帰還困難区域の解除

7月20日の朝日新聞社説は、「福島の除染 地元の声を最優先に」でした。
前段は、飯舘村から要望の出ていた、放射線量が下がった帰還困難区域についての避難指示解除です。
この地域は既に放射線量が下がっていて、人が活動することに問題はありません。ほとんどが山林で、住民の居住などが見込めないので公園として管理する。そして解除して欲しいとの要望です。
政府は、放射線量の低下、除染、インフラ復旧を、避難指示解除の条件としています。もっとも、これまでに居住制限地域をすべて避難指示解除しましたが、山林については放射線量の低下を確認して、除染はしていません。
飯舘村の要望は、それを考えると、まっとうなものです。

この社説の後段では、そのほかの帰還困難区域にについての除染と、避難指示解除について「方策を示せ」と主張しています。これが、なかなか難しいのです。帰還困難区域は、放射線量が高く、当分の間、帰還ができないと考えられたので、「帰還困難区域」とされました。
一つは、今でも放射線量が高いのです。作業員も入ることが難しいです。
もう一つは、どれだけの費用をかけて除染をするかです。現在は、地元との調整で、放射線量が低く、町の中心部、人が帰ってくると予想される地域を復興拠点として除染しています。この区域の復興が進み、さらにほかの地域に拠点を広げることは想定されています。しかし、人が住む見込みのない山林を、どこまで国費を使って除染するのか。この作業は、国費で行っています。納税者に説明をしなければなりません。
なお、社説などでは書かれていませんが、帰還困難区域の住民には、土地や建物について東電から全額賠償しました。そして、故郷損失賠償(慰謝料)を払い、さらに新しい土地で家を建てる際に不足する金額も追加で賠償しました。これらは、新しい場所で生活してもらうことを前提としています。もちろん、ふるさとに戻ってもらうことが望ましいのですが、国費(国民の税金)をどこまで追加投入するかです。それを、国会や国民に説明する必要があります。
もう一つ、山林の除染は、人が住む地域に隣接する里山は行っていますが、人が住まない山林はこれまでもやっていません。山林の木を切り倒し、土をはぎ取ることは、自然破壊になるのです。

私も、1日も早く全地域で避難指示が解除されることを望んでいます。そして、関係者と対応を進めています。しかし、このような事情があるのです。
このような事情に全く触れずに議論するのは、論点が不足していると思います。