連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第229回「政府の役割の再定義ー英・独に学ぶ官僚の中立性確保」が、発行されました。政治主導を実現するには政治家と官僚との意思疎通が重要なのに、それがうまくいっていないことを議論しています。
今回は、人事を使って官僚を従わせることについて述べました。官僚が「左遷」を恐れて萎縮し、忖度したことが明らかになっています。 ある新聞は、「官邸主導、壊れた政官関係」「10年に及んだ人事権による『恐怖政治』」と表現しました。
官邸による人事を使った官僚の操縦について、官僚たちはどのように考えていたのか。北村亘・大阪大教授の「官邸主導の理想と現実:2019年及び2023年の官僚意識調査から見た政策形成」(台湾国立政治大国際関係研究センター「問題と研究」2025年3月号所収)を紹介しました。多くの場合は、「やり過ごす」ことで耐えたようです。
政治家による官僚人事への介入は、制度の問題であるよりも、その時々の政治家の意向による人事権の運用です。それが乱用されて、官僚制の本質がゆがめられるようなことがあっては困ります。2023年10月3日付日本経済新聞「経済教室」、藤田由紀子・学習院大教授と内山融・東大教授による「政治主導と官僚制の行方」「英、官僚の中立性を守る工夫」を紹介しました。
ドイツ連邦公務員法(連邦官吏法)第62条には、上司に助言し補佐することが、「服従義務」の一つとして書かれています。そして第63条では、職務命令の合法性(適法性)に疑義がある場合は、直属上司に報告しなければなりません。それでもなお職務命令が続き、疑義がある場合は、もう一つ上の上司に連絡しなければなりません。