岡本全勝 のすべての投稿

新しい仕事10

紹介が遅くなりましたが、24日から日刊工業新聞が「始動、再チャレンジ支援」を連載しています。第1回は「複線型社会へ、戦後改革の核弾頭に」で、私たちの担当室と、私の発言が紹介されていました。
そこにも書いていただいたように、私は、現在取り組んでいる再チャレンジ支援施策を、3つに大きく分類しています。1つめは、この不況期・就職氷河期に生じた問題で緊急に対応すべきもの(いわゆる負け組対策)で、フリーター対策、多重債務者対策、事業に失敗した人の再起業などです。2つめは、機会の平等を目指すもので、子育て後の職場復帰、受刑者の社会復帰などです。3つめは、複線型社会を実現するもので、団塊世代の活躍、人生二毛作などです。逆に言うと、複線型社会の実現はすべてに当てはまるのですが、その中から機会の平等でない人たちを別立てにし、さらにその中から緊急度の高いものを取り出したという構成です。
「再チャレンジ」という言葉にはいろんなものが含まれますが、こう分類することで、わかりやすく、また対策が立てやすくなると考えています。
もっとも、対策は難しいものがあります。予算や法律での規制では、解決できない問題も多いのです。先日も書きましたが、フリーター、パート問題は、新卒一括採用・終身雇用・年功賃金・退職金制度という、日本の企業・社会慣行が変わらないと、完全には解決できないと思います。この仕組みにあこがれ、そしてこの仕組みで戦後日本は成功してきたのです。もっとも、これは日本だけの慣行だそうです。
「企業社会のあり方や価値観、社会規範の改革・変更を伴う一種の社会改革だ。『複線化社会』と一言で表現されているが、文字通り『戦後レジーム(体制)』の変革を迫る課題だ。とはいえ、再チャレンジ支援策が『社会を変える核弾頭になるかもしれない』(岡本室長)ことは否定できない」。この記事は、インターネットで読むことができます。

新しい仕事9

29日の朝日新聞オピニオン「人口減で明日は」は、「固定化するフリーター、有効な対策は?」でした。
「かつては、会社に縛られない自由な生き方の象徴だったフリーターが、今は格差社会の象徴となっている」。へー、かつてはそんなイメージがあったんですね。とんでもない説です。それが成り立つためには、同一労働同一賃金であること、またそれだけ各人に気に入った職があることなど、条件が必要です。前者はこれから変えていかなければならない、日本の大きな課題です。後者は、そんなみんなが気に入るような職なんてないですよね。大なり小なり妥協して、あるいは不満であっても職場にしがみついている人も多いです。
記事では、現状として、正社員との賃金差が1億7,500万円であること。もう一つは、高年齢化が取り上げられています。今後、その本人にとっても社会にとっても、年金がもらえない、健康保険が大変、生活保護への転落・増加、そして社会の安定がなくなるといった、大きな課題が予想されます。また、先進諸国のフリーター対策と、日本の対策が紹介されています。イギリス、アメリカ、ドイツの良いところを採り入れ、日本も結構やっているんです。もっとも、問われるのは、何をやっているか以上に、どれだけ効果が出たかです。再チャレンジ対策室では、いま、現在までの対策・残る課題・さらなる対策をとりまとめ中です。

審議会政治の終焉

28日の朝日新聞社説は、「中教審答申、文科省の代弁者なのか」を主張していました。
「子どもたちの教育が大切なことは論をまたない。とりわけ義務教育はどこでも一定の水準を保たねばならない。だからといって、教職員の給与の半分を国が握っておく必要があるのだろうか。」「私たちはこれまで、地方に税源を渡すことについて『義務教育も聖域ではない』『教育を変える好機にしたい』と主張してきた。」
「中教審は教育学者や有識者らで構成されている。残念ながら、この答申は、地方への発言力を手放したくない文科省の思惑を代弁したものとしか思えない。」
ええ、その通りなのですが、審議会とは大臣に任命された委員が、官僚が用意した資料に基づいて議論する場で、答申案も官僚が書きます。そもそも、審議会が各省の「組織」ですから、この表題「文科省の代弁者なのか」という問いの立て方が、まちがっているのではないでしょうか。

2006.10.28

今日は、結婚披露宴に呼ばれて、山口市まで出かけました。飛行機で日帰りできるので、便利です。初めて、インターネットで予約し、航空券はチェックイン時に受け取るというのを、やってみました(最近、一人で飛行機に乗ることがなかったので)。これも便利ですね。もっとも、発着の時間帯が早朝と夜に偏っていて、その点は不便でした(昼もあるのですが、披露宴に間に合わない。帰りも、飛行機に間に合わないのです)。おかげで、蒸気機関車に乗るという体験もしました。空港へ向かう汽車の本数が少なく、一番早いのがそれだったので。
新郎には、交付税課時代に、算定方法(段階補正など)の見直しで、苦労をかけました。ある日、私が朝出勤して、徹夜をした様子の彼に「1時間くらいは寝たのかい」と声を掛けたら、「いいえ、その倍も寝てしまいました」と返事が返ってきました。とんでもない職場だったのですね。また、反省。

審議会政治の終焉

26日の読売新聞「論点」では、森田朗東大公共政策大学院長が「中教審の採決、審議会政治終焉の足音」を書いておられました。
「多くの審議会はこれまで、委員選任も答申案作成も所管省庁が行うため、各省や利益団体の『隠れ蓑』といわれてきたが、専門的審議の場、利害調整の場として、一定の政治的機能を果たしてきたことは間違いない・・・」「だが、少数意見が強硬に妥協を拒む場合や、今回の中教審の決定に見られたように、多数意見の『ごり押し』が起こる場合には、主張の強固さが示されるより答申そのものの権威が失墜し、審議会が果たしてきた重要な機能が失われることになる」
「こうした事態が生じるようになった原因には、財政危機や構造改革の進行によって関係者間の対立が激化し、これまで可能であった妥協や合意が困難になってきたという事情があろう。その結果、深刻な利害対立を含む課題については、従来の調整システムは機能しなくなり、・・・最終的には首相の決断という政治の場に、解決が持ち込まれるようになった。」
「今日の政治環境の変化をみる限り、審議会の変容は今後も続き、やがて『審議会政治』は終焉に向かうことになろう」
ここでも、審議会政治がこれまでの「官僚による政治」「右肩上がりの時代の政治」であることが指摘されています。会一致は、自民党総務会でもそうであったように、右肩上がりの時代の政治、責任を先送りする政治だったのです。