カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

支援型上司

10月26日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」、藤原美喜子アルファ・アソシエイツ社長の「カリスマより「サーバント」」から。

・・・研修などで管理職の卵たちと接し、求められるリーダー像が変わりつつあることを実感しているそうだ。いったいどんな変化なのか。

――ずばり、どんなリーダーが今、必要ですか。
「サーバント・リーダーシップを発揮できる人材です。サーバントという言葉は奉仕という意味ですが、『支援型』と言い換えるとよいかもしれません。部下の話をよく聞き、信頼感を醸成し、力を最大限発揮できるよう導く。自ら考え、自主的・積極的に行動する部下を増やすことをゴールとする。そんなリーダーシップの手法です」

――強烈なカリスマ性を有する人物が組織をぐいぐいひっぱる。こんなリーダー像はもう時代遅れですか?
「カリスマ型のリーダーは今は時代に合いません。黙って上司の言うことを聞けと言っても従順に従う人は若い世代ではいないでしょう」
「企業の管理職研修では約9割の人が部下について悩んでいます。指示したことはやるが自主的には動かないと」

――そんな状況下で、サーバント・リーダーシップはどう有効に働くのでしょうか。
「英国の投資銀行で働いていたころ、私が仕えたリーダーたちは部下の育成に自分の時間の半分くらいは割いてくれていた。それは、部下をちゃんと育てないと競争に生き残れないからです」
「研修を受ける管理職は、忙しくて部下を育てる時間がないとこぼす。でも私はそれは逆だと言います。部下が育っていないから上司であるあなたは忙しいのだと。部下のために時間を使い、ちゃんと育てたらあなたのために仕事をもっとするようになると」
「部下の話を聞きながら『君はここが長所だからそれを伸ばそう』と助言する。ミスが多ければ『こんなミスをしてはダメだ』ではなく、どんなミスが多いのかを部下と一緒に分析し、改善策を話し合う。そこまですると、部下の心は動き出します」

――従来のリーダー像とはだいぶ異なるため、モデルやお手本があまりないのでは。
「管理職は3つ、毎日部下に実行するだけでまずはいい。1つ目はおはようとか、体調大丈夫? など日常的な声かけをする。2つ目は部下が知らないことを減らそうという姿勢で教える。3つ目は部下の仕事を認めてあげる」
「子育てと似ている。そう思いませんか。子供には信号の青や赤の意味から教えていく。わからないことがあれば『誰でもそこから出発点だからね』と寄り添う。そんな上司がいたら、部下はもっとやる気が出せるはずです」

サラリーマンに必要な「成仏」

10月19日の日経新聞夕刊「人間発見」、経済コラムニスト・大江英樹さんの「「定年楽園」を生きる」から。

・・・サラリーマンにとって定年は人生の一大事。前と後で慣れ親しんだ生活が一変します。本当は50代になり「社長になる目」がなくなった人は、早めに頭を切り替え次の人生へと踏み出すべきです。
そもそも出世レースは相当分の悪い勝負です。ゴールは社長の席1つだけ。実力に加え、運も左右します。会社に全てをささげ仕事にまい進、出世に努めるのも40代までならいい。でも50代は残りの人生に目を向けた方がいい。
社長以外は、副社長もヒラもサラリーマンの大多数はある意味「負け犬」です。そして定年を迎える。早めに切り替え「成仏」してこそ、残り30〜40年の人生が輝きます。

かく言う私も当時は全くダメでした。起業したいとは、ぼんやり思っていましたが、具体的なプランはない。流されるまま、定年後も65歳まで勤められる再雇用制度を利用し、それまでと同じ仕事を惰性で続けました。
これは相当のストレスです。昨日までその部門の長だったのが一兵卒となり、責任と権限が曖昧になる。もちろん週3日勤務だし、給与の激減は納得の上でした。自分なりに努力し、コピーやお茶入れ、トナー交換などもフットワーク軽くやってみましたが明らかに浮いていましたね・・・

社内転職の薦め

10月12日の日経新聞夕刊に「「社内転職」会社も応援」が載っていました。

・・・会社員生活と切っても切り離せない人事異動。その主導権を会社から個人に移す動きが広がっている。働きたい部署でやりたい仕事ができるよう個人に情報提供し、時に助言もして会社が「社内転職」を積極的にサポートする。終身雇用の限界が指摘されるなか、会社と個人のパワーバランス見直しが迫られ、キャリアの積み方は過渡期にある・・・

