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米国まめ日記8

メディア・オーナーシップ・ルール
 KDD、日本テレコムほか5社が、総務大臣に対して「NTT東西の第一種指定電気設備に関する接続約款の変更」認可の取消を求める行政訴訟を提起したニュースが米国にも伝わってきましたが、こちらでも今、規制当局が行った決定に対する”反発”が起きています。
 去る6月2日、米連邦通信委員会(FCC)は、テレビ、ラジオ、新聞などのメディア企業が所有できる放送局の数や、同一市場でテレビ局と新聞社の両方を所有することを制限している1996年連邦通信法に関する規制緩和を決定しました。
規制緩和の具体的な内容としては、
・ テレビのネットワークは、視聴者の45%をカバーするテレビ局を所有することができる(現行は35%)
・ ほとんどの場合、メディア企業は、上記と同じ地域で新聞社とラジオ局の両方を保有することができる
といったものです。
 この規制緩和に関する米連邦通信委員会の投票は、共和党委員3名が(委員長を含む)が賛成、民主党委員2名が反対という、俗にいう”パーティ・ライン”に沿ったものとなりました。反対票を投じた委員は、「今回の規制緩和が放送内容の多様化を阻害し、ひいては民主主義の終わりにつながる。」と述べていますが、反対者の多くも、これと同じような考えに基づいているようです。
 上記の規制緩和に対する反対の形として、今までのところ以下のようなものが見られます。
 まずは、米連邦通信委員会に対する直接的な陳情といったものです。ただ、通常このような試みは、ほとんど成功することはないようです。
 他の動きとして、「訴訟」が挙げられます。規制緩和への反対者は、米連邦通信委員会の決定をひっくり返すべく、連邦高裁(the Court of Appeals)に訴訟を提起することができます。
 おもしろいのは、立法府の動きです。上院では、現行の「35%キャップ」を維持する法案が、共和党及び民主党の有力議員により提出され、今後審議される予定です。
 また、現在審議されている歳出法案(Appropriations Bill。米国の予算は「法」によって決定されているのです。ちなみに、米連邦通信委員会の予算を決定する法律案は、the Commerce-Justice-State Appropriations Bill)に、民主党の有力議員により提案された「米連邦通信委員会が35%の旧キャップを超えるメディア企業にライセンスを認めることには予算を認めない」といったような規定が入っているようなのですが、この法案が7月16日、下院の歳出委員会において、40対25で採択されたようです。
 現時点で、今回の規制緩和の運命がどのようになるか予測は困難ですが、もうしばらく、動きを追っていきたいと思っています。

東大夏学期終了

東大での夏学期の講義が終了しました。13回は、済んでしまうとあっという間ですね。いつものことですが、始まるまでは緊張し、途中は準備でへとへとになり、終わると少しの満足と、ああすれば良かったという大きな後悔が残ります。そして、参加者がどれぐらい満足してくれたかという不安と。
今回は、本や新聞にも書かれていない、日本の行政と政治を講義しました。一方で個人体験に基づく「現実の紹介」をし、他方でそこから見える問題の構図を「理論的に分析」することです。新しい試みなので、私の思いがどれだけ通じたか、少し心配です。成績評価のための学生のリポートを見て、逆に自己評価をしてみます。学生から提出されるリポートが楽しみです。

学会発表余話

実は、学会の講演では、かなり抑えて話しました。話のスピードも、「唾のとばし方」も、そして内容の「つっこみ方」も。いつもの調子の、半分ぐらいの「血圧」でしゃべりました。参加者の評価は、「岡本課長も、あんな話し方ができるんですね」「分かりやすかったですが、もっと話したいことがあったんじゃないですか」「いつもの全勝節じゃなかった」などなど。
抑制して話したのは、聴衆には研究者から町村職員まで様々な人がいるので、その反応を確かめながら話したこと、また、公式の場でいつものように元気よく「脱線」するわけにはいかないからです。
さらに、真ん前の席に神野直彦東大教授、金子勝慶應大学教授、中井英雄近畿大学教授、齋藤愼大阪大学教授などなどが座って聞いておられるのですよ。こんなに晴れがましい、かつ緊張する機会は、めったにないでしょう。

2003年地方財政学会

7月4日、5日と札幌で、日本地方財政学会2003年度総会が開かれました。300人近くが参加し、大盛況でした。基調講演をさせていただきました。テーマは、「交付税の現状と改革課題」です。1週間前に三位一体が決まったばかりで、ホットな話題を解説しました。
各分科会も、税、国と地方、公共事業、福祉、地方債、海外事情と盛りだくさんでした。発表者も研究者と実務者、海外からの参加と、内容も理論研究、シミュレーション、事例研究と、バラエティに富んでいました。「大会プログラム」をご覧下さい。夜は、全国の研究者と懇親を深めてきました。
5日の北海道新聞も、紹介してくれました(川村記者ありがとう)。概要は、「第11回地方財政学会の基調講演と概要」月刊『地方財務』(ぎょうせい)2003年9月号に、まとめてあります。
各自治体が今後の税財政を考えるに当たっても、研究の第一線を知ること、また研究者と知り合いになることは、有意義だと思います。自治体の職員の加入も大歓迎です。会員は現在500人を超えています。
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写真は、玉岡神戸大学助教授の提供です。