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連載、明るい公務員講座・中級編

連載を振り返って7

書くことは、考えを整理すること。

今回の連載には、元になった文章があります。「明るい係長講座 初級編・中級編」(1996年、富山県職員研修所)です。富山県総務部長の時に書いた小冊子です。
今回の連載を始めたときも、「かつて書いたことがあるから、それを全国版にすればよいわ」とお気楽に考えていました。しかし、そうはいきませんでした。
・教科書とするためには、経験談を羅列するだけでは駄目です。体系的に、知識を並べる必要があります。
・必要な知識をすべて網羅することは難しいですが、必要な知識で抜けていないかを、確認する必要があります。
かつて読んだ本を再度読み返してみたり、参考になる本はないかと探しました。ないことを確認することも、安心材料になります。
・特に中級編では、課長として何が必要かを、考え直す必要がありました。

これには、苦労しました。
当初は、「体験談を整理して書けば良い」と考えていました。しかし、「整理する」ことが、難しかったのです。
ふだん職場でしている仕事を、どのように分類するか。これに苦労したのです。いろんな場面でいろんな体験をしたので、体験談やエピソードは余るほど持っています。しかし、それを羅列しても、教科書にはなりません。
そこで苦心したのは、構成です。たくさんの仕事のコツをどのように分類したら、皆さんに理解してもらえるか。大分類、中分類、そして見出しを、何度も作り替えました。
その過程で、「私のやってきたことは、こういうことだったんだ」と再認識することも、たびたびありました。書くことは、考えを整理することです。

連載を振り返って6

職員の延長に課長はない

ところで、中級編(課長編)は、初級編(職員編)の延長ではありません。よい職員の延長によい課長があるわけではないのです。これは、意外と認識されていません。

ビジネス書には、よい職員になるための心構えや技術が書かれています。しかし、それを実践するだけでは、よい課長になれないのです。
職員みんなが、よい職員になるわけではありません。職場には、出来の悪い職員も、困った職員もいます。課長は、そのような職員も相手にしなければなりません。それは、「よい職員になるための本」には、書かれていないのです。
「先輩談」もよい話ばかりで、都合の悪い話は出てきません。

不都合な事実に目を背け、きれい事だけで、課長が務まるわけではありません。そこで、2:6:2の法則を書きました。また、出来の悪い職員の評価や指導についても書きました。

さらに、生産性の低さと、その改善策を述べました。
日本の労働者の生産性が先進国の中で低いことは、しばしば報道されています。残業時間が長く、休暇も取らず、労働時間が長いことも。
公務員の職場も、例外ではありません。それどころが、他の職場に比べても、生産性は低い方でしょう。とにかく、無駄が多いのです。頻繁な会議、しかもそこでは決まりません。部下に任せっきりの上司。どうしてよいかわからずに悩む部下・・・。
多くの管理職が、責任を果たしていないのです。これについても、厳しいことを書きました。しかし、私が新事実を書いたのではなく、多くの関係者が分かっていながら放置していることでしょう。

明るい公務員講座・中級編41

『地方行政』連載「明るい公務員講座・中級編」の第41回「発想の改革(4)課長が変える」が発行されました。
前回は、「課長が決める」をお教えしました。部下任せにしていては、難しい仕事は進みません。課長が決めれば、進むのです。これが、仕事の流儀の改革です。

さらに、課内の業務の減量をしましょう。職員数が増えない時代に、残業時間を減らすには、効率よくやるか、仕事量を減らすしかありません。
働き方改革は、チャンスです。これまでだったら、「このような作業はやめたいけど、なかなかそうもいかなくて・・」と思っていたことも、この際、「働き方改革」を錦の御旗に変えてしまいましょう。心配なときは、上司と相談して、上司を巻き込みましょう。

