カテゴリー別アーカイブ: 政と官

行政-政と官

朝日新聞に登場しました、官僚の役割

今朝3月1日の朝日新聞政治面に、登場しました。「民主党政権後に加速した官邸主導 省庁の発信消えた」。
・・・麻生官邸で首相の日程調整を切り盛りした総務省出身の岡本全勝氏は、各省庁の発信と報道機関の取り上げ方に注目。「役所が発信しなくなった。新聞の1面に個別の省庁が発表した記事が載ることは、統計資料を除いてほとんどない」と分析する・・・。

補足すると、私は首相官邸と各省とで、そして政治家と官僚とで、役割分担があると考えています。もちろん、総理の指示で各省大臣が動き、大臣の指示で官僚が動きます。それを前提としつつ、官僚には政治家にない役割があります。
各省の役人は、それぞれの分担している政策において専門家です。その経験と知見で課題を発見し、対策を考える。また、総理や大臣から指示のあった課題について、対策を考えます。それを大臣と議論しつつ、政策を練っていくのです。官僚、特に幹部はもっと政策を世に問うべきであるというのが、私の持論です。
官僚が、官邸や大臣の意向に反して意見を公に発言するのは、よくないことです。よほど政治家が間違っているならともかく。上司を批判するなら、直接申し述べるのか、職を辞して行うべきです。
もっとも、私が主張しているのはそのような事態ではなく、自分の所管の行政について課題を整理し、将来への方向性を示すことです。

審議会政治の終わり?

日経新聞7月29日の総合面「真相深層」小川和広記者の「「官製」最低賃金 首相の念願。異例のスピード決着、過去最大24円上げ」が、良い分析をしていました。
中央最低賃金審議会の小委員会が、企業に義務づける最低賃金を10月から24円引き上げることを決めました。徹夜協議となった昨年、一昨年に比べ、異例のスピード決着です。それに関して。
・・・ある委員は「安倍晋三首相の発言が後押ししたのは間違いない」と振り返る。13日の経済財政諮問会議で首相は「今年度は3%の引き上げに向けて最大限努力するように」と時期と上げ幅を具体的に挙げて、関係閣僚に指示していたからだ・・・労使で決める賃金に政府は原則として介入できない。しかし、法律で義務づける最低賃金であれば政府にも介入の余地がある。内閣府中堅幹部は「労使が協議する厚生労働省の審議会で政府が3%引き上げたいとは言えない。代わりに諮問会議で首相が発言する場を作った」と明かす・・・
・・・首相の「鶴の一声」による今回の最低賃金の決め方は学者、経団連、連合の代表ら公労使による中央最低賃金審議会の不要論につながる可能性をはらむ・・・
この問題は、賃上げをどのように実現していくか、日本経済のありようや連合や経団連の役割など大きな課題を含んでいます。ここでは、審議会政治に絞って解説しましょう。
社会に利害対立がある場合、その両者と公益委員を入れた3者協議の場が作られます。国や自治体でもそのような3者審議会は、この賃金などの他にも例があります。かつては、公共料金、米価などが花形でニュースになりました。
政府の審議会は、シナリオを官僚が書くので、「官僚の隠れ蓑」と批判されました。ところが、この3者協議の形の審議会は、官僚の隠れ蓑ではなく、「政治家の隠れ蓑」と見る見方もあります。すなわち、社会の利害対立を調整するのは、本来は国会なり政治の仕事です。しかし、その調整を、省庁におかれた審議会に委ねるのです。そして、両者が意見を述べ、中立の立場の公益委員と官僚が、落としどころを探るのです。
政治が解決せず、丸投げされた官僚機構が編み出した「知恵のある解決の場、方法」だったのです。国会の場で大騒ぎにせず、審議会の場で静かに片を付ける。日本流の一つの解決方法でした。しかし、「官僚主導でなく政治主導で」という理念を実現するなら、このような審議会は不要になります。
2001年の省庁改革では、審議会の整理統合も一つの課題でした。かつてこのホームページでも、書いたことがあります2006年11月8日。記事の中では、「ある委員は「頭越しに目標を設定するやり方では審議会が形骸化する」と不満を漏らし始めている」と紹介されていますが、その通りです。いずれ、廃止される時期が来るかもしれません。

内閣の基本方針、公務員への期待

昨日閣議決定された「基本方針」の最後に、次のような文章があります。
「最後に、各府省の公務員諸君には、大いに期待している。「一億総活躍」社会の実現、新たな国づくりには、諸君の斬新な発想力と大胆な行動力が不可欠である。行政のプロとしての誇りを胸に、その持てる力を存分に発揮してほしい。常に、国民の目線を忘れることなく、その心に寄り添いながら、政策立案に当たっては積極的に提案し、現場にあっては果敢に行動してもらいたい」
昨年12月の組閣の際の「基本方針」では、次のようでした。
「最後に、各府省の公務員諸君には、行政のプロとしての誇りを胸に、その持てる力を存分に発揮するよう期待する。常に、国民の目線を忘れることなく、その心に寄り添いながら、政策立案に当たっては積極的に提案し、現場にあっては果敢に行動してもらいたい」。

政治と行政、清水記者の新著

清水真人著『財務省と政治ー最強官庁の虚像と実像』(2015年9月、中公新書)が、出版されました。著者は日経新聞政治部記者で、これまでも政治と財政について、多くの著書を世に問うています。著者の、1990年代からこれまでの取材に基づいた記録と分析です。新書とはいえ、なかなかの力作です。
当事者や関係者からすると、意見や異論はあるでしょう。しかし、日本の政治と行政の分析については、日々流されるニュース記事、奇をてらったしかしステレオタイプの週刊誌記事、他方でしっかりした分析だが時間がかかる学者の本などが多いです。その間で、このような現場に密着した、かつ事実を丁寧に記述して、それを大きな視点から分析する本は、意義があります。

政と官の関係変化

今日は午後から、ドイツの研究者のインタビューを受けました。日本の大学院に留学中とのことです。彼の研究テーマは、日本の政策形成、特に経済外交についての変化、それも行政改革や政と官との関係から見た変化です。私は経済外交は専門外なのですが、行政改革、政と官との関係から、指導教官(大学院の教授。私もお世話になっている方々)の推薦とのことで、お受けしました。
ドイツ語または英語で、英語の通訳を連れてくるとのことでしたが、復興庁にドイツ語のプロがいることを思い出して、彼に通訳をお願いしました。政府要人の通訳を務める彼に通訳してもらうのは、すごくぜいたくなことです。でも、専門外の通訳を連れてこられるより、背景を知っている彼の方が、ずっと円滑に伝わるでしょう。ありがとうF参事官。
事前に質問項目をもらい、それに合うように私の考えをメモに整理しました。政と官の変化については、かつて「行政構造改革」を連載し(惜しかったですね、本にしておけば良かったです)、またこのホームページでも「政と官」の分類を立ててあります。私の近年の主要研究テーマです。それを引っ張り出したり、行政改革のプロの官僚に問い合わせたり、主要紙の政治部記者に問い合わせて、メモを整理しました。私の独自の見解が、大勢とずれていてはいけないので。久しぶりに、この4半世紀の日本の政治と行政改革を考え直しました。
そのメモもドイツ語に翻訳してもらって、事前に研究者に渡しておきました。私もその翻訳をもらったのですが、残念なことに、見出しの数字番号しか分かりませんでした。今日は、そのメモを前提に、質問にお答えしました。制度改革が変化を生んだのか、運用が変化を生んだのか。私はその前提に、国際、経済、社会環境の変化が、日本の政と官の変化を生んだ一番の要因だと考えています。