カテゴリー別アーカイブ: 官民協働

自治体と企業との連携、「自治体通信」

自治体通信』という専門誌を紹介します。
ホームページには、「自治体通信は経営感覚をもって課題解決に取り組む自治体とそれをサポートする民間企業を紹介する情報誌です。自治体関係者の方に無料配布しております」とあります。全国の自治体に、28,000部が無料で配られているとのことです。
詳しくは、そのホームページをご覧ください

業務の改善から地域の課題解決まで、企業が自治体と一緒に取り組んでいる事例を紹介しています。それら企業の「掲載料(広告費)」で、費用が賄われているのでしょう。各記事の下に、その企業の紹介が載っています。なかなか良い仕組みです。
このような媒体で、先進事例やうまくいった事例を調べることができると、便利ですよね。もちろん、企業の紹介を兼ねているという限界はあるのでしょうが。

私も、2月6日に登壇した自治体向け働き方改革セミナー(三井住友海上火災保険)が、第17号(2019年3月)に載ったので、教えてもらいました。「抜粋」で読むことができます。無料の雑誌なので、できることですね。

これまでの行政と企業との連携は、事業の発注であり、事務の委託でした。行政が決めた業務内容を、企業に引き受けてもらうのです。
しかし、最近の動きは、どのような業務を担ってもらうのか。そこから企業と一緒に考える点が、これまでの民間委託とは異なっています。大震災の際も、様々な協力や協働をしてもらいました。
行政と企業との新しい関係が、進み始めています。このホームページでも、「官民協働」という分類を作りました。

福島県、企業と県庁との連携

今日は、福島県庁主催の「ふくしま『ご縁』視察交流会」に行ってきました。これまで福島県を支援してくださっている企業の方を招いて、県内を視察してもらうとともに、交流を深めようとするものです。
このホームページでも紹介したことがありますが、福島県庁も、様々な企業と連携協定を結んで、官民協働を進めています。そのお礼の意味と、今後の新しい取り組みを期待してです。地元企業も参加して、異業種交流も行われました。
私も、県庁からの依頼を受けて参加し、復興における民間の貢献と、これからの企業の社会貢献について、お話ししてきました。
官民協働は、大震災復興において私が力を入れた分野であり、また今後の行政のあり方を考える上で重要なことと思っています。

朝、出発点の新白河駅に着いたときは「風が強いなあ」と思ったいたら、昼過ぎに裏磐梯の山中にある「会津山塩」を訪問する頃は、気温は氷点下、雪がちらついていました。周囲には、雪がたくさん残っていました。昨日が暖かかっただけに、余計寒く感じました。
山塩は、太古の海水が温泉となってものを、煮詰めてつくるのです。「製造工程」を見てください。

県庁が自ら企画実施したので、なかなか「ふだんにない視察先」でした(最近、行政が行う催しは、民間に委託=丸投げが多いのです)。

復興、民間団体との協働

1月15日の福島民報が1面トップに、「イノベ推進機構民間団体と連携 被災地活性化後押し」という記事を載せていました。
・・・福島イノベーション・コースト構想推進機構は浜通りなどの民間団体と連携し、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の被災地の交流人口拡大や地域づくりを担う人材育成を後押しする。機構は昨年末までに、全線開通を控えるJR常磐線の利活用促進や復興を支える人材の育成などに取り組む七団体の事業を補助対象に採択。運営費の補助だけでなく、職員派遣を含めた人的支援を検討し、共同で被災地の課題解決と活性化を進める・・・

行政が、民間団体や企業とどのように協働するかが、新しい課題になっています。
かつては、民間活力利用と言えば、行政の業務を民間委託に出したり、民営化することが主でした。いま新しく試みられているのは、行政と民間団体が対等の立場で、それぞれの持ち味を出して、社会の課題を解決することです。

既にある業務を民間にお願いするのではないので、試行錯誤となります。また、行政も、民間団体と契約を結んでお金を払えば終わりというものでなく、一緒に知恵を出しながら課題を解決しなければなりません。これは、なかなか難しいことです。

行政には、地域の課題を解決しなければならない任務があり、大きな信用力と、そこそこのお金があります。民間団体には、新しいことに取り組む意欲と、それまでに培ったノウハウがあります。これを、どのように協働するかです。
福島イノベーション・コースト構想推進機構

官民協働施策、神戸市の認知症事故対策2

官民協働施策、神戸市の認知症事故対策」の続きです。

今回この施策を取り上げたのは、
1 神戸市が考えた新しい施策を、皆さんに紹介するとともに(たぶん他の自治体にも広がると思います)
2 表題につけたように、行政と民間企業との協働施策として、お話ししたかったのです。認知症事故対策といえば、普通は行政の仕事と想像します。しかし、今回は行政の役割と企業の役割を、うまく組み合わせたのです。

例えば、保険で官民が協働している代表例は、自動車損害賠償責任保険制度です。
法律により、車の所有者に加入が義務づけられている強制保険ですが、所有者が入るのは民間の保険会社の保険です。ひき逃げ事故や無保険車で、被害者が損害賠償を受けることができない場合は、政府が損害額を被害者に支払う仕組みになっています。
よく考えられた仕組みです。

年金制度は、かつて国の社会保険庁が運営していましたが、ずさんな管理で「消えた年金」が大問題になりました。社会保険庁は取り潰しになり、日本年金機構になりました。
年金制度も、自賠責と同様に法律で義務付けして、運営は保険会社に任せておけば、そんな問題は生じなかったと思うのですが。なにか不都合があるのでしょうか。

官民協働施策、神戸市の認知症事故対策

11月22日の日経新聞関西地域版が「認知症の事故 税で備え 神戸市、市民税年400円上乗せ 被害者・患者側救済へ条例案」を伝えていました。

・・・神戸市は認知症の高齢者などが絡む事故やトラブルを想定した、独自の認知症対策を進める。個人市民税均等割に1人当たり年400円を上乗せし、その財源で被害にあった市民に見舞金を支給することなどが骨子。認知症をめぐる市条例の改正案として11月市議会に提案する。可決・成立すれば全国初のケースとなり、市は「神戸モデル」として2019年4月に施行する考えだ・・・

・・・改正案は、認知症患者が絡んだ事故をめぐって、被害者および患者や監督責任を負った家族など加害側を救済する仕組みと、認知症診断への助成との2本柱で構成する。19~21年度に年平均で約3億円の財源が必要になると見込み、市は19年4月から個人の市民税にひとり年400円を上乗せする方針だ。市担当者は「福祉施策で市民税を上乗せするのは全国で初めて」と話す。

被害救済については、認知症患者側の賠償責任の有無にかかわらず被害者が神戸市民だった場合、最大3千万円の見舞金を支給する。一方で、市は認知症患者による事故に備え、三井住友海上火災保険(東京・千代田)の保険に加入。家族の監督責任を含む認知症患者側の賠償責任が認められた場合は、患者側に最大2億円を支給する・・・

これは、なかなか良く設計された施策ですね。
市民税に上乗せ(増税)することで財源を確保し、認知症患者による事故の被害者に見舞金を支給します。他方で、市は損保会社の保険に加入して、認知症患者の賠償責任が認められた場合は、患者にお金を支給します。
前段は市民の負担による市役所による施策、後段は損保会社と組んだ市役所の施策です。
神戸市のホームページ
この項続く