「報道機関」カテゴリーアーカイブ

朝日新聞土曜夕刊廃止

8月2日の夕刊から、朝日新聞の土曜日夕刊が廃止されました。
時代の流れでしょうね。地方紙では、夕刊そのものがなくなっています。
現在の新聞は、速報性(ニュース)では、インターネットにかないません。それより、より詳しい内容や解説に意義があります。すると、朝夕二回配達する必要はないでしょう。各紙とも、夕刊は文化などに重点が移っています。

いずれ、夕刊自体がなくなるのでしょう。
従業員のことを考えると、朝刊を廃止して夕刊だけにする方が良いのでしょうが。読者は、やはり朝一番に新聞を読みたいでしょう。

学生はなぜ新聞を読まないか

大学に出講した際に、学生たちに新聞を読んでいるかと聞き、読み方と意義を教えています。ところが、最近の学生は新聞だけでなく、インターネットのニュースも読んでいないようです(私の限られた見聞ですが)。

それを話題にしたら、ある記者から、有力な説明を教えてもらいました。
「学生がなぜニュースを見ないか。それは、友達との会話に必要ないからだからです」
なるほど、納得です。

でも、選挙など、政治の動きや政党の主張などは、どのようにして得ているのでしょうか。無関心なのでしょうか。
スマートフォンが普及して、多くの人が簡単に情報を得ることができるようになりましたが、その情報は偏っています。関心のあることしか見ない、また機械が関心あるものを選んでくれるので、さらに狭くなります。

私は、子どもの頃は、社会勉強と思って新聞を読みました。官僚になってからは、社会の情報を得る手段として、読みました。これは、業務の一環でもありました。官僚は卒業しましたが、社会の変化を知りたいと思って、読んでいます。
学生たちは、「社会を知る」という意義を知らないのでしょうね。講義の際にそれを説明すると、納得する学生が多いです。
どのようにして、若い人たちに、新聞を読む意義を教えれば良いのでしょうか。新聞社の皆さん、販売促進も兼ねて、考えてください。

主張逆張りの目新しさ

7月1日の朝日新聞オピニオン欄「荒れる選挙」、小林哲郎・早稲田大学政治経済学術院教授の「「逆張りエンタメ」に需要」から。

・・・ 日本人は中国やロシアのような権威主義国家の非自由主義的なナラティブ(正当性を主張する物語)に影響されやすい。そんな傾向が18~79歳の3270人を対象とするオンライン調査実験で浮かびました。他の研究者と共同で3月に論文を発表しました。
例えばロシアのウクライナ侵攻に関する設問では、「一方的な侵略であり重大な国際法違反だ」という自由主義陣営の「物語」よりも、「NATO(北大西洋条約機構)が中立の約束を破りウクライナへの影響力を拡大したのが原因」というロシアに都合の良い「物語」の方が、説得効果が高いという結果が出ました。
その理由は逆張りの目新しさにある、と考えています。つまり、社会の主流の価値観と異なる物語は新鮮で面白く感じられ、関心を引くということです。
だとすれば、選挙でも陰謀論などを唱える候補者が説得力を持ってしまう可能性は十分にあるでしょう。

ネット配信のドラマは非常に展開が速く、どんでん返しをたくさん入れて視聴者の関心を引きつけます。国内選挙の実証研究はこれからで、あくまで仮説に過ぎませんが、政治も最近エンターテインメントとして消費されている側面があり、ドラマのような展開を求める需要があるのではないかとみています・・・
・・・民主主義はまず法律があり、それに照らして理非が判断される演繹(えんえき)的なシステム。予想外の結論は出にくいです。「既得権益への挑戦」という物語に対抗すれば、既得権益側の物語とみなされる。情報を読み解く力を高めるといった個人の努力を求めてもなかなか響かないでしょう。「面白くない」ものに関心を持ってもらうのは難しい。民主主義はソーシャルメディア時代には不利なのです・・・

新聞社の選挙報道

6月30日の日経新聞に「有権者へ必要な情報を積極的に 選挙報道で本社指針」が載りました。
・・・日本経済新聞社は7月の参院選を前に、選挙報道に関する指針をつくりました。SNSの影響の大きさを踏まえ、より積極的に有権者が必要とする情報を発信すると確認しました。正確かつ公正な報道は民主主義の基盤です。選挙期間中か否かを問わず、届けるべき情報をお伝えします。
2024年にはSNSの影響が色濃く出た選挙が相次ぎました。兵庫県知事選や名古屋市長選、東京都知事選です。いずれも報道のあり方を考え直す契機になりました。
SNSが選挙に及ぼす力には長所と短所があります。個人が手軽に意見を表明し、世論を喚起できる点は間違いなく長所でしょう。一方で真偽が不明な情報が拡散し、それを判断材料に選挙結果が左右される場合は、民主主義が脅かされます。
後者の短所が表面化したのが兵庫県知事選でした。選挙後も県政の混乱は続き、報道機関には「十分な判断材料を提供しなかったのでは」との声が寄せられました。

