カテゴリー別アーカイブ: 社会と政治

社会と政治

社会の変化

26日公表によれば、3月の完全失業率は4.5%、前月に比べ0.2%の改善です。平成16年度の失業率は4.6%です。14年度の5.4%を最高にして、改善されています。地域別に差がありますが、問題は若年者です。15~24歳の失業率は、男性11.6%、女性8.7%です。10人に1人は、多いです。
諸外国比較では、イギリス2.7%、韓国3.5%、アメリカ5.2%、フランス10.1%、ドイツ12.0%だそうです。何か納得できないところもありますが。
16年度事業所統計が、27日に発表になりました。5年前に比べ、事業所数は減っています。新設より、廃業の方が多いのです。一番多かったのは、平成3年でした。
分野別では、大幅に増加しているのは、情報通信17%、医療福祉14%で、大幅に減少は、製造業15%、金融保険14%です。従業者数も同じ傾向です。近年の社会の変化を表していますね。
もう一つ、目だった数値を紹介します。パート・アルバイトの占める割合です。ハンバーガー店92%、飲食店が80~70%台で並んでいます。本屋が77%というのも、なるほど。

社会と政治

24日の朝日新聞は、「シリーズ社会保障:選択のとき」で年金を取り上げていました。年金・医療・介護の3つを合わせて考えるべきだという主張です。もっともなことです。わかりやすかったですよ、板垣記者。
25日の日本経済新聞「経済教室」は、日本経済研究センターの社会保障研究報告を載せていました。ここでも、年金・医療・介護の全体像を把握すべきとしています。
そして、世代間の不公平を指摘しています。さらに、2004年の改革で、年金財政は改善されたが、それは「これから年金を受け取る世代が、支払う保険料に比べ受け取る年金額を引き下げる形で」なされたことを明らかにしています。
「今後行われる制度改正については、これまで同様、財政の維持可能性に重きが置かれることは間違いない。しかしながら、同時に世代間の不公平是正にも重点が置かれなくては、社会保障制度を支える世代から支持が得られず、『制度の維持可能性』が危機に直面することになろう」

会社社会の終焉

24日の朝日新聞は、「幸せ大国-未来を選ぶ」第4回「変容する会社社会」を載せていました。戦後日本の多くの企業は、終身雇用・年功序列・企業福利で社員を取り込みました。このほかにも、退職金制度・子会社への天下りなども、会社への取り込みを支えました。これが成り立ったのは、右肩上がりの経済成長と、各業界と国内での「鎖国」です。職員側も、それが居心地良かったのです。もっとも、会社の文化に同調しない人にとっては、苦痛だったでしょうが。
経済成長がなくなったら、そして異業種や諸外国との競争が始まると、これらの制度は成り立ちません。また、職場を変えようとする若者にも、不利な制度です。
「会社人間」が成り立たなくなっている日本社会で、最後に残っている会社人間制度、また最後までしがみついている会社人間が、公務員だという指摘があります。そこには競争がないから、そして過去の栄光にしがみついているからです。

人口減少

少子高齢化・人口減少は日本だけでなく、いくつもの国で大きな問題になっています。ロシアでは人口が減少し、平均寿命は60歳を切っているそうです。中国は、国策として産児制限をしています。先進諸国は、子育てに力を入れています。イスラエルでは、アラブの「子沢山」に負けないよう、出産を奨励しています。ここに、少子化に対する政治対応の差が見えます。
中国では老後の保障制度が十分でなく、急速な高齢化・経済発展・富裕層と農民や都市の貧困層との分裂が問題を大きくします。ブッシュ大統領は、年金改革を1番目の課題としました。
日本経済新聞の連載「人口が変える世界」、同じく「ゼミナール・人口減少と経済」などをお読みください。

共同体の成員とは

宮島喬著「ヨーロッパ市民の誕生-開かれたシティズンシップへ」(2004年、岩波新書)が、興味深かったです。ここで言うシティズンシップは、国籍とか市民権(自由権・政治的権利・社会保障の権利)ではなく、「共同体に参加する」ということです。
これまでの主権国家システムでは、「国籍」があることを前提として、納税や兵役の「義務」を果たすことで「成員資格」が与えられ、「参政権」が認められ、「社会保障」が受けられました。しかしそれだけでは、共同体に参加しているとはいえず、言語や歴史・習慣・宗教といった「共同体への参加」も重要です。たとえば、かつて「女子ども」は一人前でなく、今も「外人さん」は日本社会の完全な成員ではありません。
ヨーロッパは、この問題に正面から取り組んでいます。主な原因は、移民の増加です。かつてヨーロッパはアメリカ大陸へ移民を送る方でしたが、今や受け入れ国なのです。それは、旧植民地からの移住者、労働力の受け入れ、難民の受け入れです。その際に、まず誰に国籍を与えるかという問題と、次に国籍の有無にかかわらず「共同体への参加」をどうするかの問題があります。後者については、去年ヨーロッパに行ったとき感じたことを、【異質なものとの共存】として書きました。
いずれ、日本も直面する問題だと思います。日本ではまだ大きな問題になっていませんが、それは実態はあるのに目をつむっている、とも言えます。旧植民地からの移住者については、在日の人がおられます。労働力としての受け入れては、南米からの日系人などのほか、「不法滞在者」がいます。難民については、「受け入れない」という扱いがあります。すでに「単一民族神話」は崩れているのですが、誰にまで国籍を与えるかという問題、どのようにして日本社会に受け入れるかの両方の点で、まだ覚悟はできていないようです。
「内政派の岡本が、なぜヨーロッパの市民権を・・・」と思われるかもしれません。しかし、日本社会にどっぷり浸かっていると気づかない問題を知ることは有益ですし、「地域社会とは何か」を考えるいい教材だと思います。もっといろいろ勉強になることが書かれていますが、それは本書をお読みください。