カテゴリー別アーカイブ: 経済

経済

経済と国家

9日の東京新聞「時代を読む」は、佐々木毅先生の「資源高騰と経済の舵取り」でした。
・・資源価格の高騰を背景にして資源を多く持つ国々が国家的ファンド(SWF)をつくり、先進国の市場に資金を大量に投入することが話題になっている。これを市場に対する「国家の復活」であるとする議論もあるが、こうした国家的ファンド自身が市場の産物であり、市場動向に基本的に依存した現象である。
・・注意すべき点は、われわれの歴史的体験と違うタイプの国家なるものが登場しつつあることである。近代化とは多くの国民が創意工夫をこらして営々と労働し、その成果を民主政治などを通して享受することであるというのが、この数世紀の人類の共通の理解であった。これに対して、富は生産されるものであるよりも、地面を「掘る」ことによって得られるというタイプの国々が台頭しつつある
・・先に述べた近代化モデルのような政治的民主化といったものへの社会的誘因は弱く、膨大な富の蓄積と権威主義体制との両立が起こりやすい
・・この資源価格高騰依存型の体制が、世界の新しいモデルになる可能性は少ない。しかし、その間、膨大な富の国際的移動が起こり、かつての先進国が相対的に富を失うことは避けられない・・そのダメージをなくすることはできないにしても、それを少なくするための賢明な方策を考えることは、今や政府の大きな課題である。

民間の力、競争

桜の季節が近づき、開花予想が出ています。8日の朝日新聞夕刊は、「開花予想競う官民」として、気象庁、日本気象協会、ウェザーニューズの三者の競争を、取り上げていました。気象業務が民間に開放され、こんなサービスも進みました。良いことですよね。

消費税導入

8日の朝日新聞変転経済は、「消費税導入」でした。大平内閣の一般消費税構想が1978年、中曽根内閣の売上税法案が87年、消費税法成立が88年。もう、20年も経つのですね。

日本の停滞、イギリスの見立て

2月27日の日経新聞に、イギリス・エコノミスト誌の特集記事が、紹介されていました。「なぜ日本は失敗し続けるのか」です。
「・・日本経済が回復できないのは、改革の歩みを止めた自民党、党内の意思統一ができない民主党など「政治家」が元凶だと指摘した・・日本停滞の責任の一端は増益を記録しながら賃金を引き上げない企業にもあると指摘。改正建築基準法による住宅着工大幅減など官僚の失敗にも言及した・・」
20年以上前だったら、イギリスに、このような見立てをしてもらうことは、あり得なかったですね。「老大国」と言われたイギリスの復活が、うらやましいです。

世界経済の変化

2月19日の日経新聞経済教室「最高・基軸通貨ドルの行方」で、ウォーラーステイン氏(世界システム論で有名)が、「世界システム、多元的に。覇権の維持難しく。崩れる世界経済の優位性」を書いておられます。歴史と地政学と経済学から、大きな流れて分析してあり、勉強になりました。
そこで学んだことの一つに、世界経済の歴史区分があります。私は、日本の経済を、戦後から石油ショック(1978年)までの高度成長期、石油ショックからバブル崩壊(1991年)までの低成長期、その後現在までのデフレ期の、3つに区分して説明しています。1945年から1955年までの戦後復興期を入れると、4期です。
ウォーラーステイン氏は、1945年から1973年までを第1期として、コンドラチェフの波の上昇期とします。これに続く1970-73から現在までの第2期が、コンドラチェフの波の後退期に当たります。第1期は日本も驚異的な経済発展を遂げましたが、西欧もまた同様で、世界経済の生産と利益が驚異的に拡大しました。第2期は、工業生産の収益性の低下と低賃金地域への工場移転、世界的な失業率上昇と資本大国(日米欧)による雇用喪失の負担の押し付け合いになったこと。工業生産から金融市場での投資・投機へと向かう資金フローの変化とそれに伴う長期的バブルの生成、国家間や各国内での所得配分の顕著な二極化などを指摘しています。
私は、1978年以降の日本経済を、バブル前後で二分しています。しかし、このように世界経済から捉えると、世界経済全体の変化があり、前半は押し付け合いゲームで勝っていた日本、後半はそれに負けた日本、という構図が見えてきます。日本経済の変化も、日本独自による部分と、世界経済の変化によるものと、二つに分けて説明しなければなりません。そして、不可避の部分と、対応可能なものとを分析しなければなりません。
そのほか、地政学的的な分析もあり、なるほどと思うことが多かったです。