10月24日の朝日新聞オピニオン欄「多党化時代の野党」。
・・・多党化のなか、各党の動きがめまぐるしい。自民党は日本維新の会と連立を組んで与党にとどまった一方、野党は首相指名で足並みがそろわなかった。野党の役割と、その現在地とは・・・
砂原庸介・神戸大教授「監視役だけでなく、政権を」
・・・野党に求められる役割は、一般的に言えば政権党へのオルタナティブ(別の選択肢)を提示することです。政権党と野党は、あらかじめ決まっているものではありません。それぞれが政策のパッケージを提供して、有権者に選んでもらうというのが基本的な発想です。同時に政権交代を起こすことで「いまの政権与党に罰を与える」という有権者の感覚もあります。有権者から見て野党が選択肢になることが前提です。
野党には政府を監視する役割もあります。もちろん大事ですが、監視だけをずっと仕事にするわけではない。監視して問題があった場合に辞めさせるくらいなら、自分たちが政権をとって正しいと思うことをやればいいのです。昔は自民党だけが政権をとるのが前提でしたが、今はそうでもない。自分たちを常に野党だと自己規定することはありません。実現したいことがあるのなら連立政権に参加してもいいはずです・・・
多党化が進む要因のひとつに国政選挙の比例代表部分があります。特定の有権者の明確な支持をもたらすような政策を訴えることが個々の政党の得票の伸びに関わってきます。
もうひとつは地方自治体の選挙です。地方選挙では、地方議員が個人で選挙を戦っている傾向があり、そんな地方議員にとって、自分の所属する政党が、ライバル関係にある他の地方議員の政党と協力するのは支持しにくい。政党がまとまりにくい理由です。
もう少し政党単位で物事を考えるようにするためには、都道府県議会や政令指定市議会を中心に、地方議会の選挙への比例代表制導入が考えられます。日本の地方選挙は世界的に見ると極端に個人中心の選挙です。地方で政党の存在感が増せば、多党化しても有権者も政党のイメージを持ちやすくなるのではないでしょうか・・・
大島理森・元衆院議長「別の軸、かたまり作る責任」
・・・今回、自民と日本維新の会は政策合意し、閣外協力で連立することになりました。今後、信頼関係を築き、責任を共有して安定した政治運営をしていただきたい。その過程で連立与党の世界観、国家観といったものが出てくるでしょう。
これに対して野党はどうあるべきか。
政策ごとに連携する「部分連合」を志向する政党もあるように見受けられますが、あまり肯定しません。いずれ政権をとるという志を持たないといけない。そうでないと政治から緊張感が失われます。私には2度下野した経験があります。それでも我々は一日も政権奪還を忘れなかった。それが野党の務めです。
とはいえ、多党化が進み一党で政権をとるのは難しくなっている。とすれば、野党も与党に対応する「連立形態」をつくり、与党とは別のビジョンを示して対抗する他ありません。
現状では、野党第1党の立憲民主党がいかにして大きなかたまりを作れるかでしょう。立憲には3年余り政権を担ったメンバーがいます。その経験を踏まえ、党として何を目指すのかを明確にしてほしい。例えば、働いている人々にどうアプローチするか、中国を含むアジアなどにどう対応するのか。立憲にはその責任があると思うのです。
既成政党への不信が高まり、新興政党に支持が向かう多党化の今、問われているのは政党の意義です。ここで政党が踏ん張り、二つのグループを形成できれば、有権者に政権の選択肢ができる。公明の連立離脱を契機に、日本に新しい民主主義を作っていただきたい。老兵としてそう思います・・・
参考「二大政党制より二大陣営対立へ」