「働かないおじさん」

9月11日の朝日新聞オピニオン欄「50代社員、諦めないで」、人事コンサルタント、フォー・ノーツ代表の西尾太さん「後進育て、誰かの役に立とう」から。

――若い世代が中高年をどう見ているのかが気になります。
「私たちの調査では、若手社員の50代への評価は概して高く、『新たなスキルや知識を身につけ、未経験の仕事に取り組むことができる』と考える人が約45%に上りました。私たちの世代を温かい目で見てくれているんだな、と意外でした。半面、50代の当事者に意欲を聞くと、3人に1人が『できれば取り組みたくない』と答えている。消極性や自己評価の低さが目立ちました」

――自分の能力がどれだけあるのか、悩んでいる人も多いのでは。
「真面目に30年以上仕事をしていたら、自分では意識していなくても経験やスキルは蓄積している。それを棚卸ししてみましょう。これまで積み重ねてきたことを体系化し、後進を育てることを考える。人を育てる50代を企業は手放しません」

――中高年の頃は教育費や住宅ローンなどの負担が多い。公的支援が少ない日本では、その分、年功賃金で企業がまかなってきました。
「給与が抑えられていた20代、30代に馬車馬のように働いたのだから、その分を払って欲しいと考えるのは分かります。しかし、バブル崩壊後、中高年を温かく処遇できる企業は減りました。若い社員は現在の働きに見合う給与を払わないと辞めていく時代です。今の価値に対する賃金を時価払いしなくては企業が立ちゆかなくなった。それが、人事施策を手伝っている私の実感です」

――企業が適切な仕事を割り当てられていない面もありませんか。
「その人のパフォーマンスを最大限に発揮できる部署が社内にあれば幸運でしょう。一方で、最近では社外での人材の流動性も高くなっており、大きな組織できちんと仕事をしてきた管理職経験者が欲しい、という中堅企業も増えています」

――中高年以降の働き方、生き方が変化しているのでしょうか。
「働く理由を中高年に問うと、多くの人は給料のためと答えます。管理職研修でも、誰かの役に立ちたいという外向きの答えが少ない。収入を得るのは大切ですが、生活のために耐えるというモードでは自分がもちません。どんな価値を社会に提供できるか、考えましょう」