岡本全勝 のすべての投稿

目次詳細:第二章

第2章 行政機構と官僚制
1 日本の行政機構
1-1 行政機構
(1)国家機構
(2)各省の組織
(3)定員
(4)地方自治体
(5)「子会社」
1-2 官僚制
(1)採用・昇進・退職
(2)1種、2種
(3)事務官、技官、研究職

2 官僚制批判
①「官僚の失敗」に対する批判:もっと働け
②「官僚主導」に対する批判:出しゃばりすぎ
2-1 問題1 転換できない
社会情勢の変化に対応できない
(1)ムダを指摘されている公共事業の続行、需要予測を誤った公共事業
(2)社会情勢の変化に、臨機応変に対応できない
2-2 問題2 縦割り
(1)業界と一体の行政
(2)政策の統合ができない、政策の優先順位をつけられない、変更できない
2-3 問題3 費用対効果の疑問、目標設定の問題
(1)優秀な官僚が毎晩遅くまで残業しているが、それだけの結果がでているか。
(2)他に重要な課題があるのではないか。取り組まなければならない仕事を放置して、「不作為の罪」を犯しているのではないか。
2-4 問題4 公務員制度
(1)省庁別採用
(2)早期退職制
(3)業績管理
(4)不祥事

3 官僚制の限界
3-1 官僚制の限界
官僚の失敗は有効性の裏返し
(1)社会情勢の変化に対応できない
→これは「与えられた任務を遂行する」という、官僚制の特徴の裏返し。大胆かつ迅速な意思決定が必要なのに、継続を重視する官僚制の欠点
(2)縦割り
→これは、官僚制の「部分に特化」によるもの。官僚制の「縦割り組織」によるもの
(3)費用対効果の疑問、目標設定の疑問
→これは、与えられた目標のために全力を挙げる官僚制の結果
3-2 問題を浮きだたせた背景
(1)近代国家の官僚
(2)総合輸入商社
(3)成熟国家の官僚
(4)改革への抵抗勢力

4 責任の所在と対応策
4-1 政治の責任:見えてきた政治の役割
4-2 官僚の責任:官僚はそれに答えているか
(1)官僚の問題
(2)養成の問題
4-3 官僚制の責任:仕組みの問題
(1)縦割りの打破
(2)早期退職慣行廃止
(3)人事制度管理機構

目次詳細:第一章

第1章 日本行政の機能不全
1 問題と視角
1-1 政治と行政の分析
① 問題の提示と解決策
② 政治(行政)のイメージ
③ 仕組みと実際
④ 入力と出力
1-2 政治学と新聞
1-3 「現在日本の行政」学
(1)学問の成果は
① 政策(アウトプット)を問う分析
② 現在の日本の分析
(2)政策・アウトプットの2つの観点
① 個別政策の課題(国民の期待と行政のアウトプット)
② 仕組みの課題(政策を生み出すあるいは生み出さない仕組み)
(3)期間という要素

2 戦後日本の成功
2-1 経済的発展
2-2 行政の成果
2-3 政治の成果

3 政治と行政の評価
3-1 小泉内閣の政策課題
(1)政策課題
①小泉内閣が取り組んでいる課題
②各省が取り組んでいる課題
(2)構造的課題=国家行政機構そのものの課題
3-2 近年の政治と行政の評価
(1)政府と行政は、「新たに」何をしたか
①サービス
②行政改革
③政治改革
④経済財政
⑤外交・安全保障
(2)何をしなかったか
3-3 問題その1 民主主義:負担を問う
3-4 問題その2 国際関係:貢献をする
3-5 成功が失敗に
(1)成功の条件が失敗の原因
(2)国民の不満、社会の要請に応えているか

一橋大学での講義

2005年7月25日から28日まで、一橋大学国際・公共政策大学院で「現代行財政論」の集中講義をしました。そのレジュメを載せておきます。いずれ、「日本の行政-官僚の現在と未来」として活字にしたいと思っています。公務員改革議論の整理については、公務員改革論議をご覧下さい。
2006年度の講義は、一橋大学講義2006年度

2005年一橋大学公共政策大学院・集中講義レジュメ

「日本行政の成功と失敗」
戦後の日本は、豊かな社会を達成し、また、平等・自由・平和・安定も手に入れた。その点では、日本の政治と行政は、成功したと言えるであろう。 しかし、これだけ豊かになったのに、日本人の多くは政治と行政に不満を持ち、経済の先行きも明るくなく、社会は閉塞感に満ちている。 そして、行政改革が大きな政治課題になるほど、日本の行政は問題視されている。世界で最も有能と賞賛された日本の官僚は、今や批判の対象となった。
本講義では、日本の行政を、その出力である政策や成果という観点、その成功と失敗という観点から分析する。

大目次
第1章 日本行政の機能不全
1 問題と視角
2 戦後日本の成功
3 政治と行政の評価
第2章 行政機構と官僚制
1 日本の行政機構
2 官僚制批判
3 官僚制の限界
4 責任の所在と対応策
第3章 政治と行政
1 統治の機構
2 行政改革
3 もう一つ先の改革へ
4 政と官
5 政治の役割
第4章 地方行政と分権
1 国と地方の関係
2 分権
3 三位一体改革
第5章 転換の方向
1 成熟国家の政治と行政
2 制度と運営
3 政治にできること

