岡本全勝 のすべての投稿

被災者支援のNPO

被災者の生活支援に活躍しているNPOも多いです。今日は、田村太郎さんが主宰している「ダイバーシティ研究所」がまとめた、2つの報告書を紹介します。
1つは、「3地域仮住宅アセスメント2013年調査報告書~自治会参加活動とQOL」です。
この調査は、仮設住宅で暮らす世帯に、自治会活動への参加状況と他の住民との会話の有無、生活の不安などを聞いたものです。3県にある、NPOの中間団体「連携復興センター」との共同作業です。
仮設住宅には、次のような課題があります。
・建設時は、なるべく早く建設しなければならない。今回の大震災では、公営住宅や民間住宅の借り上げの他、5万戸のプレハブ住宅を建設しました。23年秋にはほぼ完成したのですが、これだけの戸数を早期に建設することは、大変な作業でした。用地の確保、資材の確保などです。
・通常の災害の場合、仮設住宅は2年を想定しています。しかし今回は(何度も書いているように)、既に4年目に入り、さらに2年入居してもらう世帯も多いです。すると、建物が傷んできます。根太が腐ったり、カビが生えたり。この補修も必要です。
・従来の町内でのつきあいから切り離され、孤立しがちです。ふだんのつきあいが、なくなるのです。
そして、将来の見通しが立たないと、さらに心配が増えます。今回の調査は、ここに焦点を当てています。
・順次、公営住宅や自ら家を建てて、移っていただきます。しかし、「元気な方」から引っ越していくと、仮設住宅はさらに寂しくなります。
・引っ越していった先でも、コミュニティを作る必要があります。
このように、建物(ハード)の問題だけでなく、それ以上に住民の人間関係(ソフト)が課題なのです。報告書の表題に「アセスメント」とありますが、自然環境調査で使われる用語の「アセスメント」ではありません。「地域で暮らす際の人とのつながり、満足度アセスメント」です。これを把握するのはなかなか難しいのですが、この調査では自治会活動をその指標・とっかかりとしています。詳しくは本文を読んでいただくとして、お忙しい方は、p2の「はじめに」を読んでください。
・・住宅は「仮設」でも、そこで暮らす人々の人生には「仮設」はない。社会とのつながりや生きる喜びを持ちながら次の暮らしの場に移るために必要な支援に向け・・(報告書p2)
この項続く。

発掘された日本列島展

今日は、早めに仕事場を出て(仕事をしている部下を残して)、江戸東京博物館へ。例年の「発掘された日本列島展」に行きました。土日には、文化庁の専門家による解説があるのです。
やはり、解説があると、大違いですね。よくわかります。逆に、展示物に付けてある説明文を、もう少し詳しくわかりやすくできませんかね。発掘された状態の写真とか、遺跡の全体写真とか、工夫はしてあるのですが。中学生にもわかるくらいの解説(パネル)が、欲しいですね。
「発掘された展」も、今年で20周年になるのだそうです。それで、新発見だけでなく、これまでに展示されたものも並べてあります。
当初始まったときに、これは良い企画だと思いました。これからも、続けてください。それにしても、日本には、まだまだ「お宝」が埋まっているのですね。ご関心ある方に、お薦めします。

福島、国と地方の協議会

今日8月9日、福島市で、「原子力災害からの福島復興再生協議会」を開きました。いわゆる「国と地方の協議会」で、今回で9回目になります。国からは、「復興・再生に向けた取り組み状況」「第1原発の廃炉・汚染水対策」「除染・中間貯蔵施設」について報告をし、福島県からは、現下の問題と平成27年度予算への要望が説明されました。また福島側の出席者から、それぞれ意見が出ました。
工事が進み、めどが立った津波被災地区と違い、原発事故被災地は、まだまだ課題が大きいです。今日も、たくさんの課題が指摘されました。資料は、おって復興庁のホームページに載せます。
→資料が復興庁のホームページに載りました(8月11日)。
ただ、誤解を恐れずに言うと、福島の復興も、だんだんと道筋が見えてきたと考えています。
初めてこの会合を開いたのは、3年前の8月でした。事故が起きて5か月後です。その立ち上げに参画しましたが、会合を開くこと自体が、難しかったのです。
「加害者」の一員である国と、「被害者」である県や地元関係者とが、会議を持つことが難しかったのです。場所も福島にして国が出て行くこととし、ようやく開催できました(私は、この場合は東京ではなく、当然地元福島で開催すべきだと考えていました。2011年8月27日の記事)。
会議の雰囲気は、出席していた私にとって、凍り付いたようなものでした。信頼関係が壊れていたのです。地元側から、お叱りばかりを受けました。指摘される問題について、国は的確に対応できていなかったのです。当時は、さまざまな課題に対して対策が追いつかず、後手後手に回っていました。そして、道筋も見えていませんでした。当時は、協議会の議題を何にするか、課題の整理から議論していたのです。当日は、予定していた時間を大幅に超えて、会議を延長しました。
その後、放射線量に基づき、地域ごとに避難指示区分を定めました。賠償も次々と基準が示され、それに基づき支払いを行っています。除染計画もでき、作業も進めています。原子炉の状態も安定し、汚染水対策も進みつつあります。
全国に避難した被災者も、所在を把握しています。避難指示を解除できた地区もあり、解除に向けて作業を進めている地区もあります。
「早期に帰還することができる地区」「待っていただく地区」「新しい生活を選ぶ方」に分けて、対策が進んでいます。大きな道筋が見えてきたのです。そして、きめ細かに現地の課題を吸い上げることで、課題も見えて、対策が後手に回らなくなりました。何が進んで、何が進んでいないか。そして何に時間がかかるかが、見えてきたのです。
もちろん、まだまだ復興には至っていません。廃炉や除染には、長い時間と大変な作業が必要です。しかし、道筋が見えてきたことで、議論がかみ合い、課題も明確になりました。それを解決していけば良いのです。今日は地元側出席者から、「国も良くやっている」と、評価の声もいただきました。私は、会議中と帰りの新幹線の中で、3年前、2年前、去年の会合を思い出しながら、違いを考え、感慨にふけっていました。
被災者の皆さんには、大きな被害を与え、またご苦労をおかけしています。時間がかかりますが、政府の力を総動員して、解決していきます。

