国会というところ6

Ⅳ内容(コンテンツ)
国会では、法案や予算案の審議、総理大臣の指名などが行われます。そのような項目は、教科書を読んでいただくとして、ここでは違った角度から解説します。
国会で行われることその1:与野党の攻防
(経過)
6月4日午後1時から、参議院本会議が開かれました。厚生労働委員長の解任決議案が、野党から提出されたので、年金法案の採決に先立って、それが審議されました(そういうルールだそうです)。提案者は説明に3時間を費やし、賛成討論も2人で4時間、合計7時間かかりました。一旦休憩の後、採決しましたが、野党は牛歩戦術(ゆっくり歩いて投票する)を採りました。
5日午前1時過ぎ、解任決議案が、与党の反対で否決されました。野党は、次に、議長の不信任決議案や大臣の問責決議案など、合計11本の決議案を提出しました。
議長の不信任決議案を審議する場合には、副議長が議長役になります。しかし、4時に再開した本会議で、副議長は審議に入らず、散会を宣言しました。これに対しては、与党議員が抗議しました。
ところが、野党議員が退席した後、議長が再度議長席に戻り、「散会は無効」と宣言。出席した与党議員により、仮議長を選び、議長の不信任決議案を否決しました。続いて、大臣の問責決議案も否決。そして、年金法案を可決しました。これが終わったのが、朝の9時半でした。
(民主主義と多数決)
「民主主義とは多数決である」という説明があります。確かに、議員や首長を選ぶ場合も、議会で法案や予算案を決める場合も、多数決で決めます。もっとも、「多数決である」と割り切ると、議会の場合は、選挙が終わった瞬間に、すべてが決まることになります。なんとなれば、与野党の議席数が決まれば、どのような議題であっても、任期中は必ず、多数派である与党の案が成立するからです。与党は、「最後は採決だ」と言えばすむのです。
こうしてみると、多数決による民主主義は、横綱と平幕が闘っているようなものです。身も蓋もありません。
少数野党に残された方法は、いくつかあります。
(1)審議の過程において、代案を出したり、与党案の問題点を指摘し、有権者に「与党はひどい」ことを訴え、次回の選挙で勝つことを目指す。あるいは、野党の修正を認めさせ、野党の能力を宣伝する。
(2)審議を遅らせることによって、期間内に成立しないようにする。そして、「与党の能力の無さ」を訴える。その場合には、次のような手段があります。
①本会議での審議を要求する(つるしを下ろさない)。そのことによって、委員会での審議入りを遅らせる。
②本会議や委員会の「定例日」を守ることで、時間を稼ぐ。
③委員会での審議に日数(時間)をかける。
さらには、
④審議を拒否する(ねる)。出席しない、入り口にピケを張る。
⑤採決に際し、長時間の演説をする。牛歩戦術を採る。
⑥不信任決議案などを出して、法案の審議を遅らせる。
⑦与党が強行採決するように持ち込み、「与党の横暴」を有権者に見せる。
などです。
起立採決であれば、数分あれば、一つの法案を成立させることが可能です。参議院には押しボタン設備があるので、もっと早いです。しかし、このような「審議妨害」「審議遅延」は、少数野党を守るために、民主主義の先輩であるアメリカやイギリスでも、認められているとのことです。
あとは、それを見て、有権者が、与野党どちらに「理があるか」「分があるか」と判断するかです。ゆえに、民主主義は多数決だけでなく、そこに持ち込むまでの「議論」もまた、重要な要素になります。
もっとも、野党も議論や対案なしで、「ねた」り「遅らせ」たりするだけでは、有権者に「政権担当能力」を訴えることはできません。それでは、最初から勝つことを想定していないからです。(2004年6月5日)