2025年11月16日の日経新聞、ジョセフ・スティグリッツ教授の「無制限な資本主義、是正を」から。
・・・1990年代初頭の東西冷戦終結後に米国主導で広がったグローバル資本主義が試練にさらされている。経済格差の拡大で社会は分断し、米国第一主義を掲げるトランプ米政権は国際経済・貿易に混乱をもたらしている。早くからグローバル資本主義に異議を唱えてきたジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授に聞いた・・・
1990年代から米国主導のグローバル資本主義に異議を唱えてきた。今月、20カ国・地域(G20)首脳会議の作業部会議長として、不平等の是正を求める報告書をまとめた。
―資本主義と民主主義は、第2次大戦と東西冷戦を経て国際システムの基盤となってきた。今はその2つが危機を迎えているようだ。
「資本主義が推進する多くの価値観、利己主義や近視眼的な視点は民主主義と相いれない。民主主義とはいかに協力して働くかということだ。かつて資本主義と民主主義は共存すると考えられていたが、今は資本主義が分断や利己主義を助長し民主主義と対立している。無制限の資本主義は大きな不平等を生む」
「資本主義の根幹は競争にあるはずだが、実際には独占資本主義に陥っている。経済力の集中は政治的不平等を招き民主主義に反する。自由民主主義と市場経済は大きな緊張関係にある」
「G20の報告書で提案した不平等についての国際委員会の創設に力を入れている。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、地球温暖化の理解と対策を促したように、新委員会は不平等の根源を明らかにし対策の手助けをできる」
―ニューヨークで急進左派のマムダニ氏が市長に選ばれた。彼が唱える家賃凍結や増税策は不平等解消に効果的か。
「大筋で支持する。彼は米国民の不安を認識している。収入がニューヨークのような都市で生活するのに十分ではなく、多くの仕事で生活に十分な賃金がもらえない。彼は、多くの経済学者が見落としている点、一度アパートに入居すると大家が大きな支配力を持つことを理解している。人は簡単に引っ越すことはできない。家賃を安定させる制度づくりが必要だ」
――こうした政策に対し社会主義的だという批判がある。トランプ大統領が「狂った共産主義」と呼んだのは誇張にせよ、ビジネス界では、過度な再分配や規制が成長や経済の活力に悪影響を及ぼすという懸念もある。
「より平等な政策がより良い経済をもたらす証拠はある。従来は、平等を高めるには経済効率を犠牲にせざるを得ないといわれてきたが、私は平等主義的な政策が経済を向上させると論じている。不平等の代償は政治や社会だけでなく経済にも及ぶ。より健全で教育を受けた労働力は、生産性の高い労働力になる」
記事には、世界の富が上位10%の富裕層に偏在している図がついています。世界不平等研究所「世界不平等レポート2022」
所得では上位10%の人がが約5割を得て、資産では上位10%の人が8割近くを保有しています。それに対し下位50%の人は、所得では約1割、資産ではほとんど持っていません。