仕事の段取り

私たち官僚にとって、「仕事の段取り」は非常に重要です。目標を与えられた場合、あるいは目標を立てた場合に、いつ何をして、目標を達成するかです。内容をサブ、段取りをロジと呼ぶことがあります(もっとも、ロジは会議などの段取りの準備を指すことが多いです)。
その際に、内容を固めて上司の了解を得ることと同様に、そのほか誰に了解を取るか、関係者対策も重要です。マスコミには、どのように公表するか。マスコミに聞かれたらどう答えるかといった想定問答作り。関係者には、事前事後にどのように報告、根回しするかなどです。
自然科学の大発見と違い、私たちの仕事の多くは、関係者に納得をいただくことが「成果」です。どんなに良い内容でも、上司、関係者、マスコミ、国民に、理解と賛同を得られないと落第です。
段取り(の準備)には、いくつかのものがあります。まずは骨太の粗々したもの、いつ何をする必要があるかを確認することです。これは紙1枚。「工程表」と呼ばれます。次に、それをより詳しくしたもので、それぞれの段階で、誰が何をするか。対外的には、何をもって、誰が誰に根回しに行くか。役割分担表です。責任者たちでこの段取りを共有するために、漏れ落ちがないか確認するために、そして作業員が間違わないように、紙にする必要があります。
作戦本部長または参謀長は、この工程表と役割分担表を作ること、あるいは部下に作らせた原案を加筆修正することが仕事です。毎年の定例行事(予算、法案作成など)なら、前例があるのでそれを参考にします。しかし、初めての課題なら、一から作る必要があります。
私は最近の自分の役割を、「回転寿司ベルトコンベア」と呼んでいます(笑い)。
皿の上には、さまざまな寿司(仕事)が乗るのですが、それは部下が考えてくれます。私はその皿(できあがった説明資料)を、適切な時期に必要な人に届けること、届け先と時期を間違わないように指示を出すことが任務です。
これは、偏差値よりも、経験の多さと人間関係の熟知が、ものを言います。「俺は聞いていない」と言われないように、また「あの人に事前に報告をすると、新聞記者に漏れるわなあ」とか。
そして、発表や会議がうまく行ったときに、次に忘れてはならないのが、報告とお礼です。しばしば、これを忘れます。うまくいったので、うれしくなって打ち上げに行ってしまいます。そこにたどり着くまでに、陰で汗をかいてくださった人たち、また「俺はこれについては関係者だ」と思っている人に、まずは電話で第一報を入れ、お礼を言う必要があります。
いくつも失敗をした先輩の、反省談だと思って読んでください。しかし、このようなことは、失敗してみないとわからないのでしょうねえ。

民間の復興支援、小口の寄付を集めて力にする

大阪コミュニティ財団が、被災地支援をしています。この財団は、企業や一般の方から寄付を集め、目的ごとに基金を作って、支援する仕組みです。「マンション型基金」「基金の集合体」と表現しています。
一人ひとりの寄付額は小さくても、集まると大きくなります。また、個人ではどこに支援してよいかわからない場合に、この財団がその事務をやってくれます。
その基金の一つに、大震災の復興活動支援基金があります。8月1日に開かれた報告会では、「内職プロジェクト」「地域コミュニティ形成を目的とした生活支援事業」「コミュニティの新再生」「手仕事現地事務局設立」「空き店舗を活用した避難住民のビジネス・サロンを通した起業化・雇用創出支援」が報告されました。報告概要には、それ以外の援助先の事例も載っています。
企業や企業が主体となった基金による、被災地での復興活動支援もたくさんあります。その他に、このような多くの人から集めたお金で基金を作り、それを元手に支援してくださる例もあるのですね。ありがたいことです。
行政では手が回らない、また公金では支援しにくい活動を支援してもらえるので、その面でもありがたいです。
国も、阪神・淡路大震災の時に、細々とした活動に支援を行えるように、自治体に基金(金利運用型)を作りました。評価が高かったので、今回も、取り崩し型基金を作れるように、各自治体に交付税を配分しました。これも喜んでもらっているのですが、コミュニティでの事業支援は、お金だけではできません。ノウハウや人材による応援が必要なのです。