カテゴリーアーカイブ:政治の役割

ミャンマーの民主化

2017年2月21日   岡本全勝

2月17日の朝日新聞オピニオン欄はテインセイン・ミャンマー前大統領のインタビュー「軍政に幕を引く」でした。詳しくは原文を読んでいただくとして。
軍事政権を平和裏に民政に移管しました。2003年に、軍事政権が民主化への行程表を発表し、憲法策定のための国民会議の再開、憲法の基本方針の審議、憲法草案の起草、国民投票、総選挙実施、国会召集、大統領選出の道筋を示しました。民主化には紆余曲折があり、2016年に、アウンサンスーチー氏率いる野党に政権を渡しました。
インタビューでは、民主化の前提として経済発展を進めたことが述べられています。
・・・ただ、すぐに民主主義体制になる、というわけにはいきません。経済面で課題がありました。車道もない、橋もない、教育施設もない。インフラが貧弱ななかでは、民主化はすぐには達成できません。まず経済を発展させ、インフラを整え、教育を立て直すことが必要だったのです。
「経済の基礎がなければ民主化が進まないと考えていた、と?」
・・・そうです。だから、まずはインフラを整え、経済を発展させる必要があると思っていました。
経済を立て直し、教育も推進するため、2003年にロードマップ(行程表)7点を策定しました。それをステップ・バイ・ステップで進行させていったのです・・・
・・・繰り返しになりますが、民主化の移行のためには基本的に必要な『土台』があります。経済発展です。経済がしっかりしないまま民主化に突き進み、失敗した例は海外にたくさんあるではないですか。橋や道路、大学を整えるのには時間が必要だったのです・・・

国づくりを進める際の、苦労がでています。指摘されているように、民主化だけを進めても、国民の不満が出て政情が不安定になった例は、最近のイスラム圏にも見られます。経済、インフラ、教育などを整える必要があります。いろいろな問題があることを認めつつも、暴動や流血なしに民主化した例、軍政幹部が指導して民主化した例として、高く評価されるべきだと思います。

「トランプ大統領」が、民主主義と資本主義につきつけるもの

2017年1月25日   岡本全勝

1月22日の日経新聞、マイケル・サンデル・ハーバード大学教授の「これからの民主主義の話をしよう。市民の無力感 解消の道探れ」から。
・・・欧州では多くのポピュリズム政党が台頭しつつある。だからこそ、今こそ、民主主義と資本主義について根本から問い直す時期だ。民主主義についていえば、政府を代表する伝統的な組織や機関はお金や企業の利害によって左右され、普通の市民の声が反映されていない、と人々は感じている。それこそ、民主主義に対する不満の源だ。
資本主義についていえば、過去数十年間にわたるグローバリゼーションと技術革新の結果、生み出されたものは格差だけだったという点があげられる。この問題と向き合わなければならない。政治の世界において、我々はもっと普通の市民に意味ある発言をしてもらう方法を見つけなければならない。経済の世界では、グローバリゼーションと技術革新がもたらす利益を広く共有できる術を見いだす必要がある・・・

「そういう観点で見れば、トランプ政権の誕生はある種の社会革命ともいえますね」という問に。
・・・その通りだ。ブレグジット(英国による欧州連合離脱)も全く同じ構造だ。部分的には経済上の問題だが、実は社会的、そして文化的な反発が背景にはある。その反発とはつまり、エリート階層が普通の人たちを見下している、ということだ・・
・・・格差の問題は昨年、突然、表面化したわけではない。過去20年以上、我々はその問題を提起してきたが、本来、労働者に寄り添うはずの民主党がプロフェッショナルな階層や、ウォール街に近づいてしまった。この結果、民主党は普通の労働者から遠ざかってしまった。
米国ではこれまで、格差について人々はあまり心配していなかった。我々はいずれ上向くという信念があったからだ。貧しい出であっても、のし上がることはできる。それこそ、アメリカンドリームなのだ。
しかし、今、そうしたケースが急速に減っている。今は米国において、貧しい生まれなら、その7割は中間層にすら上がることができない。上位20%の層に入る率はわずかに4%だ。上位の層に上がる率は今や、米国よりも欧州の方が上だ。これはアメリカンドリームの危機といえる。もし、子供たちに「格差のことは心配しなくても、君たちはのし上がることができる」と言えなくなれば、もっと平等や団結といったことに注意を払わなければならなくなる・・・

原文をお読みください。

トランプ大統領とポピュリズム

2017年1月24日   岡本全勝

1月21日の朝日新聞オピニオン欄「分断の行方」、水島治郎・千葉大学教授の発言から。
・・・トランプ氏の政治手法はポピュリズム的です。欧州のポピュリログイン前の続きズムとも共通点が多いのですが、違いもある。
ポピュリズムにも「右」と「左」があります。左派ポピュリズムは、貧富の差が激しい中南米などに多く、分配を求める。右派ポピュリズムは、欧州のように福祉国家化が進み、格差が比較的小さい社会で、移民を排除する。
米国は、欧州と中南米の中間の社会です。先進国ですが福祉国家化が遅れ、西欧より格差が大きい。だからトランプ氏の右派ポピュリズムと、民主党のサンダース氏の左派ポピュリズムの両方が支持を得る。ハイブリッド型です。
既成政治かポピュリズムか、右か左かという2本の軸で分けると、「既成で左」がクリントン氏、「既成で右」がジェブ・ブッシュ氏ら共和党主流派、「ポピュリズムで左」がサンダース氏、「ポピュリズムで右」がトランプ氏を支持したといえます。中南米は「ポピュリズムで右」が弱く、欧州では「ポピュリズムで左」が弱いが、米国は四つがそろっている・・