もう一つ、もしあなたの職場に「成績不良職員」がいたら、きちんとした指導と評価しましょう。そして、改善が見られないようだったら、人事課と相談して、しかるべき措置をとってもらいましょう。働かない職員を放置して、ほかの職員にそのしわ寄せをしては、ほかの職員がぐれてしまいます。

職場の仕事、そのやり方と仕事量を変えることができるのは、課長です。職員は意見は言えますが、決定権は持っていません。部長は、現場の実態を詳しくは知りません。課長だけが、判断できるのです。
今回の内容は、次の通り。
作業の簡素化、定例業務もアカがたまる、事務の削減、働き方改革はチャンス、繁忙期の対策、残業時間の管理、成績不良職員の評価と指導、あなたが変える。

さて、この連載も、次回(11月20日号)が最終回です。

連載を振り返って5

必要な知識の見取り図

この連載は「職場の作法の教科書」を目指しました。教科書には、基礎知識を教えるという機能とともに、知識の全体像を示すという機能があります。

「これだけのことを知っていれば、大丈夫」という知識の一覧です。本屋に並んでいるビジネス書に、私が満足できなかった理由の二点目が、これです。
それぞれの本は役に立つのですが、どれとどれを読んだら良いのかが、わかりません。知りたいことがはっきりしていたら、お目当ての本を探して読めば良いのです。しかし、何を勉強したらよいかがわからない初心者には、基本が書かれた教科書が必要なのです。
教科書の意義は、「これだけ読んでおけば、たいがいのことは大丈夫」と自信が持てることです。

また、それらの本は、仕事に役立つヒントが書いてあるのですが、羅列であって、体系立っていないのです。よって、読んだときはなるほどと思いますが、頭の中に整理できません。
体系的に整理されているとは、「知識の地図」「見取り図」と例えればよいでしょう。どこに何があるか、今どこにいるのかを、理解できるのです。

大きなデパートに行ったときを想像してください。
初めて行くデパートなら、お目当てのものはどこに売っているのか、入り口の案内所で聞くか、売り場案内の地図を見るでしょう。
また、あなたがデパートの店長になるには、あるいは店員になったなら、店内のどこで何を売っているかを一通り知っておかねばなりません。商品の詳しい内容は、知っている必要はありません。それは、売り場の店員に聞けばよいのです。あなたが配属された売り場で、勉強すれば良いのです。

連載を振り返って4

体験談を文章にするのは難しい

なぜ、これまでこのような本がなかったか。
連載で書いたことは、学問的研究で発見されるような「大それたこと」ではありません(研究の対象になるとは思いますが)。そして、学者や研究者は、職場での経験をしていません。経験談は書けないのです。

経験者なら書けるか。そうでもないのです。
先輩も、見よう見まねで身につけたので、理屈としては理解していません。体験談として具体事例は語ることができるのですが、それを普遍化して文章にするのは、意外と難しいです。だから、飲み屋で後輩たちに体験談を語ることはできても、研修所で話すとなると、何をしゃべったらよいか苦労するのです。

私もすべての職場、すべての場面を経験したわけではありません。しかし、多くの公務員より、幅広くまた難しい仕事を経験しました。
一つは、県庁と中央省庁で、さまざまな職場を経験することができました。そして、平職員から課長、そして総務部長や事務次官まで経験しました。
もう一つは、その過程で、むつかしい事案も経験しました。よい上司とともにそりの合わない上司に仕え、素晴らしい部下と困った部下を持ちました。自らも仕事に悩み、悩む職員を見てきました。
この世界で、他の人より少し広い経験をした私が、書いて伝える価値はあるだろうと思ったのです。

また、山登りに例えてみます。
もし、頂上までのまっすぐな一本道があったとして、それを登った場合。あるいは、ロープウェイで頂上まで運んでもらったとしたら。それでは、いろんな登山道を上る人たちの苦労は分からないでしょう。いろんな道を歩き、迷ったり、苦労したことが、後輩たちに助言をできる蓄積になりました。