カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

講演のコツ

このホームページを見てくださっている方から、「引用しました」との連絡をいただきました。それぞれに、人前で話すことに苦労しておられますね。私も、毎回満足できない結果に終わっています。あそこは、こうすれば良かった。ここは切り捨てるべきだった、とか。
事前準備の際には、これもしゃべりたい、あれもしゃべりたいと、欲が膨らみます。資料をたくさんつける付けるのも、時間不足の原因です。「時間が余ったらどうしよう」と心配になるのです。でも、時間が余ったことなど、ないのです。
若いときは、事前に予行演習をしましたが、最近は、ずぼらになって・・。私は、講演の際には、必ずレジュメを配ります。全体像をつかんでもらうためです。また、今どこをしゃべっているか、観客にわかってもらうためです。そして、手持ちのレジュメには、しゃべる詳細のメモのほか、おおむねの時間配分を、15分単位で書き込んであります。ところが、この目安を守らないので、時間が足らなくなります。
その点、大学の授業は次回があるので、気が楽です。また授業では、一番大事なことはレジュメに載せません。それは黒板に書いて、学生に書き取ってもらいます。これが、学生の居眠り防止・大切な点を覚えてもらうコツです。
講演会は、なかなか起承転結、序破急には、なりません。最近の講演会では、最初の5分間で笑いから入る場合と、最初の5分間で結論を話す場合とを、使い分けています。失敗するのは、しばしば前者の場合です。笑ってもらえなかったり、そのまま脱線するのです。
「力が入って血圧が上がっているな」と自分で気がつく場合も、失敗が多いですね。しゃべるには、ある程度電圧が高くなければ元気が出ませんが、自分で興奮していては冷静に話すことができません。しゃべり手の電圧と聞き手の受容度は、ある程度までは比例しますが、それ以上になると乖離するようです。観客の表情を見て、うまくかみ合っているのがわかると、調子が出ます。この時は、うれしいですね。
うまくいかないときは、落ち込んでしまいます。帰りの新幹線の中で、しばらくして落ち着いてから、「ここは受けたな」とか「ここは、思ったほどは受けなかったな」「これは関心を持ってもらえないか」と振り返り、次への反省材料にします。でも、次回また失敗し・・。
「匿名の人は相手にしない」ことにしていますが、実名を名乗ってのご連絡だったので、取り上げました。

人に頼まれたら

今日の教訓。人にものを頼まれたときの反応、3種類。
1人は、喜んで引き受ける人。2人目は、いやがる人。3人目は、いやなふりをして、もう一度頼まれたら嫌々引き受ける人(本当は引き受けたいのに)。
あなたは、どれですか。また、あなたが頼む側だったら、どのような反応がうれしいですか。(2007年6月26日)

26日の「頼まれたとき」の記事について、何人かのひとから意見がありました。
1 何か、不愉快なことがあったのですか。
→ちょっとね。でも、そんなことでは、HPには書きませんよ。
2 えー、引き受けない人がいるのですか。かつては部下に、「ハイ」か「わかりました」しか、返事は許されなかったじゃないですか。
→そうでしたね。最近は「はい」という返事をもらえる指示しか、部下にしてません。気が弱くなりました(笑い)。厳しくしかれる部下がいるのは、幸せなことです。
若いときに、「先輩と上司にはいくら抵抗してもいい、部下には厳しくするな」といわれたことを、思い出しています。
3 私の職場は人間関係が難しく、ハイと言いたいのですが、一応いやなふりをして相手の出方を見ています。
→その時は、相手もあなたの出方を見ていますよ。「あいつは、あほか」と言われるくらい、何でも引き受けなさい。
4 岡本審議官は、難しいことを頼まれたら、どう答えているのですか。
→はい、相手次第です。気心が知れた方からの依頼なら、難しいことを承知で頼んでおられるのですから、「これとこれが難しいですが、ご承知ですよね。では、できる限りやってみます。だめなら、早めに報告します」。
一見さんなら、「はーい、できる限りやってみますわ。でも、難しいでっせ」と答えます。たぶんそのとき、私の顔には、「無理です」と書いてあるのでしょう。

