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明るい公務員講座

連載を振り返って10

千里の道も一歩から
初級編が35回、中級編が42回。2年間にわたる連載でした。こんなに続くとは、思っていませんでした。

毎週締めきりが来るのは、けっこうな負担でした。鞄に書きかけの原稿を入れておき、新幹線の中や仕事の合間に、思いついたことを書き、書いた文章に手を入れました。土曜日曜には、朝起きて机に向かい、文章を練りました。
水前寺清子さんの「365歩のマーチ」でいえば、「一日一歩、三日で三歩」です。書いている途中で気が変わり、大幅に書き換えることも度々ありました。すると、「三歩進んで、二歩下がる」でした。

参考になるお手本がないことは、しんどかったです。「経験者なら分かっていることばかりだ」と言われれば、その通りです。でも、それを整理し活字にすることが、難しかったのです。いろんな本を読みましたが、それらをお手本にせず、一から書き下ろしました。

さて、これで初級編(一般職員向け)と中級編(課長向け)が、ひとまず完結しました。もちろん、私の書いたことが必要な知識のすべてではなく、また私とは違った考え方もあるでしょう。私の文章を基に、付け加えてもらえればうれしいです。

単行本『明るい公務員講座』に続き、本になっていない分を単行本にするべく、作業をしています。出版のめどが立ったら、お知らせします。

連載を振り返って9(番外編)

右筆の思い
付録として、「右筆」からの一言を載せます。趣旨を変えない範囲で、手を入れてあります。

岡本先生、連載どうもご苦労様でした。
「いろいろ忙しいらしいのに毎回毎回よう書きはるなあ」と思い、「少しでも負担軽減になれば」と、お手伝いをはじめたつもりだったんですが。
部下としてお仕えした時代に「あかん」と直されたことへの意趣返しができる、という喜びも多少ありましたことを、この際に表明させていただきます。(「講座」にもあるように、突き返されたことは無くて必ず直してくれる上司なので助かりました)。

さらに言えば、この連載は、役所の中で悩んでいるひと、困っているひと、張り切っているひとたちにかなり役立ちそうだし、影響力を持ちそうだと思い、その中に自分の考えが多少なりとも盛り込めるようなら、これは右筆の役得だろうといろいろ修正案を出させていただきました。

調子に乗って、真っ赤に直してしまったこともあり、そのうち怒って「おまえにはもう見せへん」とおっしゃるのではないか、と毎回恐懼していましたが、忍耐いただきありがとうございました。

この連載がなされる数十年前から、岡本先生から身をもって教えてもらった「手練手管」を一部は真似して、わたしもやってきたつもりだったんですが。今回、全体像を見渡すと、自分が真似てきたものは「岡本学」のほんの一端に過ぎなかったのだなあ、と改めて感じ入っている次第です。

なお、江戸幕府には将軍側近の「奧右筆」という職があって、将軍に内緒で金品を受け取って関係者に手心を加える、ということもあったそうなのでございますが、わたくしにはそのようなことはございませんので、念のため申し添えます。

連載を振り返って8

文章を練る

執筆に当たっては、わかりやすい読み物とすること。抽象論でなく、私の体験に基づいた、実例を入れた実践的なものとすることを、心がけました。

これも、難しいのです。具体事例はわかりやすいのですが、応用が利きません。抽象的すぎると、実用的でありません。その中間で書く必要があります。
堅苦しい説教だと、読んでもらえません。笑い話ばかりを書くわけにもいきません。毎回、書いては消しての、くり返しでした。
読み物とすると、ややもすれば冗長になります。それを避けるために、いったん書いた原稿を削ります。毎回の原稿は、活字になったときは、原文のおおむね3分の2になっています。せっかく書いた文章を泣く泣く削除するのですが、読んでみるとその方が読みやすいのです。

内容が独りよがりのものにならないように、原稿段階で、「右筆」に意見をもらい、手を入れてもらいました。この右筆は、ある省の幹部です。彼もいろいろな経験、それも私とは違った職場を経験しています。しばしば、私とは違った見方をする人です。文章の達人でもあります。
原稿に真っ赤に手を入れられたときもあります。でも、そこがよいのですよね。感謝しています。
さらに、校閲係が手を入れてくれました。毎回、朱が入ったゲラを見ると、「なるほど」と思うことばかりでした。

仕事の敵、会議と電子メール

日経電子版に「メール10時間、会議23時間 大企業病の病巣を断て」(2017年11月22日付け)が載っています。職場で仕事の邪魔をするのは、会議と電子メールだと指摘されています。やっぱり。
・・・ベインが米マイクロソフトの労働環境分析ツールを活用してグローバル企業308社を対象にした調査では、管理職の1週間の平均労働時間は46時間。そのうち会議が23時間、メールが10時間(オンラインのチャットも含む)。彼らが会議や電子メール対応を除いた1週間のうち自分でじっくり物事を考えられるのは、約13時間しかない。
その時間も、20分おきに雑用に追われたり、新たに届いたメールに返事したりなど、中断されてしまい、集中できるわけではない。
「40年前の管理職は、1年で約1000件やりとりをしており、ほとんどは電話だった。しかし、今のエクゼクティブは1年で約3万件のメールに対応している」とガートン氏は指摘する・・・

労働時間のうち半分が会議とは、驚きです。それで物事が決まって進むのなら良いのですが。記事の後半を読んでもらうと、日本式会議の非効率が書かれています。
私が連載「明るい公務員講座・中級編」(8月21日から9月25日、職場の無駄)で、書いたとおりです。私は、それに資料作りを加えて、3つの無駄をあげました。また、それへの対処方法もお教えしました。参考にしてください。

明るい公務員講座・中級編42・完

『地方行政』連載「明るい公務員講座・中級編」の第42回「良い課長になるための教訓・総集編」が発行されました。

今回は、41回の構成をおさらいして、私が何を言いたかったかをまとめました。それは、
1 「課長であること」と「課長をすること」は違う
2 職員の延長に課長があるわけではない
3 現在の課長は、これまでの課長と違うことが求められている
です。
また、この連載(初級編、中級編)では、「職場での作法の教科書」を目指しました。
1 経験すれば身につけることですが、それを文字にすること。
2 経験談の羅列にせず、体系的に整理すること。
3 全体像を見取り図の形で示すことです。
まずは、これだけのことを知っていたら、安心して仕事ができるという「教科書」です。
今回の内容は、次の通り。
連載の構成、課長であることと課長をすること、課長と部下とは違う、先輩課長との違い、座り型のリーダーから率い型のリーダーへ、職場での作法の教科書、必要な知識の全体像。
そして、毎回末尾に付けた「今日の教訓」の中からいくつかを選んで、「良い課長になるための教訓・総集編」を付けておきました。

これでひとまず、「明るい公務員講座・中級編」の連載を終えます。上司の役割には、まだ上級編があります。それについては、次の機会にお話ししましょう。
この連載を読んだあなたが「課長をする」ことで、職員が生き生きと働く職場を作り、効率よく優れた成果を出すことを期待しています。そして、あなたがその成果をひっさげてさらに上の職位就き、力を発揮することを。(記事から抜粋)

今回で、中級編が完結です。昨年10月から始まり、13か月続きました。お付き合いいただいた読者にお礼を言います。いずれ、本にする予定です。また、「連載を振り返って」を書いています。