水島先生は、昨年12月に、『ポピュリズムとは何か―民主主義の敵か、改革の希望か』(2016年、中公新書)を出しておられます。これを読むと、各国の社会・政治的背景によって、一概にポピュリズムが悪だとは言い切れないようです。その点については、別途書きましょう。

日本独自のもの、多い首相の議会解散

2017年1月21日   岡本全勝

先日、日経新聞連載「日本の政治ここがフシギ」、第3回「議論深めぬ廃案戦術 「日程闘争」が常態化」を紹介しました(1月17日「日本独自の慣習、国会の会期」)。20日は、第5回「強すぎる?議会解散権  熟慮遮る選挙の影」でした。
・・・「解散風」。日本の政治ニュースではよくこんな言葉を目にする。最近では2009、12、14年と2~3年ごとに衆院解散があった。主要先進国をみると、ここまで頻繁に解散をする国は珍しい。世界では解散は時代遅れになりつつある・・・
・・・主要7カ国(G7)のうち、解散の制度があるのは米国を除く6カ国。過去60~70年でドイツは3回、フランスは5回しか解散していない。英国は11年、解散を任期満了か下院の可決時に限る法整備をした。安定政権で財政再建に取り組む目的だが、連立与党が「抜き打ち解散」封じを求めた面もある
・・・日本は47年の憲法施行後、解散は23回に上る。首相の主体的な判断で憲法7条に基づいて天皇の国事行為として解散する「7条解散」が定着し、回数は多い。解散権は首相の「伝家の宝刀」「専権事項」といわれ、いわゆる「大義」がなくてもいつでも国民に信を問える政治的な武器・・・
・・・「選挙が遠いなら、もっと政策に力を入れられるのに」。昨年暮れ。ある野党議員は地元で支援者との忘年会をハシゴして嘆いた。昨年は7月の衆参同日選、17年初めの解散が噂され、文字通り「常在戦場」だった・・・

政権の安定のためや、重要政策について民意を問うために、首相の議会解散を柔軟に認めるのか。議員が腰をすえて政策議論できるように、首相の解散権を制約するのか。
安定して政治を行う観点から、かつては首相がしばしば交代した日本の特性とともに、安定した国会議論や「政治における期間」というものをどう考えるかです。

日本独自の慣習、国会の会期

2017年1月17日   岡本全勝

日経新聞連載「日本の政治ここがフシギ」1月16日は、第3回「議論深めぬ廃案戦術 「日程闘争」が常態化」でした。
・・・20日に召集する通常国会でも構図は同じだ。政府・与党は働き方改革の関連法案や、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案などの会期内成立を目指す。対する野党は対決法案と位置づけ「延長させるつもりで臨む」(民進党幹部)と意気込んでいる。野党は常に会期をにらんだ日程闘争を選ぶ。なぜだろうか。
国会法では「会期不継続の原則」がある。会期が終わると、各委員会で議決しない限り、審議途中の議案は全て廃案になる。議員数では法案の成立を阻止できない野党には「会期末までに採決させない」ことが有効な抵抗手段だ。会期延長も「一定の成果」と考える・・・
・・・欧米主要国の議会では、会期が終わると原則、廃案になるルールは英国にしかない。下院(日本の衆院)議員の任期中は、議案が継続するのが主流。フランスでは最長5年も議案が生き残る・・・

・・・国会の会期はどうか。日本の国会は主に、1月召集の通常国会(常会)と、通常は秋に開く臨時国会(臨時会)がある。常会は150日で1回延長できる。2015年は95日間延長し、245日と会期をとって安全保障関連法を成立させた。
欧州の主要国では会期の概念は希薄だ。年間の審議日数は少ないが、緊急時に法案審議をする必要がある場合などは招集手続きなしで審議を始められる。事実上の「通年国会」だ。
ドイツでは国会開会前、与野党で全ての審議日程を合意する慣例がある・・・

記事では、欧米先進国との比較が、表になっています。ご覧ください。
明治以来、日本はこれら欧米先進国をお手本に、いろんな制度を輸入しました。ところが、その後の運営において、日本独自のものに作り替えたようです。また、制度は輸入しても、運用は日本風にしたようです。学者の議論も制度の紹介に終わり、官僚による「輸入」も制度までで、運用については、先進国を習わなかったようです。何もかも西欧風にする必要はないのですが、西欧と比べどちらが合理的効率的かは、議論するべきだと思います。