「催し物の経済波及効果」の続きです。記事を読んだ知人から、次のようなことを教えてもらいました。
総務省が「産業連関分析のための各種係数の内容と計算方法」(「平成27年(2015年)産業連関表(-総合解説編-)」第5章)を公表していて、その最後に「第8節 産業連関分析上の留意点」(19ページ)が載っています。そこに、次のような記述があります。
(1) 発生した最終需要の源泉は問わない
波及分析は、与件データとして需要額を与えることから始まるが、その需要額が何によってもたらされたかは考慮しない。
家計を例に取ると、一部の支出が増加した場合は、所得に変化がなければ、他の支出が減少する。その減少は、いわばマイナスの経済波及効果をもたらしているといえる。もし、貯蓄を取り崩して消費を続けたとしても、貯蓄の減少は投資の減少を通じて、マイナスの経済波及効果をもたらす可能性がある。
産業連関分析は、あくまで生産・分配・支出の循環の一部分を切り取った分析であり、その他の部分は、変化がないことが前提となっている。
(2) 波及の中断等
次に掲げるような場合には、波及の中断等により、短期的には、分析結果ほどの波及が生じないことがある。
ア 需要が生じたとしても、部門ごとに当該需要に応えられるだけの生産能力が常にあるとは限らない。発生した需要が生産能力を超えている場合、実際には、波及の中断が生じる場合がある。
イ 需要が生じても、過剰在庫を抱えている部門においては、過剰在庫の放出で対応することが考えられ、その場合には、期待する程の波及効果が生じない可能性がある。
ウ 需要の増加による雇用者数の誘発についても、現状の人員の範囲で時間外勤務の増加で対応した場合、雇用増には結びつかない場合がある。
(4) 波及効果が達成される時期
産業連関分析において、波及効果がいつの時点で達成されるかは明確にされない。
とのことです。
「家計を例に取ると、一部の支出が増加した場合は、所得に変化がなければ、他の支出が減少する」
「需要の増加による雇用者数の誘発についても、現状の人員の範囲で時間外勤務の増加で対応した場合、雇用増には結びつかない場合がある」
私の疑問そのものでした。
まあ、ええかげんな数値なのですね。政府が発表した大阪・関西万博の経済波及効果もこの方法を取っていると、3兆円という数字は鵜呑みにしてはいけませんね・
催し物の度に、研究所などが経済波及効果を発表します。それらも、これと同じなのでしょうか。すると、それらの数字は信頼性を失っていくでしょうね。