岡本全勝 のすべての投稿

2007.07.07

今日は9回目の授業。政治の役割と行政の役割を、講義しました。私の体験を踏まえた話です。「ギョーカイ」の人には常識で、新聞にも時折書かれますが、普通の行政学の授業では、なかなか聞けない話だと思います。

歳出歳入一体改革の役割

6日の読売新聞「論点」は、岩本康志教授の「経済財政諮問会議、将来像議論の司令塔に」でした。
・・昨年に「歳出・歳入一体改革」をまとめたことが重要だ。一体改革では、2011年度に基礎的財政収支を黒字化するために、歳出削減の数値目標を立てている。このような中期の財政計画を立案、実行することは、財政が硬直化して機動的な運営ができなくなる欠点をもつが、政府の放漫財政を抑止する利点が大きい。
諸外国ではこうしたルールの導入で財政規律を確保して、財政再建に成功してきている。一体改革の実現は、毎年の予算編成での首相や諮問会議の主導権をも制約するが、その効能について認識することが必要だ。
従来は、諮問会議が歳出削減を主導しなければ財政再建が進まなかったが、一体改革では5年分の歳出削減の数値目標が与党の合意を経て閣議決定されており、その分、諮問会議の肩の荷が軽くなったと言える・・

2007.07.04

4日の日経新聞「経済教室」は、神野直彦先生の「国・地方で税財政大再編を。消費税の配分厚く、法人事業税は外形標準化」でした。同じく読売新聞「論点」は、西川一誠知事の「税源の偏在是正、納税者の思いを形に」でした。

日本の経済成長と税収

戦後日本の社会・政治・行政を規定した要素の一つが、経済成長であり、その上がりである税収です。この表は、「新地方自治入門-行政の現在と未来」p125に載せたものを更新したものです。

次の3期に分けてあります。すなわち、高度経済成長期、安定成長期、バブル崩壊後です。
1955(昭和30)年は、戦後復興が終わり、高度経済成長が始まった年。1973(昭和48)年は、第1次石油危機がおき、高度成長が終わった年。1991(平成3)年は、バブルがはじけた年です。
第2期は「安定成長期」と名付けましたが、この間には石油危機による成長低下とバブル期が含まれています。
「65歳以上人口比率」以外は、期間の年平均伸び率です。

期 間
1955~1973年
1973~1991年
1991~2008年
名目GDP
15.5%
8.2%
0.3%
国税収入
15.9%
9.1%
△1.6%
地方税収入
17.1%
9.8%
0.7%
参考
65歳以上人口比率
7.1%
(1970年)
12.0%
(1990年)
22.1%
(2008年)
人口増加率
1.1%
0.7%
0.2%

高度経済成長が、いかにすごかったかがわかります。年率15%の成長は、3年で1.5倍、5年で2倍以上になるという早さです。池田総理が「所得倍増論」を唱えました。それは「10年で所得を倍にする」というものでした。名目値では、5年で倍になりました(もちろん物価上昇があったので実質価値では違います)。
税収も同じように伸びていますが、実はこの間に毎年のように減税をしました。累進課税なので、減税をしなければ、もっと激しく伸びたと予想されます。
石油ショック後も結構な成長を続けたこと(近年の中国や東南アジア各国の驚異的経済成長が、8~9%です)。バブル後はそれが止まったことも。
そして、参考(65歳以上人口)に示したように、高度経済成長期は日本が「若く」、社会保障支出も少なくてすみました。当時ヨーロッパ各国は、すでに10%を超えていました。現在ではヨーロッパ各国を追い抜いて、世界一の高齢国になっています。人口の増加率も、もう一つの要因でしょう。この数字は1991年と比べるとわずかに増えていますが、2004年をピークに減少し始めました。

さて、この第3期はいつになったら終わり、いつから第4期が始まるかです。景気は底を打ったのですが、何をもって第4期の始まりとするかです。この見極めは、しばらく時間がかかります。振り返ってみて、あの時点が転換期だったということがわかるのですから。(2007年7月4日)

数字を2006年まで更新しました。1991年までの数字も、見直しの結果、少し動いています。2005年の改訂時は山岸君(内閣府)の協力を得、今回は斎藤君(内閣府)の協力を得ました。(2008年4月22日)

数字を2008年まで更新しました。今回も斎藤君(内閣府)の協力を得ました。2006年までと比べて、GDPの伸び率は下がりました。国税収入伸び率が下がり、地方税伸び率が上がりました。これは、2007年度に実施された3兆円の、国から地方への税源移譲が要素だと考えられます。高齢化率も、着実に上がっています。
この表では、第1期と第2期が、偶然18年間です。第3期が2009年までになると、第3期も18年間になります。(2009年12月13日)