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相関研究会

今日は、東大の研究会で発表してきました。「予算査定風景の変化に見る日本の行政の変化」です。内山融先生の要求は「財政による行政支配の神話を疑う」でした。数字と私の体験(ここまでは「地方財務」12月号に書きました)とジャーナリストの書いたものを基に、私見を足して発表しました。
「不平等社会日本」(中公新書)で有名な
佐藤俊樹先生が、鋭い質問をしてくださいました。研究会後も場所を変えて、3人で日本社会を議論してきました。別の世界の人と議論するのは、勉強になります。

国際貢献:政治のあり方

昨日(12月9日)、総理が、イラク復興人道支援活動のため、自衛隊と文民を派遣することを決断されました。私は、歴史に残る政治決断だと思います。拙著「新地方自治入門」第10章で、政治のあり方を議論しました。そして、日本は、この50年間「政治をしなくても済んだ」(p307)と述べました。その際に代表例として出したのが、国際社会での貢献と、国内では税負担の増です(p299)。続きは「新地方自治入門」補足・追加その2のページ

国際貢献:政治のあり方

平成15年12月9日に、小泉総理が、イラク復興人道支援活動のため、自衛隊と文民を派遣することを決断されました。私は、歴史に残る政治決断だと思います。
第10章で、政治のあり方を議論しました。そして、日本は、この50年間「政治をしなくても済んだ」(p307)と述べました。その際に代表例として出したのが、国際社会での貢献と、国内では税負担の増です(p299)。
そのうち、国際社会でのありようについては、憲法の『われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ』『われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって・・』を引用して、それについて具体的な努力をしてこなかったのではないかと述べました(p306)。
今回の決断は、具体的な(お金だけでない)国際貢献だと考えます。すると、今回の決断は、日本のあり方としては、日米安保条約・日中国交回復・PKO参加などに続く、あるいはそれを超える大きな決断でしょう。
これらを政治決断・リーダーシップと評価する(そのほかの多くの選択を決断と評価しない)のは、次のような理由です。それは、
①国民の意見が分かれている事項を決めることであるかどうか、
②その選択には合わせて「負担」を伴うことであるかどうか
ということです。
ここで私は、国民に異論がないことを決めることは、政治決断・リーダーシップとは呼んでいません。また、誰もが「痛まない」選択は、決断とは呼んでいません。
総理は記者会見で「私はイラク復興人道支援に対して多くの国民からも不安なり、あるいは自衛隊を派遣することに対して反対の意見があることは承知している」「現在、イラクの情勢が厳しい、必ずしも安全といえない状況だということは十分認識している」と述べておられます。今回の決断は、まさに私の二つの基準に当たります(総理発言は、日本経済新聞によります)。
ただし、今回の判断が「正しかったか、そうでなかったか」という評価は、別の基準で考えなければならないでしょう。また、政治的には、タイミングや発表の仕方も、評価の対象となります。

地方財政の仕組み・ミクロ

小規模過疎県の方が、1人あたり一般財源(経費)が大きくなることについて。

朝日新聞平成15年12月6日の記事「置き去りの改革・下」の補足です。図表で、県民1人あたり一般財源収入額の比較が示されています。財政力の強い(税収が多い)県の方(図表では上)が、一般財源が大きくなっているのは、簡単には次のような理由です。
①上の県の方が人口規模が大きく、規模の経済が働いて、県民1人あたりでは「安上がりになる」こと。人口1千万人を超える東京都も、人口80万人に満たない島根県でも、知事は1人です。
②道路・港湾・農業などの経費は、人口に比例せず、面積などに左右されること。それを人口1人あたりで比較すると、過疎の県ほど割高になります。
③政令市を抱えている県は、仕事の多く(道路の管理や保健所など)が政令市に移管されていて、県の仕事が少なくなっていること。神奈川県では、横浜・川崎と2つも政令市があり、それだけ県の仕事が少ないのです。(12月6日。続く)
(地方団体の財政状況が一目で)
昨日から、全地方団体の主要な財政指標が、類似団体と簡単に比較できるようになりました。総務省が作った様式で全団体が作成し、インターネットでリンクされました。「財政比較分析表」のページから、全国の市町村を見ることができます。あなたの住んでいる市町村がどの位置にあるか、クリックしてみてください。数字の見方も解説されています。
全地方団体「財政比較分析表」の特徴
1 類似団体や県内市町村との比較が一目で
「財政比較分析表」は、団体間で比較可能な財政情報を開示するものです。その市町村の主要な財政指標が、類似団体と比較してどのような位置付けにあるかを図示します。これまでも、これらの数字は公表されていましたが、それだけでは、住民が見ても良いか悪いかすぐには分かりません。そこで、類似の団体との比較をするとともに、それを見やすくすることにしたのです。
2 主要指標の他団体比較とレーダーチャート
(1)まず、地方団体の主な財政指標として、「財政力指数」など6つの指標をとりあげました(画面の左右に6つ並んでいます)。そして、人口・産業構造の似通った類似団体の最大値・平均値・最小値と、その団体の数値をグラフに図示しました。あわせて、全国市町村と県内市町村の平均値も明示することで、比較しやすいようにしたのです。
この6つのグラフは、それぞれ上の方が良好になっています。その団体の数値は赤丸で示してあるので、それが下にあるほど他団体に比べ悪い状態にあることになります。
(2)これを指数化して、真ん中のレーダーチャートに図示してあります。この図では、各財政指標が良好なほどレーダーチャートの六角形が大きくなり、類似団体との比較がひと目でわかる仕組みになっています。
3 自己分析欄
分析表のもう一つの特徴は、「団体による自己分析欄」を設けたことです。ここには、各団体が財政指標の「良し悪し」についてその理由を自己分析し、説明したうえで、指標の改善に向けた具体的な取組を記述するようにしてあります。
4 全国リンク
全団体がこの分析表を公開し、それを総務省のHPでリンクさせました。これで、住民にとって自分の住んでいる団体の財政状況が、簡単に把握でき、また評価できるようになりました。
わかりやすい財政分析表の見方を、長谷川君が作ってくれました。次のページに貼り付けてあります。
(この解説は、長谷川 淳二君の協力を得ました。2006年4月1日)
早速、「「財政比較分析表」の見方 が開けない」との声がありました。だめなときは、一度あなたのパソコンに(デスクトップにでも)保存してください。この部分を右クリックして、「対象をファイルに保存」をクリックしてください。そして保存したファイルを開いてみてください。このHPの読者は、私同様デジタルディバイドな人が多いので・・。
実は、このpdfファイルの貼り付けも自分ではできず、お師匠さんの玉岡雅之神戸大学助教授の手取り足取りでできました。ありがとうございます。(4月3日)