「災害復興」カテゴリーアーカイブ

行政-災害復興

南三陸町、仮設商店街の移設

南三陸町の仮設商店街「さんさん商店街」が、本設商店街に移設しました。NHKが特集しています。ご覧ください。
東日本大震災で、初めて、国が仮設の商店や工場を無償で貸し出しました。すべてを流された町では、買い物をする場所もなく、働く場所もなかったのです。この政策転換(事業の復旧には国費は入れないから、国費を投入するへ)は、大英断だと思います。この支援がなければ、復旧は難しかったでしょう。

私も何度も行きましたが、きらきら海鮮丼は、おいしいです。もっとも、記事を見ていただくとわかりますが、ここまでも、そしてこれからも、平坦な道ではありません。

被災地での企業の貢献

河北新報が、連載「トモノミクス」を続けています。3月8日はCSR(企業の社会的責任)を取り上げていました。
トヨタ財団は、このページでも紹介しているように、災害公営住宅でのコミュニティ再建を支援しています。キリンは、多額の基金を積んで、産業振興をしてくださっています。これも、何度か紹介しました。
家庭教師のアップルの、無償学習サポートも紹介されています。

ありがとうございます。ここに取り上げられた会社以外でも、たくさんの会社が様々な工夫をしています。かつては、企業の支援は、義援金や物資の提供でした。それが、今回の東日本大震災では、企業の強みを生かした支援になっています。
お金と物資だと集計は、簡単だったのです。経団連が各企業の支援を取りまとめてくれましたが、お金と物資以外は集計が難しかったです。性質が様々で、足し上げることもできません。

河北新報のような記事は、ありがたいです。このような支援がなされていることを、被災者、国民、さらにはほかの会社にも知らせることになります。
拙著『東日本大震災 復興が日本を変える』では、藤沢烈さんに企業の支援を、青柳光昌さんにNPOによる支援を解説してもらいました。

被災市町村長の評価、8割が進んでいる。

今日3月7日の朝日新聞は、被災42市町村長のアンケート結果を載せていました。2013年から毎年行っているものです。
「復興は順調に進んでいますか」という問に対して、「進んでいる」「どちらかと言えば進んでいる」が32人、「進んでいない」「どちらかと言えば進んでいない」が7人でした。約8割の首長が、進んでいると答えています。進んでいない方の内訳は、岩手県が1人、宮城県が2人、福島県が4人です。
2013年では、進んでいる方が22人、進んでいない方が19人で、ほぼ半分でした。その後、順次、進んでいる方が増えてきました。また、復興状況は何点か(100点満点で)という問もあります。
これは、復興庁への採点であり、現場で取り組んでおられる首長さん自身の採点でもあります。ここまで来ることができました。関係者の方にお礼を言います。

「職員派遣などこの6年間の国の人的支援は十分でしたか」という問には、十分が25人、不十分が16人です。国も他の自治体も、今回初めて本格的な職員支援をしたのですが、それぞれに事情があり、すべての要望にはお応えできていません。

読売新聞も、42市町村長へのアンケート結果を載せています。
復興完了の見通しについては、すでに完了と4年以内に完了するがあわせて24人です。5年以内に完了する7人をあわせると、31人が5年以内に完了するとみています。これも、約8割の町で完了が見えてきました。
町の中心部が流された陸前高田市、山田町も、5年以内で完了するとみています。石巻市、南三陸町、気仙沼市、釜石市も4年で、女川町は3年以内に完了です。
他方で、5年から10年かかるが4人(岩手県1人、福島県3人)、見通せないが7人(福島県内)です。原発事故避難区域は、避難指示が解除されてから復興に入るので、まだまだ時間がかかります。

遅れているものを聞いたところ、朝日新聞では、農林水産業、商工業、道路と鉄道、雇用、住まいの順です。読売新聞では、防潮堤、農林水産業、鉄道と道路、住まいの順です。(3月8日加筆)

住民と作る復興計画、南三陸町長

3月7日の日経新聞「私見卓見」は、佐藤仁・宮城県南三陸町長でした。
・・・6年という年月がかかったが、「よくここまで来たな」というのが正直な感想だ。もちろん、仮設住宅での生活を余儀なくされている町民の方にとっては「何でこんなに時間がかかるのか」との思いもあるだろう。しかし「二度と津波で命が失われない町を作る」という考えを実現するのは、国の全面協力があってもたやすいことではなかった。
復興計画を作るにあたって重視したのは、町民の意見を取り入れることだ。繰り返し、繰り返し住民説明会を開いた。阪神大震災の際には行政主導で短期間で計画がまとまっただけに「住民の意見を余りにも聞き過ぎると計画策定が遅れる」との批判の声もある。しかし町をつくり直すには町民の意見を反映させないといけない。それが真の意味での復興だ・・・
原文をお読みください。

朝日新聞に登場しました。政治の役割

朝日新聞が3月5日から「首長と震災」の連載を始めています。5日は伊澤史朗・福島県双葉町長、6日は阿部秀保・宮城県東松島市長でした。
阿部市長は発災直後から、すばらしいリーダーシップを発揮して、復興を進められました。がれき片付けについても、がれき置き場を性質別に分類して、市民が運ぶ際に分別するようにしました。たたみ、木材、燃えるゴミ、燃えないゴミ、金属など。混ざっていると、その後で分別する手間が大変なのです。金属類は、売るとお金になります。初めて視察に行ったときは、その手際よさに驚きました。かつての経験があったとのこと。他の市町村では、そこまで気が回りませんでした。この経験は、その後の災害、例えば熊本地震などでも生かされています。
また、新しい町での町内会作りについても、このホームページで、取り上げたとおりです。これらのことも、書いてほしかったですね。

さて、その記事の中に、私の発言が紹介されています。
・・・被災3県では新しいまちが出現しつつある。高台移転と土地のかさ上げによる宅地造成は1万9385戸が計画され、3月末までに69%が完成する。災害公営住宅も含めると、投じられた国費は2兆円。復興庁の前事務次官の岡本全勝(62)は「地元に住み続けたいという情念と、経済合理性は比較不能。それを決断するのが首長の仕事だ」と語る・・・

復興の過程で、時々質問を受けました。「このような大規模な工事をして防潮堤を作ったりや高台移転などせずに、住民に安全なところに引っ越ししてもらった方が、安くできるのではないか」とです。そのような考え方もあります。しかし、ふるさとで暮らしたい、もう一度町を復興したいという住民の気持ちと、外部の人が考える経済合理性とは、同じ尺度で判断できない選択です。諸外国ではこのようなふるさとを復興するのではなく、他の土地に移住する、あるいは国は支援せず住民に任せることが多いようです。これは、このホームページでも書いてきたように、日本の国柄でしょう。
それを前提として、多額の税金でふるさとの復興を支えるのか、引っ越しを勧めてそれを支援するのか。これは、官僚が決めることではないでしょう。民主主義国家、日本国憲法の下では、「比較不可能な複数の価値」に序列をつけるのは、政治家の仕事です。国民にそのために増税をお願いすると判断するのも、政治の役割です。もちろん、任せてもらえれば、官僚が「合理的」と考える判断をします。また、方針が決まれば、最も合理的な方法で工事を行います。
私の発言は、正確には「それを決断するのは政治の仕事だ」です。