私たちの仕事は、予測可能性、それも人間関係次第

今週も、怒濤のような5日が過ぎました。「職場で残業はしない」と宣言しているのですが、諸般の事情により、2日もやってしまいました。中間管理職は、自分の時間管理ができないこともあるのは、仕方がないですね(言い訳です)。めどが立たないうちに遅くなってしまい、おかげで1キログラムも減少できました(とほほ)。でも、藤田参事官チームの支えのおかげで、今週分はまあまあ乗り越えることができました。ありがとう。
「いつまでに、何をしなければならない」ということが分かっていれば、あとは簡単です。それに向かって、段取りをそろえ、部下に指示をすればいいのです。
次に重要なのは、参加者との関係です。関係者に対しどこまでコントロールできるか・影響することができるかです。自分ですべてを「仕切る」ことができれば、何も悩むことはありません(その代わり、責任はすべて本人に帰することになりますが)。
関係者とは、通常、上司、部下、交渉相手です。それぞれに人間関係ができていれば、あるいは予測可能な相手なら、話は早いです。早い目に相談に行くとか、多分こう出てくるだろうから、こう答えようと演習ができます。相談しても無駄とわかっていれば、出たとこ勝負でいく・正面から激突するとか、その前に外堀を埋めておく・応援団をつくっておくとか、対策が立てられます。
最後の場合のように、「どうせだめだから」という場合でも、そのような予測さえ立てば、悩むことはありません。開き直ればいいのです。困るのは、予測の範囲を超えるとき、とんでもない方向から弾が飛んでくる場合です。通常の難しい案件は、交渉相手が敵です。これは最初から分かっていることです。だから、手強い敵でも困りません。困るのは、後ろから、横から弾が飛んでくる場合です。

アネゴとお局様

10日の日経新聞夕刊は、「アネゴ輝く」として、仕事ができ、後輩から慕われるベテラン女性を、従来のお局様と比較していました。なるほどと思うことも多いです。私も、日ごろの行いを反省してます、はい。
でも、ベテラン男性職員にも、仕事ができかつ慕われる先輩と、きらわれる先輩がいますが、それに対応する言葉はないようです。なぜ女性の世界では、お局様とアネゴという概念=言葉があるのに、男性にはないのでしょうか。

イノベーション

日経新聞経済教室の27、28日はイノベーションでした。藤本隆宏教授は、次のように主張しておられます。
マスコミのもの造り報道は、感動的な話や良い映像が撮れる伝統的製造現場の名人芸に集中しがちだが、もの造りが日本経済に与える影響は、それよりずっと広い。「開かれたもの造り」の根幹は、「もの」ではなく「設計」にある。もの造りとは、ものをつくることではなく、設計情報を「ものにつくりこむこと」である。生産現場だけでなく、開発も購買も販売も含まれる。また、製造業の枠も超える。付加価値の根源は設計情報にあり、それが有形の媒体に転写されれば製造業、無形の媒体に転写され顧客に発信されればサービス業になる。
日本経済のうち、もの造り組織能力や生産性で世界をリードするのは、製造業を中心に国際競争にさらされてきた「競争貫徹部門」だが、それはおそらく10数%にすぎない。大きなウエートを占めるのは、非製造業を中心に規制や保護、談合などで国際競争力を欠く「競争不全部門」である。この部門の大幅な生産性向上には、規制緩和・民営化・構造改革だけでなく、組織能力の注入が大事である。IT導入の必要性もいわれるが、ITという固有技術だけでは、競争優位は得られない。ITが生産性に結びつくには、ITを使いこなすもの造り技術が必須である・・・
納得しますね。官庁という最大の「競争不全部門」「サービス業」にいると、絵にはならない技術・ノウハウの重要性がよく分かります。管理職の能力の差や、組織が持つ無形の能力の違いは大きいです。ところが、これはマニュアル化、文書化されず、口伝と伝統で引き継がれてきたのです。「明るい係長講座」では、その重要性を指摘しました。
「人を育てる」といった人材育成論は、本屋にもたくさん並んでいます。しかし、それは個人の能力向上に着目したものであって、組織の側・仕組みとしての能力の観点からは、書かれていないのです。「ほう・れん・そう」だけでは、だめです。将来、時間ができたら、行政のあり方論と関連させて、官庁部門での「開かれたもの造り」技術を書いてみたいです。後輩たちに無駄な苦労をさせないためにも、国民にもっと効果的な行政サービスを提供するためにも。