政治とは過程

(政治とは過程)
6日の読売新聞「地球を読む」は、佐々木毅教授の「日本外交の課題、対北戦略練り直しを」でした。
「北朝鮮のミサイル発射をめぐる目まぐるしい安保理での外交交渉は、外交についての素晴らしい教材を日本国民に提供してくれた。特に、日本政府の主張がどのような形で取引され、変形され、一定の結果につながるかを如実に実感させられたことに加え、日本だけでなく、どの国の外交力にも可能性と同時に限界があることがはっきりした」
「アメリカにも中国にもできないことがある。その中で各国政府がどのような位置取りを選択するか、目まぐるしい役割交代をどうこなすかに「可能性の術」としての外交の要諦があるが、日本外交はほとんど一つの役割しか果たせなかったこともまた事実である」
「当初の日米案が中国とロシアの反対によって修正を余儀なくされたにせよ、安保理全会一致の北朝鮮非難決議が成立したことの意味は大きい。今や中露も、そして韓国も従来以上に北朝鮮政策の見直しを迫られざるを得なくなった・・・」
(日本の外交デビュー)
「日本の外交論議は長い間憲法解釈論議と混線し、外交は外務官僚を中心とした極めて一部の人間だけが関与してきた(政治家の関心の低い)政策領域であった。ところが小泉政権の下で事態は変わった。「小さな政府」の名の下に利益配分型政治が抵抗勢力と名指しされ、昔日の存在感を失うとともに、外交問題が政治家にとって新たなリソースとして浮上してきたからである・・・」(8月7日)
8日から朝日新聞は、連載「小泉時代とこれから」を始めました。「5年間の小泉政治は日本をどう変え、次の政権にどんな課題を残したのか」。第1回目は、佐々木毅教授の政治と政党です。
「結局、再生したのは民間セクター、今までは民間が困っていたらすぐに手を差し伸べて助けた。それをしないことで、民間セクターの体質改善、強化を促した。これに対し、政府のあり方については規模を小さくする議論はあるが、どう変えるかがない。とりあえず小さくするというだけ。郵政や道路公団の改革には手を付けても、政府本体の構造改革は行われていない」
「言い換えれば、政府の競争力が上がっていない、ということだ。そういう意識が政権にあるのかも疑わしい。ただ小さくするというだけで、競争力に関するアイデアは見あたらない」
「グローバリズム化が進むのに任せるだけでは、国民の支持は得られない。グローバル化を進めるだけでいいのなら、政府は何のために存在するんだ、という問題が出てくる。政府としては『存在する意味があるんだ』ということをいわなきゃいけなくなる」
「5年間で政治家の質は向上したのか、とうことがある。問題は極めて深刻で、政党の責任は重い。新しい人たちが登場することは結構だが、どこでどういうトレーニングを受け、どういう基準で選ばれて議員や閣僚などになるのか、甚だ心もとない状態だ」(8月8日)