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政と官2

6日の読売新聞「論談」で、飯尾潤政策研究大学院教授が、郵政法案の衆議院通過について、「自民内手続き見直しの時」を書いておられました。
「選挙公約の重視については、たとえ政権公約における表現が曖昧なものでったとしても、民主政治という点では大きな進歩であった」
「国会提出後の修正については、国会審議をふまえる意味でも、意味のあることである」「しかし法案提出時まで、自民党内の根本的な対立が解消できなかったのは、問題だった。小泉首相が郵政民営化を掲げて総裁になってから久しい。本来なら毎年開かれる党大会で、この問題が徹底的に論議され、大きな方向性について結論を得ておくべきであった。総選挙の政権公約も、それをふまえるべきであった」
「このように、自民党内手続きの変化は、過渡期の混乱の域を出ない」(7月7日)
(政治主導)
読売新聞政治部「自民党を壊した男-小泉政権1500日の真実」(2005年6月、新潮社)は、新聞に連載された「政治の現場」をまとめたものです。近年の政治の変化を取り上げていますが、私の問題関心である「政治主導」という点からは、「第4章新政策決定」の中の「経済財政諮問会議」「三位一体改革」、「エピローグ」の「知事会」が参考になります。(7月31日)
(官僚の政治任用)
29日の毎日新聞「闘論」で、官僚の政治任用について、松井孝治参議院議員と舛添要一参議院議員が主張を述べておられました。私は、お二人とは少し違った考えを持っています。いずれ詳しく述べたいと思います。その準備は、一橋大学の講義などで進めているのですが。(8月29日)
16日の読売新聞「論点」には、増田寛也岩手県知事が「小泉改革の行方、分権国家へ官僚主導打破」を書いておられました。
「郵政にとどまらず社会保障、財政再建、外交、国と地方のあり方を問う分権改革など、課題は目白押しだ。今回の国民の選択には、これらの改革の推進に向けた期待も込められていたはずである。」
「そこで注文がある。各省が好き勝手に振る舞ったり、もっぱら省益を追求したりしてバラバラに動く内閣運営は直ちにやめてほしいということである」「日本の内閣制度はこれまで、各省の事務は担当大臣が分担管理するという『分担管理の原則』の名の下に、首相の行政権の行使は実質的に制限され、各省主導型、省庁縦割り型になっていた。霞が関の官僚組織は、それぞれ業界団体や族議員と一体化した。これがすべての改革推進のネックとなってきた」
「『三位一体改革』では、昨年末の取りまとめの場面で、首相の指示などお構いなしに、各省と族議員が一緒に権益確保に走るドタバタ劇が繰り広げられた・・・」 続きは本文をお読み下さい。(9月16日)
日経新聞は22日から「官を開く 第1部それでも変わらない」の連載を始めました。第1回は「公益=官への固執」「民と分担、欧米に遅れ」でした。イギリスの会社にとって日本は「閉じた官僚王国」と映る。
「公立病院なども一括委託でなはなく、給食だけ、医療機器の整備ならと小出しにするだけで事業全体を考えていない」「『日本人は公と官を混同している』とオリックス会長の宮内義彦は語る」
財務省所管の独立行政法人が「生態系の回復を調査する事業は、民間にはノウハウがない」=よって官が行うと主張していることが紹介されています。市場化テストを、現在それで飯を食っている当事者に聞いても、反対の声が返ってくるのは当たり前ですわな。「私の仕事は不要です」という勇気ある人はいないでしょう。(9月22日)
22日の日経新聞「経済教室」では、佐々木毅学習院大学教授が「新政権に求める」「公約実現への体制整備急げ、官僚への丸投げを回避』を書いておられました。
「与党の体制整備と並行して、政権公約の実施主体である内閣もこれと共通の基盤の上に組織されなければならない。内閣を基点にして政権公約の具体的な内容を行政にも浸透させること、政権公約の解釈権を内閣がはっきりと掌握し、その実施を執拗に促すこと、これが必要な条件である」「どんなに議席数が多くても、公約実現に向けた体制が整備されなければ、その数の威力はほとんど意味を持たないと考えるべきであろう」

