のアメリカは、イラク戦争だけでなく2001年の同時テロの教訓も、独立調査委委員会で洗い出し、それぞれ600ページの報告書を10年前に出しています。日本は戦争には参加しませんでしたが、支持しました。
・・・日本はなぜか、失敗を深く分析し、次につなげるのが苦手だ・・・元幹部を含めた複数の外務省幹部によると、これらを正式に調べ、総括したことはないという。多くの人が原因にあげるのが次の2点だ。
*日本人の性格上、失敗の責任者を特定し、批判することを好まない。
*これからも同じ組織で働く上司や同僚の責任を追及し、恨まれたくないという心理がみなに働く。
同省にかぎらない。日本の組織には多かれ少なかれ、こうした「ムラ的」な風土がある。ならば、ときには第三者が必要な検証をしていくしかない。国家の場合、その役割をになうべきなのは立法府である・・
太平洋戦争中の日本陸海軍が、検証と責任追及を怠ったことは、有名です。例えば、「失敗の本質」。
論旨の展開を無視して、ごく一部を引用したので、原文をお読みください。

木寺准教授、政治学入門書

2016年4月25日   岡本全勝

木寺元・明治大学准教授が、『政治学入門』(2016年、弘文堂)を出版されました。若手研究者による共著です。編者の狙いは、次のようなものです。
・・・「政治現象と政治学を結びつける」というコンセプトのもと、政治現象を考える上での道具として、政治学のものの見方を届けます。
今の政治現象に関する具体例を用いながら、政治の仕組みの説明と、政治学の分析の基本的な方法の解説を融合させることで、政治学を使うと政治現象がどう見えるかを、わかりやすく説明します・・・
このような本は、重要ですね。政治学者向けに、世界の最先端の学問状況を知らせることも必要ですが、多くの有権者と有権者予備軍は、そんな「最先端のこと」は必要ありません(知りたい人は、それらを読めば良いのです)。
それよりは、今の日本の政治をどう学問的に分析するのか。そちらの方が、現在日本の政治に関心を持ってもらうために有用です。そして、政治を「本業としない」大学生たちに興味を持ってもらうこと。この狙いは、なかなか難しいです。各分野の最先端の研究を並べて、「政治学入門」とする方が、簡単ですから。
ところで、しばしば雑誌も新聞も、「日本の政治はダメだ」と書き募ります。それを毎日聞かされたら、国民も「日本の政治はダメなんだ」と思い込みます。戦後70年間、メディアや学界が「国民を教育した」結果がこれです。
すべてを肯定することも、すべてを否定することも、ともに正しくありません。良いところはよしとし、悪いところを指摘して代案を出す。そろそろ、成熟した言論の世界に入って欲しいです。そうしないと、進歩はありません。
すべてを否定することは、楽なんですよね(脱線。そのような論調を書いている人は、子どもたちをどのように教育しているのでしょうか。良いところを誉めなければ、子どもは育ちません)。

アフリカの今

2016年4月20日   岡本全勝

NHKカルチャーラジオ、松本仁一さんの「アフリカは今」が、勉強になります。私は、テキストを読んだのですが、放送は4月から6月です。
かつては王国があり立派な統治が行われていたのに、ヨーロッパが奴隷貿易などで、それを崩壊させます。そして植民地へ。1960年代に相次いで独立を果たしますが、ある国は豊かな資源が徒になり、ある国は民族構成を無視した国境線が原因となり、さらに政府の腐敗で、統治が崩壊します。生々しい現実と分析が、紹介されています。毎日のニュースを読んでいるだけでは、わからない現実です。

原発も家族の形も「裁判所が全部決めている」

2016年3月29日   岡本全勝

日経新聞3月20日「風見鶏」は、坂本英二さんの「縮む政治と膨らむ司法」でした。
・・・日本は先進民主主義国家に違いないが、最近は三権のバランスはこれで良いのかと疑問に思う機会が増えた。この数カ月だけでも政府首脳や与野党議員が固唾をのんで司法判断を見守るケースが相次いだ・・・
・・・昨年12月16日、最高裁は2つの判断を示した。
女性に離婚後6カ月間の再婚禁止期間を設けた民法733条のうち、100日を超える部分は「違憲」。
夫婦は同じ姓を名乗るとする民法750条は「合憲」。選択的別姓制度に合理性がないと断ずるものではないと付言した・・・
・・・日本は法治国家だから判決結果に従うのは当然だ。しかし本来は有権者に選ばれた国会議員がもっと処方箋を示し、利害を調整していくべきではないか。
最高裁は「高度に政治的な事案は明白に違憲でない限り、内閣や国会の判断に従うべきだ」との統治行為論の考え方をとってきた。政治が役割を十分に果たさないため、司法の出番が増えているように感じる。
家族の形、衆参選挙での「1票の格差」是正、憲法への自衛隊の明記などは、長い時間があったにもかかわらず見直しが先送りされ続けてきた。今のままでは「国論を二分した状況を放置するより最高裁に決めてもらった方がいい」との声が出かねない・・・
原文をお読みください。

政府の役割、峻厳さ

2016年3月15日   岡本全勝

朝日新聞3月12日オピニオン欄「東日本大震災5年、私たちは変わったのか:5 公と私」、牧原出先生の「政治問う声、社会決める」から。
・・・「3・11」で、政府の行動に何よりも求められるのは峻厳さだと、国民は体感しました。巨大で深刻な問題に、時機を逸することなく、断固として的確に手を打たねばならないという国家の役割が国民にはっきり見えたのです。
冷戦終結後の1990年代には、物事は社会や市場で解決されるだろうという楽観的なガバナンス論が広がりました。その考えに立った最後の政権が民主党政権ともいえる。ところが2008年のリーマン・ショックでは、市場の暴走に国家がしっかり対峙すべきだという考えが浮上した。こうした考え方を、震災は押し広げました・・