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著作

連載「公共を創る」105回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第105回「産業政策と日本の発展」が、発行されました。
前回から、政府による市場経済への介入を説明しています。今回はその3番目「国民を豊にする」政策です。そこには、産業政策、科学技術振興、雇用確保と労働者保護、社会の持続などがあります。

まず産業政策です。財政の経済安定化機能とは別に、特定の産業について計画や規制、財政や税制などの手法を用いて支援が行われます。
1991年のバブル経済崩壊後、幾度となく巨額の経済対策が打たれました。それは景気低迷を抑える効果はあったのでしょうが、日本の産業が世界の競争から落後することを防ぐには効果がありませんでした。この30年間、先進国や中進国が経済成長を続けたのに対し、日本は停滞しました。1人当たり国内総生産(GDP)で米国などに差をつけられ、韓国に抜かれました。景気刺激策と産業政策とは別なのです。

日本は明治以来、産業政策を重要な国家政策として進めてきました。それが、一時は世界第二位の経済大国を実現したのです。

連載「公共を創る」104回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第104回「その理念的な推移」が、発行されました。新年第1号です。

連載第97回(2021年10月28日号)から、社会と政府の関係を再検討しています。
「日本社会が成熟化したのに、私たちの意識と社会の仕組みが追い付いていないことによって、社会の活力と安心が失われている。活力と安心を取り戻すためには、私たちの意識や社会の仕組みを変え、政府の役割を見直す必要がある」というのが、本稿の主張です。その議論の前提として、これまでの歴史の理念的な推移を、簡単におさらいしておきます。

極めて単純化すると、近現代史は、自立した市民像を理想とし、社会や市場に介入しないことが良しとされた自由主義の時代(19世紀)と、自由主義経済を修正し市場の失敗に政府が関与する、併せて弱者に対し社会保障を充実してきた福祉国家の時代(20世紀)から成っていると言えます。
そして、社会の担い手たちはそれぞれに、その時代の社会の問題に対し対策を積み重ね、理論をつくり、さらに対策を進めてきたのです。

市場経済への介入、社会への介入、個人・家庭への介入の三つに分けて説明します。今回は、市場経済への介入です。財政学の教科書に出てくる3機能のほかに、「市場経済が機能する基盤整備」「市場経済の欠陥是正」「国民生活の向上」などもあります。

読売新聞「記録誌作成へ」に載りました。

1月11日の読売新聞「再生の歩み 東日本大震災」「復興事業 記録誌作成へ…高台移転や産業支援 検証」に、私の発言が載っています。
・・・東日本大震災から10年が過ぎたのを機に、復興庁は新年度、総額31兆円を投じた復興事業を検証する記録誌の作成を始める。外部有識者や政策に関わった官僚らからの聞き取りなども行う。今後想定される首都直下地震や南海トラフ巨大地震の備えとして、2023年の発行を目指す・・・
検証はよいことです。ぜひ、充実した検証をしてください。

私の発言「課題 被災者の目線で」
「今回の震災で、政府はインフラ復旧だけではなく、産業の再生やコミュニティーづくりにも取り組み、その後の災害復興モデルとなった。政府として取り組めない分野では、企業やNPOに参画してもらう仕組みを導入した。一方で、事業規模の拡大を招いたと指摘されている復興事業費の全額国費負担(自治体負担ゼロ)など検証すべき課題は多い。被災者の目線で検証をしてもらいたい」

もう少し違ったことも話したのですが。
なお、震災10年で考えたことは、次のページにまとめてあります。
大震災10年目に考えた成果と課題、目次

時事通信社コメントライナー寄稿

時事通信社の「コメントライナー」1月6日号に、寄稿しました。コメントライナーは、時事通信社が契約購読者に毎朝配信する、署名入り解説記事です。

今回の私の記事は、「若手官僚の不安と不満」です。
内閣人事局の依頼を受け、若手国家公務員の研修講師を務めました。幹部候補育成課程中央研修の係長級と課長補佐級の2課程で、どちらも録画です。
幹部候補研修と言えば、事務次官など先輩が経験談と心構えを話すことが定番ですが、主催者の要望は若手職員の不安と不満に答えてほしいとのことです。
内閣人事局の担当者たちと3カ月にわたり議論して、話の重点を決めました。若手官僚の悩みは、「どのようにしたら良い仕事ができるか」「どのようにしたら官僚としての能力が身に付くか」といったことよりも、次の三つのようです。
・生活と両立しない長時間労働がいつまで続くのか。
・従事している仕事が国家国民の役に立っているのか。
・この仕事で世間に通用する技能が身に付くのか。
優秀な学生が官僚を志望しなくなったことや、若手官僚が次々と辞めていくことが報道されています。その原因には、このような不満と不安もあるのでしょう。そこで、仕事の技術のほかに、三つの不安と不満について、その原因と対応策を述べることにしました。

座学の研修は、しばしば「聞いて終わり」となります。そこで宿題も付けました。「配布した講義骨子を上司に読んでもらい、あなたの意見を述べて、上司と30分間意見交換すること」です。若手官僚たちの悩みは、彼らが努力しただけでは解消されません。上司たちが職場の仕事のやり方を変える必要があるのです。それで、このような仕掛けを組み込みました。
研修録画は今年1月から、係長級と課長補佐級それぞれ約700人ずつが受講します。彼らとともに彼らの上司からどのような反応があるか、心配とともに楽しみです。