短期間異動

私の部屋にもよく取材に来てくれるA社の記者さんが、異動の挨拶に来ました。
全:???あんた、まだ来たばっかりやないの。
記:ええ、1年たたないのですが・・。
そうなんです。霞ヶ関や永田町を取材拠点にしている記者は、A社に限らず多くの人が1年で異動して行きます。広く経験を積ませようという、本社の方針なんでしょうが。
私たちの仕事もそうですが、1年のサイクルでようやく全体像がつかめ、2年目でいろいろ付加価値をつけることができるのではないでしょうか。私が何度か批判した「去年と同じまちがった記事を書いている」といったことは、去年の記事(前任者が書いた記事)をなぞるから起きるのでしょう。後任者への引き継ぎも、会社としての蓄積も十分に生かされていないように見えます。「自分の足で稼げ」という体育会系の方針が、生きているのでしょうか。
もっとも、取材される側からすると、経験不足の記者はいかに優秀であっても、「くみしやすい」「扱いやすい」と思っている人もいるでしょう(失礼)。

政治任用

私のもう一つの関心は、日本の行政と官僚制の機能不全です。長く官僚制の行き詰まりが指摘され、公務員制度改革が主張されています。今年は公務員総人件費削減が課題になっています。しかし、この3つの議論がかみ合っていないことはすでに指摘しました(問題は数より仕組み)
①部門間の「配転」がない=問題は数の削減でなく、社会の変化に定数見直しが追いついていないこと。現在のような一律削減ではむり。
②官僚のアウトカムの問題=公務員制度改革も必要だが、問題は官僚制の仕組み。部分部分に特化し、全体像を作れない。
③改革の仕組みがないことです。
私も大学院で講義したり、雑誌で主張したりしているのですが、まだ議論をまとめる=本にするに至ってません(時間がなくて・・。言い訳です)。
人事院の年次報告書が2年続けて、先進国の政治任用職の調査をしています。15年度版はアメリカ・イギリス・フランス・ドイツを紹介し、16年度版では大学教授による論文を載せています。官僚制を機能させる=改革を支える事務方にするためには、「政治家」「政治任用職」「官僚」をどう役割分担させるかが論点の一つです。各国とも、歴史・議会と政府の関係・政治家の役割・民間人との交流といった政治社会背景が異なり、これだといった正解があるわけではありません。簡単には、15年度版の概念図を見てください。
「政治任用職」という言葉は、誤解を招きそうです。政治家が任命される場合、民間人などが任命される場合、官僚が任命される場合を含め議論すべきだからです。日本の課題は、政治家が閣内に入って改革を進めようとしても部下がいないこと、現在の官僚制がセクショナリズムと既得権益にしがみついていることですから、それに対応する仕組みを作るべきなのです。私は、フランス型かドイツ型が、これからの日本に参考になると思っています。(2005年9月19日)
31日の読売新聞「決戦05衆院選」は、「霞が関の官僚」をテーマに、宮脇淳さんと加藤秀樹さんのインタビューを載せていました。加藤さんの主張に次のようなくだりがあります。「日本の公務員はおしなべて優秀な人が多いが、専門家として通用する人材となると、国際的に見ても少ない。本当に経済分析や法律の専門家と言える人は官庁にどれほどいるだろうか」
青山彰久記者は「給与や定員の削減規模の数字を合わせるだけでは、省益が優先して様々な改革が進まない問題が解決するはずもない。・・・総人件費の削減という主張だけで有権者をはぐらかさず、『官僚とは何か』を問い、公務員制度改革の具体的な中身を論争する必要がある」と述べています。 (2005年8月31日)
5日の日経新聞は、「マニフェストを中心にした経済官僚100人アンケート」結果を載せていました。
詳しくは紙面を見ていただくとして、特徴的なのは、世代間で違いがあることです。まあ当然といえば当然ですが。霞ヶ関の人事慣行について、63%の人が見直し不可避と考えています。良いとは思わないがやむを得ないと考えているのが、30%です。また、省庁幹部の政治任用については、進めるべき21%、進めるべきでないが44%でした。
そうか、僕も「経済官僚」なのか。でも、質問項目が、やや雑じゃないですかね。図表が記事本文の記述と対照になっていないことも、読みにくいですよ、O記者。(9月5日)
7日の朝日新聞は1面で「9.11総選挙、争点を追う」で、内田晃記者が「霞が関改革、人数先行。分権の道、各党示さず」を書いていました。「(国家公務員の)純減目標は、公務員の定員を管理する総務省などが難色を示し、議論は先送りになった。・・『量』の改革は、言うほど簡単ではない。さらに『小さな政府』を目指すなら、国の権限をどう減らすかという『質』の改革が避けられない。その試金石となるのが、国から地方へ権限や財源を移す地方分権改革だ・・」。
この指摘の通りです。もはや、シーリング方式での国家公務員削減は無理があります。既存定数を所与として、各省ほぼ一律の削減をする、それを原資に必要なところを増やすといった方式は、現在のような転換期には不十分なのです。
公務員削減は、一律でなく内田記者の言う「質的改革」をしなければ、有意義な結果は出ないでしょう。その一つがもはや国の重点施策でなくなった公共事業の所管組織の削減、もう一つは地方分権による権限と補助金削減に伴う公務員削減、規制緩和による権限削減に伴う公務員削減です。もっとも、このような改革は、現在の日本の官僚制が実行する(官僚同士が協議して決める)ことは無理なのでしょう。政治主導が必要とされるのです。
もちろん、公務員改革には、このような人数の削減だけでなく、私が主張しているような「仕組みの改革」(国家官僚群創設)が必要です。(9月7日)

