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政府の仕事、民間の仕事
毎日新聞5日夕刊「時をよむ」田中均さんの「日本のガン対策から考える。すべて政府任せより民間主体の社会へ」から。
・・米国ではガン対策の重要な部分を民間が担っている。米国のガン協会はアトランタに本部を置き、全米3400か所に事務所を持ち、200万人のボランティアーが働く。ガン撲滅のための啓発や患者支援を行っているが、年間1000億円を超える活動経費は企業寄付、個人の献金によりまかなわれている。ガン患者に対するケアは最も大事な仕事である。患者は24時間いつでもガン協会のコールセンターに電話し、精神的な面を含め相談することができる。このための専門相談員は240名、教育訓練を受けた100名のオペレーターが常時待機している。このような活動は政府が行うものではない。民間資金でボランティアーの協力を得て、民間が行うものである・・
日本対ガン協会は存在するが、活動は細々としたものであり・・規模を拡張したいが、資金が集まらないという。先般成立したガン対策基本法や付帯決議にも、患者支援は盛り込まれている。ところが問題なのは、政府への支援要求一本やりであることである。
・・すべてが国家の仕事であり、税金で対策を講じてきた時代は終わった。米国は格差の大きい社会である。しかしながら同時に、民間が主体の社会であり、富裕な人々はその資金を民間の公的活動に寄付することにより、資源の再配分を行っているのである・・
個人防衛、社会防衛
6日の読売新聞「論点」、村上陽一郎先生の「はしか予防接種、社会防衛として理解を」から。
・・免疫を利用する方法は・・外から侵入する病原体に抵抗する要素を、体内に注入したり、生産させるようにするのが、この方法の本質だから、患者の治療や予防といった個人防衛に役立つことは当然である。しかし、もう一つの重要な役割は、あらかじめ人々に接種しておくことで、社会全体の中での流行を抑えることである。
だから、戦後の日本でも1948年に予防接種法を定め、ジフテリア、百日咳、ポリオ、はしか、風疹、日本脳炎、破傷風については、市町村にワクチン接種実施の義務を、国民に対しては接種を受ける義務を科し、罰則規定をも設けたのである。インフルエンザなどは追加的処置となり、結核については法律を別に定めた。その後いくつかの改正があり、76年の改正では罰則規定が削除されたために、実質上国民の義務は、努力義務になったが、このことを明示したのが94年に行われた大改正であった。この改正で、国民の接種義務は法律からは姿を消し、「接種を受けるよう努める」ことが明記された。
ごくまれに起こるワクチン接種の副作用が、患者ならまだしも、本来健康な人への生涯を通じての障害へつながることを怖れての改定であるが、これは予防接種を「社会防衛」ではなく「個人防衛」と見る、という考え方の大転換であった。そのため、世界的に見て、予防接種による社会防衛が行き届いている模範例とされてきた日本の予防接種率は、このところ著しく下がって来ていたのである・・
分権、世論がカギ
6日の朝日新聞では、坪井ゆづる編集委員らが「分権推進委員会第2期改革、地方政府へ始動。勧告実現、世論カギ」を大きく解説していました。
・・10年余りにわたって続いてきた分権は、第2期改革の幕を開けた・・新たな切り口を象徴するのが「考え方」に入った「地方政府」という言葉だ。政府関係の文書に、初めて登場した。財政面では補助金や交付金を頼り、仕事も各省の指示通りにやる自治体は、しょせんは半人前。「政府は中央政府だけだ」という霞ヶ関の常識があったからだ。それが10年余りの分権改革で、自治体も立法、行政、財政権を備えた政府を目指すという位置にまではこぎつけた・・
第2期改革の大きな特徴は、分権委と経済財政諮問会議とが二人三脚で進みそうなことだ。丹羽委員長が、両方のメンバーで連結役になる。すでに諮問会議が、政府の出先機関の半減案を提示。それを分権委で審議するレールを敷いた。国と地方の役割分担を、公務員の定員で論じる手法は具体性があり、論議の種発点になりそうだ。分権の旗振り役に、これほど内閣への発言力があった例はない。ただ、内閣には分権委の勧告を尊重する義務はない・・世論がどちらを向くのかが、カギを握る・・