岡本全勝 のすべての投稿

新しい仕事30

日経新聞が「子育て支援大賞」を始めました。第1回受賞者が、14日の紙面に載っています(HPにはまだ載ってません。新聞社らしくないですね)。「仕事と育児の両立支援は、優れた人材を確保したい企業にとって、重要課題となっている。人口減と地域活性化に悩む自治体も事情は同じ。企業、自治体、地域社会が三位一体となって子育て支援を競うーそんな時代だ」。
選考基準は、両立支援の制度、サービスの先進性、ユニークさだそうです。受賞したのは、最短3時間や半日・隔日の勤務体系の企業、女性登用に積極的な企業、妊娠期の休職制度や在宅勤務を導入している企業、父親の子育て支援策を重点実施している県、多子世帯に特典を与える事業を始めた県、病児保育サービスを株式会社形態で提供したNPOなどです。
再チャレンジ支援も、近く政府の行動計画をプランとしてまとめますが、法律や予算措置ではできることが限られています。このように、賞を贈り新聞に載ることで、社会へのメッセージとなります。そして新しい試みが、多くの企業や地域に広がることが期待できます。これまでは「変なこと」が、そのうちに「常識」になるのです。このような社会へのメッセージが、子育て以外でも、いろんな分野で広がればいいですね。
再チャレンジ支援でも、社会への働きかけをいろいろ考えていますが、このような民間の動きはありがたいです。これまで読み飛ばしていたような記事が、再チャレンジ担当になってから、急に気になり出しました。

新しい仕事29

13日の日経新聞経済教室・労働契約を考えるは、笹島芳雄教授でした。「ワーク・ライフ・バランスの実現が困難な最大の要因は、現在の日本的働き方にあり、典型的には長時間労働・恒常的残業という姿で表れている。厚生労働省で進められている労働時間法制の見直しにより、日本社会にワーク・アンド・バランスが根付く政策の実現を期待したい」。
そして、残業時間に対する賃金割増率の引き上げに関して、日本では算定の基礎賃金に賞与分を含んでいないこと、賞与の割合の大きい日本にあっては、割増率だけで諸外国と比較しては間違うことを指摘しておられます。
また、自律的労働時間制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)についても、アメリカでは83%の企業で職務記述書が用意されていて、個々の労働者の業務内容ははっきりしていること。それに対し、日本では職務記述書はなく、職務内容のあいまいさは弾力的な業務運営を可能とするが、全体として非効率・長時間労働の温床になっていること。チームワークでの業務が多く、自律的な働き方を困難にしていること。アメリカでは、担当職務の選択権をホワイトカラーが保持していて、転職もしやすいこと。それによって、不満な職員は転職によって、長時間労働をしなくて良くなることなども、指摘しておられます。
日本の雇用慣行や仕事の仕方が、長時間労働・家庭を顧みない父親・企業戦士を生んでいるのですよね。これを改革するのは、容易ではありません。もっとも、前にも書きましたが、他の国でできているのですから、日本にできないはずがありません。
上司であるあなたに、明日からでもできることは、なるべく部下に残業をさせないこと。また自分の仕事を片付けたらさっさと帰ることで、見本を見せることでしょう。残業時間を自慢する上司は、それだけで失格です。それは、仕事が忙しいのではなく、無能の証明です。一時的に忙しいのは仕方がないとしても、恒常的なら、仕事のやり方の変更を考えるべきです。しかも、それで国民に役立つことをしていればいいですが、国民生活向上にあまり役立たないことをしているとすると、税金泥棒という罪も重なります。