かばん

業務用の鞄を買い替えました。今まで使っていたのは、平成4年に大臣秘書官になった際、新しくしたものでした。通勤・官邸・国会が主たる活躍の場所ですが、国内はもとよりカンボジア、ヨーロッパ、アメリカ、中国、韓国と出張の際も連れて行った働き者でした。軽くて柔らかく、持ちやすく使いやすい、お気に入りでした。いよいよくたびれてきて、やむなく引退に追い込まれました。まだ捨てるには忍びなく、「歴史の目撃者」「産業遺産」として保管してあります。
控えに持っていた皮の書類鞄を、レギュラーに昇格させたのですが、これは高級でしっかりしているので、国会を走る回るのにはやや堅すぎるのです。私の要求は、軽い、柔らかい、持ちやすい、A4の書類を入れた封筒が何枚か入る、小物(手帳、財布、名刺入れ、鍵、筆入れ)や商売道具(幹部職員録、国会議員便覧、国会日程表、法案一覧など)が整理できる、すぐに書類が出る、開けなくても少しの書類は(後ろのポケットに)つっこめる、です。お客さんの前で、すぐに書類が出てこないと困るのです。
お店にはたくさん鞄が並んでいるのですが、この条件に合うのがなかなかありません。アタッシュケースは、重い、堅い、書類がすぐに出てこないので不採用。軽い鞄でも、口がファスナーなのはすぐに書類が出てこないので不採用。ダレスバッグなどしっかりした鞄も、重くてだめ。ブランドものの多くは、格好は良いが、後ろにポケットがついていない、ついていてもファスナーがついていてじゃま。取っ手のデザインは良いが、持ちにくいのはだめ。前に覆い被さるふたの部分が長い(大きい)と格好は良いが、書類を出すのにじゃまで不採用。トートバッグにした先輩がいます。これは出し入れに便利です。ただし私のように財布なども入れるには、ふたができないので心配です。ようやく妥協できるのを見つけました。手にしっくりなじむには、少し時間がかかるでしょう。

国会 – 追記

またまた、意見が来ました。「一人忘れてますよ」。ごめん、追加しました。これで良いですか、原係長、稲葉 さん。一方、「名前を載せていただいて、ありがとうございます。先日お話ししたとおり、来週はお休みをいただきます。よろしくお願いします」という職員もいます。家族親族優先で良いですよ、織田君。
国会は来週からですが、すでに我が課は提出予定法案の準備、事前説明の準備に入っています。ところが、各法案にはそれぞれの事情があり、準備がそろいません。一方、手続きはなるべく早く、一緒の方が良いのはもちろんです。これの調整も、結構大変なんですわ。