「地方行政」カテゴリーアーカイブ

地方行財政-地方行政

アメリカ、住民投票ビジネス

10月30日の朝日新聞国際面は、アメリカの中間選挙を伝える記事で、住民投票の署名集めを請け負うビジネスを紹介していました。カリフォルニア州では、9件が住民投票にかけられます。カリフォルニア州では、住民投票のためには、43.4万人の署名を150日間で集める必要があります。州憲法改正の住民投票には、69.4万人の署名が必要です。
一見、高いハードルですが、ある案件は2か月足らずで、必要数の署名を集めたそうです。夫婦二人の会社が請け負い、1,500人のスタッフで集めました。署名1人当たり1.55ドルの出来高払いです。提案者はそのために、103万ドルを使ったそうです。
その他、投票の文言を書く弁護士、運動を仕切るコンサルタントなどのプロが介在し、テレビのコマーシャルにも巨費が投じられます。ときに、1千万ドルにもなるとのこと。企業や労組などのスポンサーがついた投票も多くなります。住民投票もビジネスになる。アメリカらしいですね。

地方政府の不執行に対するアメリカ州政府の是正

住民基本台帳ネットワークが、2002年から動き出しました。しかし、法律の期待に反して、このシステムに参加しない市町村が出てきました。杉並区は、参加を希望する住民のみを参加させようとして、東京都と国を相手取って訴訟を起こしました。地方分権改革によって、国の関与に関する係争処理手続が導入されましたが、国の側からは利用できなかったのです。そのため、国からの是正要求に対して、地方自治体が応じない場合は、国はどのような手段を取ることができるのか。今回の事例が、それを顕在化させました。
月刊誌『地方自治』2010年10月号(ぎょうせい)に、柴田直子神奈川大学准教授の「アメリカの地方政府による州政府の不執行と州政府による是正」が載っています。分権の国アメリカで、どのように解決しているのか。ご関心のある方は、お読みください。

地域の問題、人と人とのルールづくり

9月25日の朝日新聞オピニオン欄は、「バーベキューは迷惑か」でした。川崎市の多摩川河川敷での問題です。春から秋にかけて、土曜日曜は大勢のバーベキュー客で、「花見の公園」状態だそうです。楽しんでいる人はよいのですが、問題は大量のごみと騒音。音響機器とロケット花火もすごいそうです。花火は朝まで鳴っていることも。夕方からは、お酒が入って、物を壊す、吐く、便をする・・、地元民にとっては、たまったものではありません。そこで、有料化への社会実験を始めました。
このような地域の問題を、どう解決するか。地域コミュニティと自治体の力が、試されます。3人の方の意見が、紹介されています。ご覧下さい。
地域の課題は、国から来るのではなく、地域から発生する。そしてそれは、お金をかければ解決できるものではない。コンクリートやモノの問題ではなく、人と人との関係である。私が長年主張していることの、一例です。

アメリカの連邦と州、訴訟による決着

講談社のPR誌「本」10月号に、宇野重規東大教授が、「政治を哲学する、不思議の国アメリカの政治」を書いておられます。オバマ政権で、ようやく国民皆保険を実現するための法律が成立したことに関してです。先生が紹介しておられるのは、この法案が成立した後、各地で訴訟が起きたことです。フロリダ州の司法長官ほか13もの州が、法律の無効確認訴訟を起こしました。
・・この改革によって、各州の財政が悪化するということもある。しかしながら、連邦議会で可決され、大統領も署名した法案に、各州から「これは州の権限を奪うものだ」という理由で訴訟が起こされるというのは、日本人の目には不思議に見える。国会で成立した法案に、都道府県から相次いで訴訟が起こされるというのは、日本ではあまり考えられない事態であろう・・
逆のパターンも紹介しておられます。アリゾナ州がメキシコからの不法移民を規制するためにつくった移民法に対し、オバマ政権は、連邦の権限を否定するとして、差し止めを求める請求を行いました。連邦地裁で、同法の主要部分を差し止める判決も出ていますが、アリゾナ州は控訴を行い、差し止められた部分以外を施行しました。
アメリカ人のものの考え方を示す例です。最初に州があって、それが寄り集まって連邦をつくったという歴史もあるのでしょう。また先生は、その決着を司法がつけることについても、取り上げておられます。詳しくは、原文をお読み下さい。

平成の大合併

3月31日で、市町村合併特例法の期限がきました。31日の読売新聞夕刊は、平成の大合併が終了し、市町村の数が半減したと、伝えていました。
平成11年から始まった、いわゆる平成の大合併で、3,232あった市町村は1,727になりました。市町村長ら三役と議員が約2,1000人減り、年間1,200億円削減されました。経費削減効果は、10年後に年間1.8兆円になると試算されています。
さらに、規模が大きくなることによる市町村の能力向上は、このような数字では出てきません。例えば消防を考えてください。町村ごとに少ない人数で、少しずつ消防車や救急車を持つより、規模を大きくすると、合計ではより少ない職員数で、多くの部隊を持つことができます。1台しかない救急車が出動している時、もう1件要請があったらどうするか。合併して3台持っていれば、出動することができます。少し距離が遠くなっても。
その点では、まだ小規模な市町村はあります。また、県ごとに合併の進捗度合いは、異なっています。大都市部とその周辺では、あまり進みませんでした。
私を含め、平成11年の時点で、ここまで合併が進むと予想した人は、少なかったと思います。折からの不況、財政難が、合併の背中を押したと考えられます。もちろん、職を失う市町村長や議員の決断、住民の感情を超えた判断があったのです。