原発被災地域の将来

原発被災地の将来像をどう描くか。有識者の知見をいただきながら、検討しています。「12市町村将来像検討会」。その議論の前提として、この地域の放射線量がどうなるか、一定の前提で予測しました。「空間線量の見通し」。これを見て頂くと、事故後10年で赤い地域はなくなり、20年後にはオレンジ色の所もなくなります。同様の予測としては、平成24年4月に原災本部が公表した「空間線量率の予測」があります。その予測と、大きくは変わっていません。24年予測に比べ、この間に予想より減っているので(雨などの影響だと推測されます)、将来の放射線量も少なくなっています。また、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)が、今年6月に試算しています。「環境動態研究で得られた知見-平成26年度の成果概要」p5。
もう一つの試算は、人口です。「将来人口見通し」。発災前(平成20年)に試算したものがあります。それによると、平成23年3月に約20万人が、平成47年には15.4万人に減るとの予測でした(それぞれの左側の青い棒)。27年3月には推計では19.6万人でしたが、実際には避難指示区域外に11.3万人住んでおられます。これを起点として、どのように増減するかです。今回まず、帰還見込み者(アンケート結果に基づき一定の仮定を置いたもの)が戻られると試算すると、平成47年(今から20年後)には、11.7万人となります(黄色い棒)。もう一つの試算では、もう少し帰還者数が増えて、また新住民も増加すると仮定します。すると、平成47年には16万人になり、事故がなかった場合の推計である15.4万人より増えます(緑の棒)。
この要因は、新住民です。一つは、新しい産業を呼ぼうと計画しています。これは、どの程度の雇用を生むかは不確定です。もう一つは、かなり確度の高い大勢の新住民です。すなわち、廃炉作業員です。現在毎日7千人の作業員が、主にいわき市から、第一原発に通っています。この廃炉作業は、30年は続くと予想されます。その人たちが、住所をこの12市町村に移すと、「大きなかたまりとしての、かつ30年間続く住民」が生まれます。7千人の新住民が生まれると、その人たちを対象としたサービス業が生まれます。飲食店やクリーニング、理髪店などです。
「原発事故地域は人が住めない」といった印象を持っている方もおられるようですが、そうではありません。確かに、帰還困難区域(赤い地域)は当分の間、人が住むことはできませんが、それ以外の地域では町が復興するのです。そのためには、多くの人が帰ろうと思い、新しい住民が住もうと思ってもらえる町をつくる必要があります。住民の方、市町村、県と一緒になって、進めます。