カテゴリー別アーカイブ: 復興10年

提言、原発事故復興基本法案、2

提言、原発事故復興基本法案」の続きです。

原発事故復興基本法の骨子は、次の通り。
1 原発事故からの復興について、東京電力と政府の責任
2 行うべき作業の全体像
3 各作業の計画と担当者
・廃炉。東電と経産省
・除染と中間貯蔵施設。環境省
・避難指示解除。原災本部
・復興。経産省と復興庁
4 賠償について
5 事故の記録と伝承(東電は廃炉資料館を作り、事故の記録を残し展示しています。国はまだ取り組んでいません)
6 予算と財源
7 担当者。全体を統轄する大臣(経産大臣)とその組織(原災本部事務局。内閣府か経産省に局を置くのも一案です。どこにあるか分かるようにするべきです)。

提言、原発事故復興基本法案

大震災から10年が経過して、残っている大きな課題は、原発事故からの復興です。
取材を受けて、東電福島第一原発事故からの復興については、「復興作業の課題、各論」のほかに、「取り組みの課題、総論」があることが明確になりました。
取材に来る記者さんたちが、課題の全体像を知らない、責任の主体を知らない、これまでの記録も一覧できていないのです。「岡本は津波と復興の責任者だったけれど、原発事故対策は担当でなかった。経産省の岡本に当たる人に取材に行ってよ」と言うのですが、「どこに行けばよいかわからない」と答えるのです。

そうなっているのは、次のような理由からです。
・原発事故からの復興の全体像が示されていないこと。
(これまでの記録すら、政府のホームページで簡単には見ることができません)
・津波災害からの復興については復興庁が作られ、責任組織が明確だったのに対し、原発事故についてはそれが作られなかったこと。
(原災本部はありますが、これは閣僚会合です。その下にあるべき事務局がどこにあるのか分からないのです。原子力安全・保安院がつぶされて、宙に浮いています。原災本部は官邸にホームページがありますが、事務局へのリンクも張られていません。復興庁パンフレットp2。「責任を取る方法4」)

これから、30年以上もの長期間にわたって、廃炉作業が続きます。法律で任務を明確に定めておかないと、だんだん忘れられて曖昧になる可能性があります。また、職員も代替わりします。任務と担当者を明確にしておく必要があるのです。通常、各省の仕事は、法律に基礎があります。そして、担当大臣も定められています。
そこで、東電福島第一原発事故復興基本法(原災復興法)ともいうべき法律を作るべきだと考えました。趣旨は、次の通り。
1 原発事故からの復興について、東京電力と政府の責任を明らかにする。
2 行うべき作業の全体像を示す。
具体例は、次回書きます。

坪井ゆづる・朝日新聞論説委員は、先行きが不透明な廃炉作業について、「廃炉作業も見通せない。計画の遅れを見るにつけ、廃炉をやり遂げることを法律で定めておかなくて大丈夫なのかと思うようになった。・・・ずるずると計画を後退させないための廃炉法の制定が必要ではないか」と書いておられます。月刊『自治実務セミナー』3月号「災害復興法制の光と影」。この項続く

月刊「地方財務」特集、東日本大震災から10年

月刊「地方財務」3月号が、東日本大震災から10年の特集を組んでくれました。

末宗徹郎・前復興事務次官の総括のほか、
現場からは、戸羽太・陸前高田市長、須田善明・女川市長が、
復興庁からは、大田泰介・参事官の被災者支援、杉山真・参事官の復興交付金制度、石川靖・参事官の産業の復旧復興、御手洗潤・中井淳一・井浦義典・参事官による福島再生加速化交付金の解説があります。
復興への取り組みがよくわかる内容になっています。

