投稿者アーカイブ:岡本全勝

都市の統治

2009年12月5日   岡本全勝
喜安朗著「パリ-都市統治の時代」(岩波新書、2009年)を読みました。パリという町が、王政の支配下に入り、さらに革命を経て、近代的国家の支配に引き継がれる過程を、描いています。
絶対王政が、分立していた権力を統一します。それは、都市においても同様です。本書では、別に、警察の強化という観点から、都市の統治を描きます。
さらに、そのような権力の視点だけでなく、地図の作成(都市の現状把握)、都市改造、上下水道整備、貧困層の調査など、行政サービスや機能を通じた都市の統治も描かれます。
また、いったん解体された中間集団が、再度復活して社会が安定することも、描かれています。もちろん中世的ギルドではなく、新しいアソシアシオンという形です。
都市の統治を、様々な観点から論じた、興味深い本です。新書ですが、読解するには少し力が必要な本です。

消防大学校での講義

2009年12月4日   岡本全勝

今日は、大学校の幹部科(消防本部の幹部になる職員コース)で、地方行政を2時間講義しました。これまで外部講師にお願いしていたのですが、私の「得意」とする分野なので、今回、私が担当しました。
久しぶりの講義なので、資料の準備に、手間がかかりました。単なる制度論でなく、現在の地方行政や市役所が置かれている問題を取り上げたので。慶応大学などで使っていた資料は、1年以上前のもので、数字が古くなっています。総務省の関係者、さらには富山県の職員に協力を得て、作りました。ありがとうございました。用意したレジュメと資料に、しゃべるポイントを、赤で書き込んでおき、そして2,3度事前に予行演習をして、準備はばっちり。おかげで、流れも良く、お話しできました。ところが、久しぶりなので、時間配分を誤りました。あれもお話ししたい、これも教えたいと。いろいろと具体事例を出してしゃべっているうちに、時間が足りなくなりました。もっとも、これはいつものことですね。反省。

久しぶりの講演

2009年12月2日   岡本全勝

今日は、午前中に、大学校で講話。夕方からは、日本大学法学部で講演をした後、先生方の研究会に出席しました。「暮らしのリスクと行政」という題で、現在の仕事である消防と、これまで私が経験したあるいは考えてきた「社会のリスクとそれに対して行政はどう対応してきたか」を、お話ししました。この10年間、あるいは阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件(1995年)を含めると15年間で、リスクと考えられる範囲が広がりました。それに対し、行政はかなり対応してきました。具体事例をふんだんに盛り込んで話したので、学生さんの「食いつき」も良かったです。鋭い質問をしてくれた3人の学生さんには、お礼を言います。

もう12月

2009年12月1日   岡本全勝

あっという間に、12月になりました。日にちが経つのは、早いですね。
12月といえば、年賀状。すでに印刷は終えたのですが。夜は毎晩予定があり、週末もいろいろと予定が入っていて・・。

組織の失敗・続き

2009年11月30日   岡本全勝
昨日の続きです。
失敗学の中でも、私が関心のあるのは、組織の失敗です。企業や官庁です。広く捉えれば、国家、政治、軍隊などもあります。
組織の失敗には、いくつかの場面があります。一つは、アウトプットの失敗です。企業であれば、商品やサービスが売れなかったこと。それも、事故を起こしたとか不具合があったということではなく、社会で認められなかったことです。欠陥品でないのに、なぜ売れなかったかです。
行政の場合は、商品に当たるのが政策です。政策の場合は、市場競争がなく、売れる売れないという「ものさし」がありません。その政策が効果を上げたかどうかで、判断するのでしょう。あまり使われずに廃止された施設は、これに当たります。もっとも、ソフトな政策は、効果を上げたかどうかの評価は難しいです。
もう一つは、組織全体の失敗です。会社が倒産する場合などです。もちろん、商品が売れなくて、会社が倒産する場合もありますが、個々の商品の失敗とは区別しましょう。行政の場合は、倒産という「ものさし」がありません。別途、評価をしなければなりません。これが難しいのです。
前者は個別問題であり、後者は全体問題です。いずれにしても、組織の目標を達成できなかった場合です。
さて、「戦略の失敗」という表現がされますが、次のような要素に、分けることができると思います。
一つは、「課題の認識」です。
企業の場合は、どのような商品やサービスを売るのか。今の商品ではいずれ売れなくなるので、どのような新しい商品を開発するのかです。企業は、日々、競争にさらされているので、この検討は必死です。一方、行政の場合は、この点がおろそかになります。「坂の上の雲」(明治国家建設)の場合は、世界の大勢に日本が遅れている、このままでは植民地になるという危機感が、課題の認識になりました。
私がことさら、「課題の認識」を一番の要素に取り上げるのは、成功した組織がその後失敗するのは、課題の認識をおろそかにするからです。ヒット商品にあぐらをかいて、その後負けた会社。日露戦争に勝って、その後の失敗に落ち込んだ日本海軍と日本国。経済成長に成功して、その後停滞した現在の日本と行政。そして、社会が変化していることを認識し、これからも変化することを予測する必要があるのです。
二つ目は、「対策」です。
「戦略の失敗」と呼ばれることは、ここに当たります。課題に対して、対策を立てる。戦略と戦術です。もちろん、この適否が、成功するか失敗するか、成否を分けます。
三つ目は、「責任者」です。
課題はわかっている。対策もわかっている。なのに実行できない。そのような事例は、ままあります。
戦略を実行するには、困難が伴います。資金が潤沢にあり、職員も優秀、時間もたっぷりある、技術も万全。なんてことは、まずありません。限られた資金と職員を集中させることが、必要になります。それ以外の部門を切り捨てる、後回しにする必要があるのです。優先順位をつける。そして劣位の部門を納得させる。これが難しいのです。責任者の「意思」「決断」「説得」。これらが、重要になります。民主主義の場合は、有権者の理解が必要です。故に、民主主義の場合は、大きな改革が困難となります。
このほかに、組織の失敗としては、事故を起こした場合、欠陥商品を売った場合、職員が不祥事を起こした場合、職場がうまく運営できていない場合、さらには下位組織が目標を達成できない場合、などがあります。これらも、組織にとっては重大なのですが、これらは「戦略の失敗」ではなく、「内部管理の問題」です。もちろん、両者はつながっていることが多く、分別できないこともあります。