リン・ハント著『なぜ歴史を学ぶのか』2

リン・ハント著『なぜ歴史を学ぶのか』の続きです。次のような記述もあります。P87

歴史学は、時間に対して3つの扱い方をしてきました。
第一は「模範の探索」です。19世紀に歴史学が大学で学問となると、学生であるエリートの成年男子に対し、古代ギリシアやローマの歴史を教えました。彼らは、政治や軍事指導者になることを期待され、その最良のモデルとしてです。現在もなお、政治家は古典の中から、理想となる指導者や文章を引用します。

1800年代中葉から1900年代中葉に、模範の探索は、第二の「進歩の投影」に取って代わられます。
それは、歴史とは人類の進歩であると見なされます。古典時代が黄金時代であり、そこから堕落したとか、興亡の循環であるという歴史観に取って代わったのです。
その際には、進歩した西洋が、他の地域より優れているという考えがありました。他方で、国民国家を作るために、各国の歴史が作られました。

第三は「全地球的時間」です。最近の傾向です。歴史は単純な進歩ではない。各国が遅れて西欧に追いつくのではなく、各地域で異なった歴史が進んでいきます。また、人間の相互作用だけでなく、地球規模での環境、微生物や病気、植物、交通運輸、交易などが視野に入ってきます。ジェンダーもそうです。

政治の歴史から、経済の歴史へ、そして文化の歴史へと代わってきたともいえます。あるいは、政治家の歴史から、実業家の歴史、そして庶民の歴史に代わってきたのです。