カテゴリー別アーカイブ: 社会と政治

社会と政治

所得格差

25日の新聞は、厚労省の発表した「2005年所得再分配調査」を伝えていました。それによると、当初所得のジニ係数は、前回2002年の0.498と比べ、0.526と拡大(格差が広がって)います。その主な要因は、高齢化です。すなわち、高齢者は金持ちと貧乏の差が大きいのです。また、この格差は、近年広がり続けています。
当初所得に、税金の徴収と年金などの社会保障の給付を加味したのが、再分配後所得です。これは、より平等になります。再分配後のジニ係数は0.387と、前回の0.381と比べほぼ横ばいです。社会保障が機能しているということです。もちろん、この0.387が水準としてよいものかどうか、という問題はあります。さらに課題は、若年層での格差の拡大と、地域間の格差です。

社会保障カード

18日の日経新聞夕刊は、スウェーデンのカードを紹介していました。国民一人ひとりが、名前と顔写真と個人番号の入った身分証明書カードを持っています。年金や医療サービスを受ける際には、提示が必要です。そのほか、銀行口座開設などの本人確認に使われるだけでなく、給与や借金も、この番号で会社や銀行から国税庁に報告されます。確定申告も、これに基づいた用紙が国税庁から送られてきて、それにサインをすれば済むのだそうです。所得が正確に把握されているので、社会保険庁もその数字を利用します。
個人情報流失防止のために、個人番号だけでは、データにアクセスできないとのことです。便利ですね。半世紀の歴史が、あるそうです。日本は多くのことを西欧から輸入したのに、なぜこのサービスは、輸入しなかったのですかね。

司法と民主主義

日経新聞1面連載は、「試される司法、先輩国の教え」を始めました。第1回目は、根付く市民参加です。
裁判への市民参加は、民主主義の補完だと思います。王や貴族、天皇や武士、官僚に政治を任せるのではなく、国民・住民が政治を担うことが民主主義でしょう。その責任を、国民が引き受けたのです。投票に行く、税金を納めるだけでは、「あなた任せ民主主義」でしかありません。「専門家に任せておいてはよくないこともある」ということが、いろんな場面で表れています。もちろん、国民が毎日、政治に参加することは不可能ですから、専門家に任せる部分も必要ですが。
私の、「行政構造改革の分類」では、裁判員制度を行政構造改革の一つとして、「公開と参加、官の独占を止める」分類しました。

裁判外紛争解決手続

10日の朝日新聞「ニュースがわからん」は、ADR(裁判外紛争解決手続)を解説していました。裁判によらず、より簡単にもめ事を解決する方法です。交通事故、商品の苦情などを、民間の団体があいだに入って相談に乗ってくれます。「不満はあるんだけど、裁判は手間がかかっていやだし」という人も多いでしょうから、これからは利用される機会が増えるでしょう。もっとも、横文字で示されるように、まだ日本では定着しているとは言えません。そこで、国が認証してお墨付きを与える法律もできました。

社会システムの設計

8日の日経新聞経済教室は、横山禎徳さんの「高齢時代の社会制度設計、産業横断的なシステムに」でした。
・・戦後日本を支えたシステムが老朽化しているのに、高齢社会に向けた新しい「システム」がきちんと準備されていないという問題である。ここでいうシステムとは、コンピュータシステムや情報システムのことではない。もっと広い意味でとらえるべきで、筆者は「社会システム」と名付けている。社会のあらゆる側面は社会システムが支えており、医療、介護、年金、交通、通信、教育、徴税など社会システムとしてとらえられるものは少なくない。
・・社会システムは、その性格上、産業横断的である。「医療産業」には、銀行や保険会社、建設会社、ソフトウエア会社、コンピュータ会社は入らないが、「医療システム」では、医療保険を提供する保険会社、病院や診療所をつくる建設会社、それに融資をする銀行、さらに診療報酬明細書(レセプト)の電子化などに携わるソフトウエア会社、それを処理するハードウエアを提供するコンピュータ会社なども含まれてくる。
産業横断的であるということは、管轄する行政機構も省庁横断的になる。日本の行政機構は長年縦割り行政の弊害を指摘されてきた。・・問題は別のところにもある、すなわち、産業・省庁横断的に課題を解決する能力や生活者の視点での発想が、官僚に身についていない。優秀な日本の官僚も、システムデザインという新たなスキル(技法)を訓練されておらず、社会システムのデザインができないのだ・・
ここでの「社会システム」は、「新地方自治入門」p191で説明した「制度資本」と似た概念です。