政権交代、小さなごまかしが致命傷に

4月6日の朝日新聞オピニオン欄「政治家が果たすべき責任」、豊永郁子・早稲田大学教授の「小さなごまかし、致命傷に」から。

・・・今、国会では、首相からも野党からも「説明責任」という言葉が乱発されています。英語のアカウンタビリティーの訳ですが、「説明する責任」という意味で使うのは誤りです。
アカウンタビリティーは情報を開示し、説明する義務があるだけでなく、責任を追及され、解任などの罰を与えられる立場にあることを意味します(「答責性」とも訳されます)。説明するだけでは許されず、結果責任も問われ、制裁もある厳しいものです・・・

・・・ところで、今回の「裏金」問題を見ていて想起するのは、英国政治でいうスリーズ(sleaze)です。不正や不道徳な行為一般を指しますが、元来はいかがわしさ、低俗さ、だらしなさという意味の言葉です。
英国では90年代以降、保守党と労働党それぞれの盤石に見えた長期政権の末期に、与党政治家のスリーズが次々に露見しました。大きな事件もありましたが、小さなスリーズが多数発覚した。セックススキャンダル、金をもらって議会質問した、経費で自宅を改装した、愛人の雇った子守にビザ発給の便宜を図るとか。
一つ一つは小さなスリーズも、低俗でだらしないという印象を与え、国民に嫌悪やあざけりの感情を抱かせてしまいます。それが重なると、党全体のイメージも悪化し、政権を追い詰めていく。長期政権は、政策上の大きな失敗よりも、スリーズの積み重ねによって倒れることがあるのです・・・
・・・政府のアカウンタビリティーを担保するのは政権交代です。野党がバラバラのまま、ただ「説明」を求めてもダメなのです・・・