・・・リクルートワークス研究所の調査では欠員などを社内公募するジョブポスティングを37.9%が導入するなど個人選択型異動制度は普及しつつある。ただ千野翔平研究員は「仕組みはあっても有名無実化している企業が多い。例えば上司の許可や社歴、年齢など条件があって自由に手を挙げられない。本格的に広がるのはこれからだ」と指摘する。
調査では会社主導より自ら手を挙げて異動した人の方がエンゲージメント(働きがい)が高かった。「経営にも利点がある。今後は異動の主軸を会社主導型から個人選択型に切り替えることが必要だ」とみる・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして。日本のメンバーシップ型雇用慣行では、会社や役所に採用されると、その後の職務も異動も会社・役所任せでした。経済発展期にはこの仕組みが良く機能したのですが、成長が止まると、生産性の低い職場、職員が不満を持つ職場に暗転しました。連載「公共を創る」で、今議論しているところです。
紹介されている試みは、ジョブ型を組み合わせようとしています。「あてがい扶持」の異動は不満を生み、自ら手を挙げた場合はうまくいけば満足し、うまくいかなかった場合も納得できます。

転勤制度の見直し

9月29日の読売新聞に「転勤制度 悩む金融界 働き方多様化で抵抗感」が解説されていました。

・・・金融界で転勤制度を見直す動きが広がっている。三菱UFJ信託銀行は10月から、みずほ銀行は来春から、それぞれ転勤者への手当や一時金を大幅に積み増す。転勤に抵抗感を持つ人が増える中、人材の獲得や定着を図る狙いだが、抜本的な解決策はなく、全国で事業展開する企業の悩みの種となっている・・・

共働き世帯の増加に加え、子育てや介護への意識の高まりで転勤できない事情や、転勤への抵抗感から入社を見送ったり、離職したりするケースがあることも指摘されています。他方で、金融機関の特殊性もあります。
・・・銀行は、預金や融資、金融商品の販売を手がけ、法人、個人の顧客との関係が深まる。長い付き合いが高じて、行き過ぎた営業や個人的な不適切な取引に発展しないとも限らない。異動させることで他人の目を入れて不正を発見しやすい環境を作ってきた。金融庁もかつて営業担当者を中心に定期的な異動を求めていた。保険業界も同様だ・・・

・・・日本では、長らく終身雇用を前提とした採用が続いてきた。正規社員として給与や福利厚生を受けられる安定した地位を与える一方で、転勤を含む配属といった人事権は企業側が握る構図があった。働き方改革の流れやIT系企業などの新興企業の増加で、大企業の社員でも転職者が多くなり、人事を巡る労使関係は変わろうとしている・・・

欧米では、どうしているのでしょうね。希望者を募り、それに見合う処遇をしていると想像します。

職場の非公式交流の機会

9月25日の日経新聞「多様性 私の視点」、山口慎太郎東大教授の「飲み会・たばこ部屋に代わる交流を」から。

・・・日本に限らず多くの国で、飲み会やゴルフ、たばこ休憩などでの非公式コミュニケーションの重要性を指摘する人は多い。もっとも、その実態はエピソードの域を出ることはなかった。
しかし、最近の研究では、「たばこ部屋」の存在が非常に重要であることが客観的な形で示された。ある大手商業銀行を対象に行われたこの研究によると、上司と部下がともに喫煙者である場合、そうでない場合と比べて、上司と部下が共に過ごす休憩時間が63%増加し、部下の給与は2年半の間に18%余分に上昇するという。

問題は、このような非公式コミュニケーションの場が特定のグループに限定されると、組織の多様性や包摂性に影響を及ぼす可能性があることだ。特に、ジェンダーの観点から見ると、男性主導の非公式コミュニケーションは、女性が重要な情報を得る機会を失うことにつながる。実際、ある調査では、女性エグゼクティブの悩みとして「男性だけでネットワーキングが行われ、女性は重要な情報を入手できなかったこと」が最も多く挙げられた。また、マイノリティーや異文化の背景を持つ従業員も、文化や習慣の違いから非公式のコミュニケーションから疎外されるリスクがある。
伝統的な「飲み会」や「たばこ部屋」に代わる、新しい非公式コミュニケーションの模索は、組織の多様性と包摂性を高めるために重要だ。ランチタイムやコーヒーブレイクをともにする機会を設けるなど、様々な背景や習慣を持つ従業員が自然に交流できる場を提供することが望ましい・・・

指摘の通りです。私も、昼に聞けない話を飲み会で教えてもらい、部下の悩み事を聞くことも多かったです。タバコは吸わなかったのですが、部下職員がタバコ部屋で仕入れてくる情報には、職員管理において役に立つものも多かったです(女性職員の場合は、洗い場での意見交換もありました)。
この二つは、限られた人だけが参加できるという、大きな欠点を持っていました。徐々に減ってきています。では、それに変わる「話を聞く場」をどのようにしてつくるか。難しいところです。