審議官の一日

今日は、早朝から、自民党本部で再チャレンジ議員連盟に出席し、政府の取り組みを国会議員に説明。このような会は朝ご飯が出るのですが、私は自宅で食べてから出かけます。食べずに家を出ると力が入らないのです。また、会場で先生方と挨拶し、会議が始まるとマイクを持って説明するので、食べる時間がないのです。落ち着きませんわ。
その後は、党税調が大詰めを迎えているので、その対応。再チャレンジ関係で、税制改正要望を出しているのです。いわゆる○政事項となって、審議が続いています。議員会館を走り回っていると、「私、岡本さんのホームページを見ています」という秘書さんに遭遇。その後、経済財政諮問会議議員に呼んでいただき、ご説明。
夜は、新進気鋭の行政学者2名と懇談会。正確には、インタビューを受けました。先生の引き出し方が上手なので、ついつい、実情をしゃべってしまいます。でも、研究者は海外留学はしても、国内留学はしないので、実情を知ってもらうのは重要なのです。世の中きれい事だけでは、動いていません。本当のことを知らずに変なことを書かれたら、もっと困ります。「官庁は稟議制で意思決定される」なんて、大間違い。重要なことは幹部が決めます。稟議として残るのは、定例業務か決まった後の形式揃えです。明日も、忙しい一日が待っています。

教育ーどのような人材を育成するのか

10日の東京新聞「時代を読む」は、佐々木毅先生が「高等教育こそ取り上げを」として、教育改革について述べておられました。
「確かに、幼い子どもの教育は多くの国民の関心事であるが、これはいわば入り口の問題である。しかし、入り口ばかり問題にして出口がはっきりしないということは、議論の本位が定まらず、バランスを欠くことにならないだろうか。実際、万事につけ閉塞感というものの一因は、まさにこの出口の不透明さに起因するのではなかろうか」
「首相官邸が教育問題に乗り出す以上は、出口論こそは最大の関心事にふさわしいのではないか。なぜならば、それは将来の社会的ニーズの見定めとそれに必要な人材の供給、さらには国際的競争力の維持に直接に関係するからである・・グローバル化の時代にあっては、人材政策なくしてほとんど何も将来展望が開けないことは、今や各国共通の認識である。この点、日本政府は極めてのんきと言われても仕方がない」
「大学時代の話になると、『自分はいかに勉強しなかったか』を誇らしげに語ることが-テレくささに促されてのことであろうが-当たり前のような風土のところで、次の世代がとまどうのも無理はない。出口をはっきりさせずに、がんばれというのは、もはや通用しない昔の贅沢である」

2006年12月9日 福岡大学法科大学院

(官僚と法律)
今日9日は、福岡大学法科大学院で、講演をしました。テーマは「立法と行政-公務員の役割と行動」です。官僚と法律との関わりを、経験を交えてお話ししました。通常、大学や大学院で学ぶのは、できあがった法律の解釈学です。しかし、官僚は、その解釈・執行だけでなく、補充をし、また改正や新規立法をします。六法全書に載ってからと、載るまでといったら、わかりやすいでしょうか。しかし、物の本や講義では、立法学はあまり教えません。せいぜい、立法過程論、技術論ですね。
霞ヶ関の官僚と国会議員は、政策実現の大きな手段として、立法に携わっています。それは、どのようにして課題を拾い、解決策を考えるかという問題です。私の持論ですが、これまで日本の官僚は、欧米先進国に課題と解決方法を学び、輸入していました。発展途上国時代は、それで良かったのです。しかし、国内の問題を自ら拾い上げ、解決策を考えるということには、なれていません。その証拠の一つとして、日本が欧米に輸出した法律って、私が知る限り迷惑メール防止法だけです。輸入はしても輸出はしない、内弁慶です。アジア諸国には、輸出していますが。
また、このHPに何度か書いているように、これまで保護育成=業界相手の仕事だったのが、国民相手になりました。手法も、事前調整から、ルールを作って自由にし事後チェック型に転換しつつあります。ここに、官僚と法律の関係も、大きく変わりつつあります。このあたりを、お話ししました。もっとも院生さんは若くて、私がこの10年の実例を出しても、知らない人が多く、しゃべるのに少し苦労しました。