複数国籍を認めない国

7月12日の朝日新聞オピニオン欄に「複数国籍認めない国」が載っていました。

宮井健志さん(政治学者)の発言から。
・・・複数国籍を何らかの形で容認する国は北南米、欧州、アフリカに多く、現在、世界では8割近くに上ります。欧州ではドイツやオランダなど複数国籍に制限的な国もありますが、EU加盟国出身者や配偶者などには認めています。
自国民が出生後に外国籍を取得した場合に国籍の喪失を定めた国は、1960年に62%を占めましたが、2020年には22%に減少しました。複数国籍の容認に向けた国際的な機運があったわけではなく、各国がそれぞれ判断した結果です。複数国籍を厳格に認めない日本はいまや少数派と言えます。

出生地主義や国際結婚による生まれつきの複数国籍は権利として広がっており、それについては日本も事実上、黙認してきました。一方で日本は、出生後に外国籍を取得した自国民に対しては例外なく日本国籍の喪失を定め、外国人が日本国籍を取得する場合にも原則的に国籍離脱を求めている。同様の規定は中国やインドにもみられますが、自由民主国家では例外的です。

複数国籍が個人の利益になるのは自明ですが、国にとってもメリットになり得ます。例えばフィリピンのように海外への出稼ぎが多い場合、自国籍を放棄されると送金が減るかもしれない。知識人層や富裕層が海外に流出した場合も、母国との結びつきと帰属意識を持ち続けてくれた方が国としては都合がいい。
さらに、母国の国籍を捨てないと外国人は国籍が取得できないとなれば、政治的権利を持たないマイノリティーが増え、円滑な社会的統合が阻害されかねません。
従来、複数の国家への帰属を認めるのはよくないことだとされてきました。例えば両国から兵役を課されたら、どうするのか。もっとも、徴兵の重複はルールで容易に回避できますし、そもそも徴兵制を採る国自体が減っています。社会保障費の重複支給なども個別の取り決めで対応できます。現状、複数国籍の容認によって生じる問題はほとんど残されていません・・・