カテゴリーアーカイブ:政治の役割

新型コロナウイルス、病床は空いているのに逼迫

2021年5月6日   岡本全勝

5月1日の日経新聞1面「コロナ医療の病巣 機能不全の実相(上)」「空き37万床でも逼迫 非効率 改革先送りの代償」から。
・・・感染者数は欧米より桁違いに少なく、病床数も世界有数の多さを誇る日本が、またも緊急事態宣言に追い込まれた。「病床逼迫」の裏で何が起きているのか・・・

・・・現在と同様に感染者が急増した昨年末、実は全国の一般病床と感染症病床を合わせた約88万9千床のうち約37万2千床(42%)は空いていた。コロナ禍のまっただ中なのに、2019年末より約3万床増え、病床使用率はむしろ低下していた・・・当時、健康観察や治療が必要な感染者は約4万人。それを大きく上回る病床が使われないまま、年明けには2度目の緊急事態宣言に発展した。「ベッドが足りない」と悲鳴があがる一方で、大量の空き病床が発生する矛盾は、日本医療の機能不全を象徴する・・・

記事では、次のようなことが指摘されています。
・急性期病床を名乗りながら、実態は十分な診療体制を整えていない病院があること
・病院間の役割分担や連携が不十分で運用が非効率なこと
・病院内で、専門外の医師を感染症対策に回すように強制できないこと
・医師個人は応召義務があるが、医療機関は事実上診療しないことが正当化されること

そして、救急患者の搬送先が見つからない、たらい回しが起きています。

政治家の演説

2021年4月29日   岡本全勝

4月25日の朝日新聞、社説余滴は、箱田哲也さんの「日韓を覆う演説不作」でした。

・・・鳴り物入りの訪米を果たした日本のトップは、世界の耳目を集めた共同記者会見でも「メモ読み」を貫いた。機微に触れる質問の回答が漏れたのは、事前通告に慣れすぎたゆえか。
個人の訥弁をあげつらおうというのではない。改めて憂えるのは政治家の言葉の貧弱さである。海の向こうから聞こえるスピーチはまばゆいが、日本政治家の名演説というと、すっかりごぶさたな気がする・・・
・・・政治記者の故・岩見隆夫さんは著書「演説力」で、政治家がテレビ出演や握手の回数を増やす「集票第一主義」に陥ったと指摘。「練り上げた演説文を個性的に工夫されたスタイルでぶち、肉声で訴える」ことを軽視していると嘆いた・・・

・・・韓国には比較的、演説上手が多い印象がある。
古くから武官に比べて文官が優位で、まさに「言葉が命」でしのぎを削ってきた名残だろうと、現地の政治家に聞いたことがある。そんな韓国でも最近は、名演説がすっかり影をひそめているらしい。
日韓の対立をほぐす過程に、政治家の姿が見あたらなくなって久しい。熟慮した言葉で隣国に語りかけるどころか「やりやがったなてめえ」とばかり、息巻く向きが双方に目立つ。
昨今の日韓関係の冷えこみには「演説不作」も影響しているのかもしれない・・・

新型コロナウイルス感染症、諸外国比較

2021年4月27日   岡本全勝

4月27日の日経新聞に、諸外国の感染者数とワクチン接種率がグラフになって比較されていました。「感染封じ込め、世界で優劣鮮明
・・・新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、ワクチン接種や行動制限など政策の巧拙が各国の明暗を分けている。早期の接種で社会経済活動の正常化に踏み出した国がある一方、インドでは新規感染者数が過去最高になっている・・・
グラフは、3つの型に分けられています。
1 接種が進まず、感染者が増加している国。ドイツ、インド
2 接種は進んだが、感染者の減少は鈍い国。アメリカ、チリ。
3 接種が進んで、感染を封じ込めた国。イスラエル、イギリス。

日本はというと、別の欄にグラフが載っています。接種が遅れ、感染者数が増えています。
ところがよく見ると、日本のグラフだけが、メモリが違うのです。他国の接種率は100%まで目盛りがあり、日本は同じ大きさですが目盛りは5%までです。新規感染者数も、他国は10万人あたり100人まで目盛りがありますが、日本は5人までです。すなわち、諸外国と20倍の違いがあるのです。
同じ目盛りで作図すれば、日本の違いがよくわかったでしょうに。

日経新聞ウエッブサイトでは、世界との比較のグラフもあります。「人口あたり感染者数」「ワクチン接種率
ここからは、次のようなことが見えてきます。
・感染者数は非常に少ない(アジア各国を除く)。自粛や「鎖国」で、押さえ込みには、成功しています。でも、なぜ医療逼迫が起きるのでしょうか。
・ワクチン接種率も、非常に遅れている。

医師も病床数も多く患者も少ないのに、逼迫するコロナ医療

2021年4月15日   岡本全勝

4月11日の読売新聞、辻哲夫・元厚労事務次官の「コロナで見えた予兆 増える高齢者 病床再編が必要」から。
・・・新型コロナの大流行は、くしくも日本の医療提供体制の弱点を浮き彫りにしたのではないか。よく分析して、医療の総合政策を見直す必要があります。
コロナ禍では、病院がコロナ患者を受け入れきれず、入院待機者が膨れ上がった。その余波でがんなど本来の患者の入院診療も手いっぱいになる事態も招きました。
弱点の一つは、病院で医師や看護師が「薄い配置」になっている実態です。
日本の場合、人口あたりの医師や看護師の数は欧米とほぼ同水準である一方、病床数が過剰となっています。そうした中で、集中管理が必要なコロナ患者が数多く入院し、医療が逼迫したわけです。

もう一つは、医療提供体制が民間の中小病院に多く依存し、連携体制も不十分なので、機動的に動けなかったことです。民間病院は公的な病院と違って、行政の指導が及びにくく、病院間の連携もうまくいかないのです。こうした日本の医療が構造的に持つ弱点を改善し、よりメリハリをつけた医療提供体制にしていくべきです。
今回、もう一点気になったのが、開業医を中心とする「かかりつけ医」の役割がよく見えなかったことです・・・

「いずれ対策はとられるだろう」

2021年4月10日   岡本全勝

4月7日の朝日新聞オピニオン欄「専門誌に聞け」、「週刊東洋経済」西村豪太編集長の「資本主義を見つめて:2」から。
・・・創刊5千号という記念号が出たのは1991年のことでした。私はその頃この会社への入社が内定した直後で、当時もらった実物をまだ保管しています。記念号の特集タイトルは「GNPが世界一になる日」でした。20年後の2010年に日本はGNP(国民総生産)世界一の国になっている――そんな未来像を思い描ける時代だったのです。ただ特集の中身自体は、タイトルから想像されるものよりは冷静でした。最後に次のように総括されているのです。
日本が若年人口の減少や高齢化という問題に直面していることは今から分かっているのだから、いずれ対策はとられるだろう。今のままではダメだが、政治家も官僚も変わるに違いない。2010年の日本は、国家としての力は弱まっているかもしれないが住みやすい国になっているだろう……と。
当時の記者が取材を重ね、未来への期待を形にしたらどうなるかと考えた結論でした。長期的課題を前にして「いずれ対策はとられるだろう」という楽観を持つことは禁物だと自戒させられます・・・
参考「変えなければ変わらない