JETプログラム経験者による東日本大震災のドキュメンタリー

自治体国際化協会ニューヨーク事務所が、震災10年を機に、海外からの支援を世界の方々に知っていただくため、ドキュメンタリー映像の上映やパネルディスカッションを行います。3月6日から12日の1週間にわたり、オンラインで開催です。
JETプログラム(※)関係者が、作品の監督、取材対象、パネリスト、あるいはスタッフとして関わって創っています。
上映作品6本のうち、LIVE YOUR DREAM(3月10日)は、震災で犠牲となった元JETのテイラー・アンダーソンさんの軌跡と石巻の人々に対する情熱をたどる作品。Tohoku Tomo(3月6日)は、震災後に東北各地で復興のために活動してきた国際色豊かなコミュニティ・団体による日本に捧げる思いを映し出したストーリーです。3月12日は東北3県のJET等のライブ出演により、東北の未来を考えるパネルディスカッションを行います。

Footprints & Footsteps: 3.11 and the Future of Tohoku 3.11から現在、そして未来へ —映像で振り返る東北の10年—」https://ff311tohoku.eventive.org/
3月6日~12日、各日午前9:00-11:00(3月15日11:00まで視聴可能)
上映作品等:ドキュメンタリー映像6本、パネルディスカッション3本
無料、URLより要予約
上映作品は日本語/英語、パネルディスカッションは英語

JETプログラムは、語学指導等を行う外国青年招致事業です。これまで75カ国から7万人以上が参加しています。地域での草の根の国際化を進めています。

エマニュエル・トッドさん。大震災の位置づけ

2月24日の読売新聞解説欄「東日本大震災10年」、エマニュエル・トッドさんの発言「原発維持 意義ある決断」から。

大震災の位置づけについて
・・・原発の安全神話の瓦解を含め、3・11を太平洋戦争の敗北に続く「敗戦」とする声もあると聞きます。
私はそうは思わない。
戦後、驚異の復活を遂げた「無敵」の日本が失墜したのは1990年代初めのバブル崩壊です。日本は米国に追いつき・追い越せを標語に、右肩上がりの成長を続けた。金満になり、米国を追い越そうとした矢先にバブルがはじけ、弱点である硬直性を露呈した。日本単独では未来を創れないこと、新しい世界像を示せないことが判明した。日本の転換点でした。
これは中国が将来直面する事態でしょう。中国は米国と肩を並べたと思った途端に挫折するはずです。
日本はバブル崩壊後、謙虚になりました。成長は停滞しますが、科学技術の競争力を維持し、先進国・経済大国にとどまった。強靱さを身につけたのです。
3・11でも強靱さを示した。初動では混乱や過ちもあったのでしょうが、取り乱すことはなかった。
無論、廃炉や除染を含め、日本は「フクシマ」と共にあり続けなければなりません。唯一の被爆国にとって複雑で重い課題でしょう・・・

人口減少について
・・・とはいえ、日本の最大の問題は人口減少です。
私見では、日本はようやく移民受け入れに転じた。2019年施行の改正出入国管理・難民認定法で受け入れにカジを切った。既に流入は進んでいました。年間の流入人口から流出人口を引いた「純移動」は17年、約36万人で、フランスの2倍でした。大半が移民のはずです。
労働力不足に悩む経営者らは流入を支持している。移民は増え続けるでしょう。
人口危機は長い潜行の後、顕在化し、制御不能に陥る。世界一の高齢化社会の日本にとって移民は必須です。

助言が二つあります。
日本人の安寧は「日本人どうしでいること」です。異文化を尊重し、共生をめざす多文化主義は不向きです。移民を同化させる不断の努力が必要になります。
ただ移民受け入れだけでは不十分、やはり子供が多く生まれる必要がある。移民の子らが日本の子らと混じり合い、日本人らしくなるのが理想です。喫緊の課題は低い出生率を引き上げる抜本策を見いだすこと。女性の地位を巡る意識の転換が不可欠です。
3・11を機に人口減少が一層加速した被災地は日本の縮図です。日本の人口減少を制御できなければ、真の復興も成就できません・・・