私たちは事実を取材して確認し、伝えることが本分です。選挙の報道でも変わりません。それが不十分ならどうすべきかを指針で示しました。
3つのポイントがあります。まず、選挙期間中でも原則として通常の報道の判断基準に照らして方針を決めます。公職選挙法148条や過去の判例、日本新聞協会編集委員会の見解でも、選挙期間中の報道の自由は保障されています。その点を再確認し、積極的に大事な情報を届ける姿勢を明確にしました。
次に、報道の公正は「量」ではなく「質」で担保します。行数や文量、記事の大きさで政党や候補者の情報をそろえることは本質的な対応とはいえません。候補者の不祥事や問題発言も、有権者の判断に関わるなら丁寧に伝えます。
もう一つは、選挙の公正を害する行為は厳しく批判的に報じます。法に抵触する疑いがあったり、公序良俗に反したりする活動は、選挙期間中でも問題点を指摘して記事にします。真偽不明の情報が大きな影響を与えるなら、事実関係を検証する「ファクトチェック」などを実施して報道します。
一方でSNS空間では過激な発信で関心を集めて収益を得るような動きがあります。報道がそうした活動を助長しないかどうかも慎重に検討します。読者が求める報道機関の責務を果たせるよう、取り組んでいきます・・・

7月9日の朝日新聞には「選挙中も積極的に報道します 新聞各社、相次ぎ新指針発表」が載っていました。
・・・新聞各社の選挙の報じ方が変わりつつある。参院選前に相次いで選挙報道の指針を設けて「過度に公平性を重視せず、積極的に報じる」などと宣言。ファクトチェック体制を拡充する社もある。選挙中に候補者による選挙妨害事件が起きたり、SNS上で真偽ない交ぜの情報が錯綜したりした際に、「選挙の公正」を重視した結果、報道が十分ではなかった反省が背景にある。
全国紙では朝日、毎日、日経が5月以降選挙報道の指針を発表し、複数の地方紙も6月以降続いた。

朝日新聞は昨年12月に「選挙取材・報道に関するガイドライン」を作った。SNSが選挙結果に大きな影響を与えるようになったことや、昨年の兵庫県知事選に際して、読者からの「有権者に必要な情報が届いていない」との声を受けた。
このガイドラインを元に今年6月、新たにつくった「選挙報道の基本方針」では、選挙期間中も、選挙報道は基本的に自由だという原則を再確認。その上で、公平性に一定の配慮をしつつ、政党や候補者が誤情報を発信したり、問題行動をしたりした場合は積極的に報じるとした。
SNSで拡散した誤情報や真偽不明情報については、誤っているかや根拠がないかどうかなどを裏付け取材した上で報じるとした。こうした報道を強化するため、ファクトチェックに取り組む編集部も発足させた。
また、記者が誹謗中傷を受けた場合は法的措置を含めた相応の対応をとるとした・・・

新聞の取扱説明書

新聞を読まない人が増えています。
先日の立命館大学での講義の際にも、新聞を読むことの意味を説明しました。100人のうち3人ほどが紙で読んでいました。私は彼ら彼女らに向かって「私が採用担当だったら、あんたたちを採用するよ」と褒めました。スマホで読んでいる学生は、かなりいました。

新聞を読まなくても、ニュースはスマートフォンなどで簡単に手に入ります。というか、向こうから伝えてくれます。かつては、ニュースを伝えることの競争相手は、テレビとラジオだけでしたが、多くの人がスマホを持つようになって、どこでもいつでも見ることができるようになりました。その点では、新聞は勝てません。しかし、新聞の主な機能は、早くニュースを伝えることではありません。
新聞紙面の機能は、世の中にある膨大なニュースから重要なものを選択して、並べてくれることにあります。もう一つの効果は、関心のない記事も目に入るということです。何度も同じことを言っています。継続は力なり、という見方もあります(苦笑)。「新聞の役割

立命館大学では、私は口頭で学生に説明しました。何かよい資料があれば使いたいのですが、適当なものがありません。新聞社の努力が足らないと思います。新聞の機能を自明のこととして、宣伝が足らないのです。ほとんどの商品に、「効能書き」や「取扱説明書」があるのに。