科学技術と政治決定

日経新聞連載「科学技術の役割ー原発事故に学ぶ」。6月1日は、田中耕一さん(島津製作所、ノーベル賞受賞者)でした。
・・東日本大震災が発生した3月11日以来、科学技術に携わる者として、もっと貢献できることがあったのではないかと悔やむ思いの一方で、科学技術にはまだやるべきことがたくさんあると痛感した。津波や地震のメカニズムはもちろんのこと、自然にはわからないことが数多くある。宇宙や地球の内部は当然、人間の内部ですら科学はその一部しか解き明かしていない。
にもかかわらず、我々にはもう学ぶべきことはないという過信や傲慢さがあったのではないか。地震や原発事故は、やるべきことがまだまだたくさんあることを示した。日本の科学技術はダメだと落ち込むよりも、新たな課題を与えられたと受け止め、再出発の起点にすべきだと考える・・
福島第1原発事故の背景には、技術への過信があったと思える。そもそも「絶対安全」な技術はあり得ない。「想定外」の大津波と表現されたが、わかったところだけが想定できるわけで、それをもとに大丈夫と言っていただけだ。
ただ、「絶対安全」といわなければならない雰囲気があったのかもしれない・・
原発の過酷事故が起きる可能性はないことが前提となるから、事故発生時の対策を考える必要はないという思考停止状態になってしまう・・
筆者は、日本の科学技術の問題点を指摘するよりも、今回の震災や原発事故を、科学技術が前に進むきっかけにすることが重要だと考える・・