企業の採用面接に見る「日本型雇用」

7月15日の日経新聞教育欄、吉田文・早稲田大学教授の「日系企業の採用「空気読む人材」優先続く」が、興味深かったです。日本の企業(国内型)が、学生に学校で得た知識や学問でなく、空気を読むことを期待していることが分かります。

・・・近年の大学教育改革の喫緊の課題は「学修成果の可視化」、すなわち、学生がどのような能力を獲得したのかをエビデンスで示すことである。ここには、新たなタイプの人材を求める産業界からの要請があるという。確かに、グローバル人材、イノベーション人材という言葉はすっかり人口に膾炙した。
しかし、企業はそうした学生を求めているのか。新卒総合職の採用面接経験がある企業人を対象に行った調査(2014年10月実施、調査会社のモニターから過去5年間の経験者を抽出し、ウェブで調査。有効回答2470人)から検討する。
日本企業の特性を浮かび上がらせるため、回答者の勤務先を日本企業と外資系企業に分け、日本企業も事業をグローバル展開している企業と、そうでない企業に区分し、日系非グローバル企業、日系グローバル企業、外資系企業の3つのタイプ別に比較する・・・

・・・だが、それだけではない。そもそも企業が求める人材が異なっているとも考えられるからだ。その一例を表に示す。日本企業の採用担当者は事業のグローバル展開の有無にかかわらず、事務系総合職には「空気を読んで、円満な人間関係を築くことのできる人材」の方が、「論理的に相手を説得できる人材」よりも望ましいと考えている。
外資系は70%が「論理的に相手を説得できる人材」が望ましいとするのと対照的である。技術系も事務系ほどではないものの同様の傾向がある。面接で学習だけでなく、サークル、アルバイト、趣味などを聞くことで、空気を読める者を選ぼうとしているのだろう。
ところで、空気を読むという、暗黙裡に状況を推察しての行動が重要だとするのは、それを可能とする同質的な空間があるからではないだろうか。「男子、学部卒、日本人」から構成された環境である。
そこで、その対極にある「女子、大学院生、外国人留学生」に抱いているイメージを見よう。自社で「採用したい者が多くいると思う」か否かを聞くと、全カテゴリーにおいて、見事なほどに日系非グローバル企業、日系グローバル企業、外資系企業の順で「多くいる」比率が高くなる・・・
この項続く

『明るい公務員講座 管理職のオキテ』重版

明るい公務員講座 管理職のオキテ』が、重版になりました。4月に出版して、3か月です。
いくつかの自治体では、管理職研修にまとめて買っていただいています。「職員に読ませているよ」と、報告くださる首長さんもおられます。数百冊買ってもらった自治体もあります。ありがとうございます。

類書がないことが、売れている理由だと思います。書いた内容は、経験者なら知っていることばかりです。しかし、それを「教科書」の形で整理したものがないのです。
また、一般的な管理職論はたくさん本屋に並んでいるのですが、抽象的です。本書は、私の経験その多くは失敗ですが、それを基に具体例を書いているので、わかりやすく身につくと思います。

自信が持てない教師

7月7日の朝日新聞教育面に「自信が持てない日本の教員 OECD、48カ国・地域を調査」が載っていました。
・・・経済協力開発機構(OECD)が5年に1回実施している、国際教員指導環境調査(TALIS)の結果が公表された。日本の教員が、どのような指導や自己評価をしているのか。学校を取り巻く状況は、他の国と比べてどうなのか。調査結果から浮かぶ傾向を、2回にわたって報告する・・・

・・・調査結果で際立つのは、日本の教員の自己評価の低さだ。例えば、「生徒に勉強ができると自信を持たせる」という質問に対し、「非常に良くできている」または「かなりできている」と答えた中学教員は24・1%。調査に参加した48カ国・地域の平均の86・3%の3分の1未満だった。
似たような質問で、「批判的思考を促す」は24・5%(参加国・地域平均82・2%)、「学習の価値を見いだせるように手助けする」は33・9%(同82・8%)で、いずれも参加国・地域で最低の数値だった。「デジタル技術を利用した学習支援」も35・0%(同66・7%)にとどまった・・・

世界の趨勢との違いに、驚きます。このような状況で、良い教育ができるとは思えません。日本の教員が謙虚だということもあるのでしょうが、これだけもの差がつくのですかね。
他方で、多くの小中学生が学習塾に行くことも、異様です。有名校を受験させるという目的もあるのでしょうが、学校教育では不十分なので塾に行かせている親も多いのでしょう。高校生になると、塾に行くのが当たり前のようになっています。学校教育が不十分なのでしょう。おかしな話です。

次のような指摘もあります。
・・・調査は、日本の教員が授業以外の業務で忙しい状況も明らかにした。中学教員の1週間の仕事時間は56・0時間で、平均の38・3時間を大きく上回った一方、授業時間は18・0時間で、平均の20・3時間より短かった。その分、部活などの課外指導(7・5時間)と事務業務(5・6時間)はいずれも参加国・地域で最長。知識や専門性を高めるための「職能開発」に費やした時間は0・6時間で、最も短かった・・・

かつては、世界一の水準にあるともいわれた日本の初等教育。何かおかしいですね。そして、長く指摘されていながら変わらないということも、おかしいです。
明治以来の画一的教育に成功したが故に、方向転換に失敗しているのだと思います。文部科学省の教育行政の仕組み、教育大学・教育学部の教員養成の仕組みです。

7月の3連休

3連休が終わりました。皆さんどのように過ごされましたか。各地で、降ったりやんだりの天気だったようです。毎日ぐずついた天気で、困ったものです。
キョーコさんのお供をした京都では、祇王寺や常寂光寺の苔の庭は、雨できれいでしたが。

東京など、最近は日照時間が極端に少なかったようです。
・・・13日までの10日間の日照時間の合計は、東京の都心が2.9時間で平年の7%、福島市が12時間で平年の34%などと大幅に少なくなっています。このうち東京の都心では、先月27日から13日までの17日連続で、1日の日照時間が3時間未満となりました・・・「NHKニュース7月14日」。「NHKニュース7月15日
農作物や子供たちのプール授業が心配です。

日本型雇用の変化

7月9日の読売新聞に「脱日本型雇用の波」が載っていました。

・・・大手企業の間で、若手社員の賃金水準を引き上げる一方、中高年社員には早期希望退職などを募って削減を進める動きが目立ち始めた。グローバル競争や産業構造の変化に対応するため、人員の構成を転換する狙いがある。だが、欧米に比べて非効率的とされる働き方の改革は道半ばだ・・・

その中に、電機や製薬業界での早期希望退職の動きが紹介されていました。
・・・人手不足にもかかわらず、企業が希望退職を実施するのは、事業や人員構成の構造転換を図るためだ。バブル崩壊後や2008年のリーマン・ショック後に目立った「リストラ型」とは様相が異なる側面がある。
中外製薬は、18年12月期の売上高が過去最高を記録したが、今年4月、172人の希望退職を発表した。「新薬開発にAI人材が必要」とされるなど、事業環境が大きく変わってきた」(広報)ことが理由という・・・

新卒一括採用、終身雇用を前提に、社員は社内で職場を移り、仕事の内容の変更も受け入れました。しかし、かつてのような組立型工場だった時代から、IT時代の職場になると、「企業内転職」では対応できなくなったようです。社員はどのような技能を身につけて、どの技能を売ることで生きていくか。難しい時代になりました。