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連載「公共を創る」第208回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第208回「政府の役割の再定義ー最低賃金、国民の負担と政治主導」が、発行されました。

政治主導がうまくいっていないことの2番目として「政策の優先順位付け」を議論しています。全体を見渡して伸ばす政策(予算)と削減する政策(予算)を決めるのは、政治家の役割です。官僚にはできません。
政治家による優先順位付けでうまくいった例として、東日本大震災復興の事例を取り上げました。

利害対立の調整も、政治家の役割です。官僚主導の時代では、審議会という仕組みを使って処理することもありました。それが現在も続いている例が、最低賃金の決定です。知事たちが、審議会による決定に異論を唱え始めました。

国民に負担を問うことも、政治家の役割です。消費税率は、2012年の野田佳彦・民主党政権で5%から段階的に引き上げることを決め、安倍晋三内閣で時期を遅らせつつも実施されました。しかし、皆さんご承知の通り、日本の財政は先進諸国では飛び抜けて悪いのです。そして、改善の見込みなく悪化しています。

『Public Administration in Japan 』に分担執筆4

『Public Administration in Japan 』に分担執筆」の続報です。
出版社のページ『Public Administration in Japan』を見ると、アクセスが3万件になっています。私の執筆した第19章は、1700件を超えています。

それだけもの人が読んでくださった(ダウンロードしてくださった)ようです。紙の本だと、これだけもの人に買って読んでもらえなかったでしょうね。
先日のJICA強靱な国・社会づくり研修の際に拙稿を紹介したら、それを読んでくれた研修生がいて、最後の日に質問が出ました。
『Public Administration in Japan 』に分担執筆3

『明るい公務員講座』第8刷り

明るい公務員講座』が、第8刷りになりました。めでたいことです。

累計1万2千部を超えました。地方公務員のうち一般行政職は約94万人、国家公務員のうち一般職は約29万人、合わせて120万人あまり。1万2千部だと、単純に100人に一人が買ってくれています。公務員の数は直近の数値で、本の部数は7年間の合計なので、少々おかしな計算ですが、まあ規模感がわかるでしょう。

いろんなところで、使ってもらっているようです。
初版は2017年です。そろそろ書き換えたいのですが、連載「公共を創る」の執筆で手が一杯です。もう少しお待ちください。

ちなみに、養老孟司先生の『バカの壁』は460万部、「壁」シリーズは700万部だそうです(12月14日日経新聞読書欄)。

連載「公共を創る」第207回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第207回「政府の役割の再定義ー政策の優先順位付けと利害調整」が、発行されました。政治主導がうまくいっていないことについて議論しています。

政治主導へ転換するために、国会での委員会での官僚の答弁機会は減ったのですが、首相や大臣の答弁案を作成する業務は、以前と変わっていません。国会での質疑が、政治家同士の議論になっていないのです。
また、法律案や予算案の与野党への説明も、政治家でなく官僚が担っています。しかも、その際には政治家から官僚に対し時に厳しい要求や追及が行われます。政府提出法案などの内容は、与党の部会で実質的に決定するのですが、これは非公開で行われています。

政治主導がうまくいっていないことの2番目として、政策課題に優先順位をつけることを取り上げます。かつて「官僚主導」と言われた政治過程は、各省官僚と与党各部会がそれぞれの分野を拡大するものでした。しかし経済が停滞すると、どこかを削る必要が出てきました。これは官僚にはできないことです。政治家による利害調整、優先順位付けができていない事例と、うまくいった事例を説明します。

連載「公共を創る」第206回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第206回「政府の役割の再定義ー内閣の政策立案と「官邸主導」」が、発行されました。政治主導がうまくいっていないことについて、「官邸主導」の問題を議論しています。

首相が新しい発想で新しい政策に取り組むことは、重要なことです。しかしその際には、唐突に指示を出すのではなく、しかるべき手順を踏んで政策に作り上げることが必要です。
中曽根康弘内閣の臨時行政改革推進審議会、橋本龍太郎内閣の行政改革会議など、歴代首相は、内閣の方向性を考えるための大きな視野の「知恵袋」を持ち、そこでの議論を通して自らの内閣の方針とその策定過程を国民にも開示してきました。

省庁改革では、重要事項を審議するために「重要政策に関する会議」をつくりました。一般的な審議会では、首相や大臣が外部有識者から成る審議会に審議事項を諮問し、報告を受けます。しかし重要政策に関する会議では、主に首相が議長になって審議を進めるのです。
経済財政諮問会議はその一つで、経済財政政策に関する重要事項について調査審議します。小泉純一郎首相がこの会議を活用し、毎年夏に「骨太の方針」を策定することで、官邸主導の予算編成と政策決定を行いました。
その後も経済財政諮問会議は開かれ、「骨太の方針」はつくられていますが、かつてほど活用されていないようです。

官邸主導の問題の一つは、首相が次々と指示と目玉政策を出すのですが、それぞれの政策の評価がなされないままに、次の政策が提示されることです。
しばしば、首相が記者会見で目玉政策を発表したり、会議の場で指示を出したりする映像が流れます。それは、首相の政治主導ぶりを見せる良い方法ですが、政治主導は指示を出すことだけでなく、それが適切だったか、そして良い成果を生んだかによって判断されなければなりません。