カテゴリーアーカイブ:政治の役割

塚田富治著『政治家の誕生』

2018年1月24日   岡本全勝

塚田富治著『政治家の誕生 近代イギリスをつくった人々』(1994年、講談社現代新書)が勉強になりました。
政治家(statesman,politician)という言葉が、16世紀イングランドで使われ始めます。政治家が政治の舞台に登場したのです。暴力でなく言葉で統治する時代が始まったのです。国王の部下として、統治を行う。そこには、議会の同意を取り付けなければならないという、イングランド特有の制約条件がありました。
本書では、トマス・モア、トマス・クロムウェル、ウィリアム・セシルなどを取り上げています。
この時代は王政ですが、政治とは何か、政治家の役割・技能は何かを考えさせる良い本です。

塚田富治著『近代イギリス政治家列伝ーかれらは我らの同時代人』を読んで、この本も読もうと思いました(2017年12月24日の記事)。『政治家の誕生』の方が、先の時代だったのですね。
それにしても、このような古本が直ちに手に入るアマゾンは、便利です。

マキャヴェッリ著『ローマ史論』

2018年1月22日   岡本全勝

マキャヴェッリ著、永井三明訳『ディスコルシ ローマ史論』(2011年、ちくま学芸文庫)を読み終えました。文庫本ですが、700ページを越える大部なものです。寝る前の布団の中で、2週間かかりました。
マキャヴェッリは「君主論」が有名ですが、この「ローマ史論」も有名です。「君主論」が君主制を期待するものに対して、「ローマ史論」は共和制を期待しています。戦争論も含まれていますが。多分、分厚すぎて、君主論ほどには引用されないのでしょう。
古代ローマを基に、共和制を維持し腐敗させないための方法を論じています。それは、放っておくと衆愚政治になる民主政を善きものに保つために、現代にあってもそれなりに有用です。

以前から読みたいと思っていたのですが、ようやく達成できました。しかし、2週間もかけて読んでいると、最初の方では何が書いてあったのか忘れてしまいます。
「こんな分厚いものを、よく製本できたなあ」と感心します。3分割しても、1冊は200ページを越え、十分な厚さになると思うのですが。もっとも、文庫本だから、寝転がって気楽に読むことが出来たので、これが大きなハードカバーの書籍だったら、読めなかったでしょうね。

砂原教授、地方議会選挙制度改革

2018年1月18日   岡本全勝

1月17日の朝日新聞に、砂原庸介・神戸大学教授が「選挙制度改革、まず地方議会を。多数派作れず機能不全、野党の組織作り阻む」を書いておられます。

・・・選挙制度改革と言えば、しばしば国政選挙が念頭に置かれる。しかしまず改革が必要なのは地方議会の選挙である。この選挙制度が議会の機能不全をもたらすとともに、国政での野党の統合を阻んでいるからだ。
日本の地方議会の選挙制度は、基本的に選挙区から複数名を選ぶ大選挙区制であり、有権者は1人1票を持った上で候補者を1人選んで投票する。伝統的に日本政治で用いられてきた投票方法だが、議員たちに多くの有権者の支持に基づく多数派を形成させるという観点からは、この制度は深刻な欠陥を持っている。
まずは候補者が個人として選挙を戦うために、自分と考え方が近い候補者がライバルになることだ。そのため、例えば「子育て支援」を訴える候補は、似たような政策を訴える候補より票を集めようとして差異を強調する。同じ子育て支援でも、この地域に特化しますとか、幼稚園よりも保育所に手厚い支援をしますといったアピールである・・・

・・・地方議会の選挙制度に対する現実的な代替案としては、非拘束名簿式比例代表制を挙げたい。個々の候補者への投票を政党ごとに合算して議席配分を行い、政党内での得票順に候補者に対して議席を割り当てる制度である。この制度のメリットは、得票が政党ごとに合算されるので、考え方が似ている候補者が連合を組みやすくなることである。政策の一致する候補者同士が協力することは、地方だけでなく国政でも安定した政党がつくられる基盤となるだろう・・・

的確な指摘であり、提案も現実的です。原文をお読みください。

真山仁さん「怖いものはみたくない」

2018年1月10日   岡本全勝

1月3日の朝日新聞経済面、作家の真山仁さんの発言「財政破綻 誰も言わないなら、私が言う」から
・・・怖いものはみたくない。できたら通り過ぎてほしい。「見ざる」「聞かざる」「言わざる」の3ザルですよね。お上に、よきに計らってもらえばって思っている表れでしょう。でも、そうしていたらろくなことがなかったのが、この20年ですよね。
特に東日本大震災の後、官僚やメディア、大学教授といったインテリに対して国民が嫌悪感をもってしまっていて、福島第一原発事故などに関して「だまされた」という感情がある。「もっと一生懸命言ってくれたら、気にしたのに」と思っている。本当は、スリーマイルもチェルノブイリの事故も隠されてはいないのに。
政治家も、財務省をたたいていれば自分たちの責任が転嫁される、と考えているふしがある。官僚主導が嫌ならば、政治家がもっと勉強して官僚を使いこなせばいいのに、それもできず、警鐘がきちんと鳴らされていない・・・

民主政を機能させる指導者がいるかどうか

2018年1月2日   岡本全勝

12月23日の読売新聞解説欄、塩野七生さんの「民主政 アテネの教訓。指導者 衆愚の分かれ目」から。
・・・アテネの全盛期を築いて民主政を完成させたペリクレスは、人々が発する不安の声を冷静に説き鎮め、長期的な視野に立った政治をした。しかし彼の後の指導者は、逆に人々の不安や怒りをあおり立て、戦略を欠いていく。ペリクレス後のアテネが後世、衆愚政と呼ばれることになった。
衆愚政のアテネは、政治の仕組みや有権者のレベルが以前と変わったわけではない。民主政を機能させる指導者がいたかどうかの違い。民主、民主と唱えていれば民主政が実現するわけではないの。民主政を妄信してはいけない・・・

塩野さんは、12月26日の日経新聞オピニオン欄にも、出ておられました。「失望が生むポピュリズム」。坂本英二・編集委員 の解説から。
・・・塩野七生さんは紀元前からルネサンスまで2500年に及ぶ欧州の歴史を約50年かけて書き上げた。登場する国家の盛衰や政治リーダーの栄光と失敗は、21世紀の国際社会とも共通する多くの教訓を含んでいる。
塩野さんの歴史長編はたいてい静かに始まる。民族や文化が生まれた時代背景を丁寧に紹介。だが外敵などに対抗するため個性的な指導者が現れた瞬間から、歴史が一気に走り出す。「ローマ人の物語」ではスキピオ、スッラ、カエサルら適時に適切な男たちが現れて困難を克服する。どんなに強大な帝国も、優秀な指導者を選べなければ一気に坂を転げ落ちる・・・