政治主導の実相

10月12日の朝日新聞に「基金乱立、だぶつく16兆円 5千億円計上→支出は5.6億円」が載っていました。
・・・国が根拠の乏しいなかで積み立てた基金がだぶつき、使い残しが16兆円にまで膨らんだ。年4兆円のペースで増え続けている。背景には、コロナ対応などを理由に、時の政権が、毎年「規模ありき」の経済対策を打ち、使い切れないほど規模が大きくなったことがある。似たような事業にあてる基金も乱立している・・・

これも困ったことですが、今回取り上げるのは、記事で紹介されている政治主導の実相です。
まずは、経済安全保障重要技術育成基金。
・・・この基金は2021年度と22年度の補正予算で計5千億円が計上された。ところが、22年度までに支出されたのはわずか5億6600万円・・・
・・・複数の関係者によると、21年度補正の協議では当初、基金は1千億円とする方向で調整が進んでいた。自民党の重鎮・甘利明前幹事長の右腕として経済安保を推進していた小林鷹之氏が初代の経済安保担当相に就くと状況は一変する。甘利氏らの意向を受けてまとまった党の提言通りの5千億円に、一気に跳ね上がったのだ。
21年度補正には、まず半分の2500億円が盛り込まれた。

補正予算は、想定外の緊急的な経費に限って認められているものだが、21年度どころか22年度になっても、研究の契約を1件も結べなかった。
それにもかかわらず、内閣府は22年度補正で2500億円の追加を求めた。「『総額を5千億円にする約束を早く果たせ』と、自民党から圧力があったため」(幹部)という。
予算を取り仕切る財務省が難色を示すなか、この時は、自民党政務調査会の幹部の一声で満額回答が固まった。「何を勝手に財務省が査定しているんだ。各省庁が要求した予算を全部元通りに戻せ」・・・

もう一つは、グリーンイノベーション基金。
・・・政府関係者によると、水面下の財務省と経産省の協議では、まずは1兆円を計上する。実績を踏まえてその後毎年予算を追加していき、最終的に総額2兆円に広げることで大筋合意していたという。
最初から「2兆円」を主張する菅氏の翻意を促そうと、財務省の矢野康治主計局長(当時)は1枚の説明資料を渡した。
趣旨はこうだった。要求している経産省ですら、2兆円はすぐに執行できないと言っている。そのまま補正計上すれば、無駄に基金をため込むことになる。
菅氏は手元の資料を放り投げ、声を荒らげてこう言ったという。「そんな話は聞かないぞ」・・・