一橋大学国際・公共政策大学院集中講義「現代行財政論」

今日から、一橋大学国際・公共政策大学院集中講義「現代行財政論」を始めました。9時から昼の休憩を挟んで16時まで。さすがに、延べ6時間は疲れますね。でも、約10人の院生が、熱心に聞いて、質問や指摘をしてくれるので、やりがいがあります。明日も、早朝の本業を済ませてから、出講です。(7月25日)
4日間に渡る一橋大学大学院での、集中講義が終わりました。さすがに、毎日4コマ(90分×4限)を立ちっぱなしで、しゃべるのはきついですね。でも、座っては「電圧が上がらない」んですわ。
思っていることと、それをしゃべることの間には、大きな差があります。しゃべることと、それを理解してもらうこととの間には、もっと差があります。特に今回は「日本の行政の機能不全」という、広範かつ難しいテーマに取り組んだので、院生の皆さんには理解し難かったかもわかりません。
土日をつぶして、講義ノートを準備したのですが。ノートを見つつも、このような短期間に連続して、しゃべることを紡ぎ出すのは難しいです。すみません。でも、私にとっては、このような機会でもない限り、考えをまとめるめることはできません。しんどいけれど、貴重な機会です。(7月28日)
その際のレジュメは「一橋大学での講義」に載せてあります。

三位一体改革54

19日に、地方6団体が、先日知事会が決めた国庫補助金廃止案を、6団体の案と決めました。20日には、その案を、小泉総理、麻生総務大臣ほかに手渡しました。
一方、19日には、中教審が特別部会の中間報告を了承しました。義務教育国庫負担金については、両論併記とのことです。
日本経済新聞は、20日の社説で次のように主張しています。
「中央集権的な国の一律規制による学校教育の仕組みは、さまざまな弊害を現場にもたらした。私たちは、財政や学校経営、教職員人事などを地方の裁量に任せることで義務教育の再生を求めてきたが、中教審の論議がそれに十分応えたとはいえない。」
「成熟した社会の多様な要求を踏まえて学校に託されるのは何か。『ローカル・オプティマム』(地域の最適な状態)実現へ向けたシステム作りが必要だ。」(7月20日)
21日の日本経済新聞は、「三位一体改革、郵政の陰に」「首相、反対派にらみ慎重」を解説していました。
毎日新聞社説は「義務教育費、地方の意欲生かす方法で」でした。「ここは原則論に立ち返るべきである。・・しかし、日本の教育行政は、戦後になっても、強力な中央統制が特徴だった。文部省を頂点とする上意下達の硬直的な統制が、地方の創意工夫を阻んできた例は少なくない。例えば40人学級を厳格に維持し、長い間地方独自の少人数教育を認めてこなかった」
「今回の中教審審議で『地方に移すことによって何ができるのか』などの質問が現状維持派から出されたが、逆立ちした議論だ。義務教育は、子供の居る地方の自主的な活動が本来の姿なのである。
戦後60年。文科省の親心も分からなくはないが、もう過保護、過干渉から脱してもいい。国は制度の大枠を決め、支援することを役割の中心に据えるべきだ。教職員給与半額負担を手放すことが、国の責任放棄に直結するわけではない。依存体質が染み付き、自主的活動に消極的だった地方の側が、今回は珍しく意欲を見せている。それを拒む理由はない。」
東京新聞社説は「義務教育費、税源移譲で自立の道を」でした。(7月21日)
23日の朝日新聞は、「義務教育費正反対の二人、中山文科相『地方意見、完全に論破』、麻生総務相『地方の自由度拡大を』」を載せていました。
「中山文科相は、地方6団体が制度の廃止を求めていることについて、『私から見ると完全に論破されている。主張の根拠が理解しがたい』と批判。『税源移譲されても地方によってアンバランスになる』と述べて、存続を訴えた」。
文科大臣が、こんなこと言っていいのですかね。この人たちは、いつも高等学校のことを無視します。自分の意見に都合が悪いことは。
この論理だと、「国庫負担金のない高等学校教育は、アンバランスである。しかし、文科省は責任をもたない」あるいは、「高等学校教育はアンバランスである。それでもいっこうに問題はない」ということですか。
国庫負担金を受けていない、私立学校関係者や高等学校関係者の人たちは、なぜ怒らないのでしょうか。
新聞記者さんも、大臣に「それでは高校はどうなるんですか」と、質問してほしいです。(7月23日、24日)
22日の日経新聞夕刊は、谷隆徳編集委員の「知事会、補助金削減案を提示」「総選挙も視野に議員けん制」を載せていました。「秋以降、具体化への協議が始まるが、改革の第2ラウンドには、不透明感が漂う」です。24日の読売新聞は「三位一体改革の失速懸念」「首相、族議員の刺激避ける?」を載せていました。「三位一体改革に暗雲が漂っている」です。
25日の日経新聞は、横山晋一郎編集委員が「義務教育費巡り中教審が中間報告、国と地方溝なお深く」を解説しておられました。
私の主張は、「教員の給与を国が半分負担しようがしまいが、教育内容には全く関係ない」です。(7月25日)
26日の朝日新聞は、郵政法案審議が予算のシーリング決定に影響を与えていると書いていました。それに合わせ、内田記者が「三位一体も不安」を解説していました。(7月26日)
27日に、指定都市市長会が、生活保護に関する各月の基礎数値を国に報告することを、停止することを決めたそうです(28日付、朝日新聞、読売新聞他)。厚生労働省が、生活保護費の国庫負担率引き下げを計画していることへの「対抗措置」ということです。
以下、記者さんとの会話。
記者:なぜ、事務そのものを国へ返上しないのですかね?
全:それは、国民が困るからだろう。
記:だって、生活保護って、国が本来行うべき事務でしょう。
全:そうだよ。法定受託事務のはず。
記:だったら、国に事務を返上して、国が直接事務を実行すればいいじゃないですか。
全:それも一つの考えだけどね。
記者:義務教育について、国が責任をもたなければならないと、文科省が主張しているのも、それなら教員を国家公務員にすれば良いのですよ。
全:その限りにおいては正しいけれど、地方分権にはならんわな。(7月28日)